あの路

  • 平凡社
4.14
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本棚登録 : 287
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (35ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582834512

作品紹介・あらすじ

この世界で一番大切なことを、きみは教えてくれた…孤独な少年と三本足の犬との出会い、魂の絆の物語。画家と詩人の共作が切り拓く新しい絵本文学の地平。

感想・レビュー・書評

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  • あの路
    2009.09発行。字の大きさは…中。
    文は、山本けんぞうさん。
    絵は、いせ ひでこさん。

    表紙の少年と黒い犬の絵が、とても印象に残る絵本です。
    ページを開けて行くと、いせさんの落ち着いた色遣いと、美しい青色が目に入って来ます。

    ママと死別れた少年が、叔母さんの家へ引き取られて、従兄弟と学校へ行きますが、虐められて学校へ行けず。唯一の遊び相手3本足の黒い犬と走り回り、遊んでいます。
    少年は、おばさんの家をで、3本足とも別れて町を出て行きますが、心にはいつも3本足が一緒にいます。

    【読後】
    寂しく、厳しい環境の少年と3本足の黒い犬との心温まる物語です。
    少年の心に3本足の黒い犬が、いつも寄り添っています。
    この絵本を見て、読んで、私は、心に誰か一緒にいてくれるひと(動物)が居れば、人は生きて行けるのだと思いました。
    少年は、どんな時にでも一人ではありません、心には、いつも3本足の黒い犬がいます。
    読み終って、胸に……沁みてきます。
    2020.10.07読了

  • 三本足の犬との出会いと別れ。

    三本足の犬と出会ったことで、少しずつ変わっていく少年。

    別れの日は、いつもとかわらずに遊んだ。
    この場面は、哀しいけれども少年の強さも感じられた。

    たくさんの日々を歩いて、たくさんの人のなかを、ずっと、ひとりで歩いている。

    きみがぼくを見ているからぼくは歩きつづける。

  • 両親を亡くし、一人親戚の家に預けられることになった男の子。
    悲しみ、孤独。
    馴染めない生活、学校の中で次第に自分だけの世界に孤立していく。
    空虚、逃避。

    街の路地に住まう3本足の犬もまた、孤立した存在。二人は石畳の路地の片隅に寄り添い、少年は空虚な心の穴を埋めていたのか。

    雪の降る冷たい朝、少年の前から3本足が見えなくなったとき、再び失うことへの不安はどれだけ深かったのだろう。冷たく傷ついた3本足を抱きかかえ温めるとき、そこにあるのは二人だけの孤立した世界。通い合う二つの心を描いたシーンは印象的でした。

    そこに希望は無いのか、伊勢さんの他の作品にみられる暖かく柔らかな光はなく、静かな二人だけの空間は悲しみと、空虚な色彩でしかない。

    やがて少年は足元の水たまりに映る青い空を、自由な色を見つけ路地から外の世界に出ていくが、3本足は路地から出ることはなかった。

    伊勢さんの作品制作過程を紹介した「Process」の中では、青い空の形で駆け回る3本足の姿を、車窓から見る青年の姿が描かれていました。静かな余韻の残る作品です。

  • 列車の窓越しに流れる風景を眺めていると、幼い頃ママが死んで、おばさんに引きとられていったあの街、ひとりぼっちで歩いたあの路(みち)でめぐり逢った三本足で歩き走りまわる黒い犬、たったひとりの友だちとして過ごした日々、そして別れの日・・・忘れることのない記憶が呼び覚まされる。詩情あふれる<山本けんぞう>さんの物語と情感ほとばしる<いせひでこ>さんの絵、このお二人の見事なコラボによって、心ゆさぶられる感動の絵本となっています。

  • ママを亡くし一人ぼっちになってしまった孤独な少年と一人ぼっちで生きている三本足の犬。
    彼らは「この路」で出会いそして笑いあった。少年は学校も行かず、二人はいつも一緒だった。
    しかし、ある事件をきっかけに少年はどこか変わった。
    なぜ変わったのかははっきり描かれていない。
    でも、その心の変化は見事に絵で描ききっている。水たまりの絵を見た時、みんなの心にも希望が見えてくるのではないか。そうであって欲しい。
    三本足は今でもあの路でふりんふりんしているのかな。

  • 親友が1人でもいれば良い。

  • 辛いことがあったときにひっそりと読みたい大人向けの絵本。

    二人暮らしの母親を亡くし、内にこもって社会からはみ出した少年と、路地に住み着いた三本足のムク犬との交流を描いた静謐な冬の物語。

    無邪気になついてくる三本足とのふれあいで少年はささやかな居場所を見つけるが、三本足もまたはみ出しものであり、手酷い悪意の対象になっている。
    彼らはこの路でひとりぼっちだ。

    少年が街を去ることになったとき、三本足は路の終わりまで少年が載せられた車を追いかけるが、それ以上くることはできない。
    このシーンと次のページに広がる無限の海・空の対比が心を揺さぶる。

    街のシーンで背景に小さく描かれている少女は『ルリユールおじさん』のソフィか?

  • 2009年発表。


    ママが死んで
    おばさんに引き取られた『ぼく』が、
    ある日出会った
    3本足の野良犬。


    孤独な少年と
    孤独な犬との
    出会いと別れ、
    そして旅立ちを描いた
    なんとも胸を締め付けられる絵本です。



    まずなんといっても
    その絵の素晴らしさ!


    絵本作家のいせひでこさんが
    水彩画で描いた、
    その淡く繊細なタッチの表紙に惹かれて
    購入しました。



    孤独な魂を共有する少年と犬。

    お互いが
    お互いを必要とする
    魂の絆。

    初めて心通わせた
    かけがえのない友達。


    そんな二人にも
    突然の別れはやってきます。


    本当に大切なものを失くした時、
    人はどうあるべきなのか?


    自分も何をするにも
    一心同体だった
    親友を亡くした経験があります。


    人はいろんな経験をして、
    いろんな物を見て、
    人と触れ合って成長していく。

    川の流れと同じく
    ずっと同じままで、
    同じ場所にとどまることはできません。


    どんなに楽しいことも
    必ず過ぎ去っていくし、

    どんなに悲しいことも
    時が経てば忘れていく。


    変わってゆくことを
    何度も何度も繰り返しながら、
    前へ前へと
    人は進んでいく。


    だからこそ
    人には
    とどめたい思いがあって、

    人は忘れていく生き物だからこそ、
    忘れたくない思いがあるんですよね。


    いろんな別ればかりの世の中やけど、
    人が成長していくためには
    別れは絶対に必要なこと。


    胸が締め付けられる
    『別れ』というものを
    怖れることなく、
    自分も生きていきたい。

    そんなことを考えさせられた
    人間にとって
    本当に大切なものを描いた
    心揺さぶる作品です。

  • 絵本語りで使いました。

    この物語にふれて、胸が震えない人がいただろうか。
    青の美しさに見せられつつも、血のつながり以上の『つながり』、そして、心の『拠り所』や『支え』とは何かを折に触れて感じさせて頂いた作品です。

    どこで読んでも好評でした。


    何度でも朗読したい作品です。

  • 心が疲れた時にそっと開きたい絵本です。

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