- Amazon.co.jp ・本 (146ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582834901
感想・レビュー・書評
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こうの史代さんが、WEB平凡に連載されていたエッセイや漫画。「夕凪の街 桜の国」で広島の原爆その後、を題材にし、世に出た人だけど、「ヒロシマ」を特権化することに対する真摯な恐れ、惨禍を美しい悲劇として昇華したがるのは逆に権威主義的だとまで思われていたのか、と、驚きました。漫画「なぞなぞさん」では、彼女への取材風景がさらっと描かれているのですが、“よくある質問”を縦軸に、インタビュアがどんなに彼女の言葉をカットするか、曲解するか、が伝わってきて、これって、全てのマスコミ関係者は自分のこととしてドキッとさせられるものじゃないかな。また、漫画「古い女」は、根強く残る男女観への苛立ちを、これもさらっと描きつつ、最後にはストンと落とすその怖さが、気持ちいい、とも、参った!とも。手書きのエッセイや小説は、正直、読みにくかったりもするけど、内容+表記の味わい深さがとても面白い。小説「セセリの夜」は派遣切りにあった女性がルームシェアをして住みかを確保してから職を探そうとする導入のみなので、続きが気になる!(*^_^*)こうのさんの描く女性は、いつも、ピュアでおっとりしてて、そこがとても好きなんだけど、「古い女」のような奥に隠された冷たさが見えるあたりも好き。かなり読みでのある一冊でした。「この世界の片隅に」の舞台を呉にした理由を知ったら、また読み返したくなったよ〜〜。
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最初の章の東京紀行で、ゆったりしたコミックエッセイなのかな~と思ったが章を進むにつれ、毒が見え隠れしだした。絵のかわいらしさに隠れているが、以前から筆者の描きたいことは、かわいらしいことではないと思っていた。それは、長い道を読んで感じた事だ。
この原爆を題材にした漫画を書いたことで、読む側から一方的にイメージを押し付けられてしまったのかもしれない。
内容は読みにくいところも、見にくいところもあるが
マンガ、絵、小説?と様々な実験的表現方法を試していて、非常におもしろい。
なぞなぞさんはいいねぇ。インタビュアーは自分の気に入らない答えがあると無言になるのだなと思った。 -
スルメのように噛めば噛む程味わい深い、漫画家こうの史代さんのエッセイ集。いや、「エッセイ集」の枠からぼわーんとはみ出るかもw
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こうの史代さんのコミック・エッセイ『平凡倶楽部(2010)』を読了。
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「平凡倶楽部」こうの史代著、平凡社、2010.11.25
143p ¥1,260 C0095 (2019.03.23読了)(2019.03.14借入)(2010.12.01/2刷)
この本は、「WEB平凡」に27回にわたり連載したものと「わしズム」に掲載したものを一冊にまとめたものです。エッセイ集ということですが、いろいろ遊んでいるというか、実験的作品がいくつもあります。
「へ海らか山」は題名からも想像がつくように最後から前に見てゆくと正常になる漫画です。前から後に見てゆくと逆回しに映画を見ている感じです。
「団地探訪」は、印鑑だけで団地が描いてあります。コメントが、「判で押したような建物ばかりであった!!」です。
「平凡で些細なおかしなことを描き続けるお便り」は、絵文字?のいっぱい入ったお便りです。音があっていればいいという感じの絵文字なので内容とのずれが面白いのかもしれません。
手近において、時々手に取って眺めて楽しむには、いい本と思います。
【目次】
東京紀行
生きものたちの記録
戦争を描くという事
デジカメ日和
すくすく姫
花かぜの夜
遠い目
編集さんと作家の現場1
かみ様々
るいるいかむい(「わしズム」28号)
私の青空(「わしズム」22号)
私の白日(「わしズム」22号)
歩く草
実録! あいつのゆくえ
注目の新刊
斜陽の花
平凡で些細なおかしなことを描き続けるお便り
ご愛読者プレゼント!!
団地探訪
編集さんと作家の現場2
2011年カレンダー
二二年二月二日
編集さんと作家の現場3
編集さんと作家の現場4
聖さえずり学園
東京の漫画事情
記録の記録
四月の雪を追いかけて
今日の運勢
或る小説家
アサキユメ
曇天ゆけむり殺人旅情
密かな休日Ⅰ
へ海らか山(「わしズム」23号)
密かな休日Ⅱ
古い女(「わしズム」19号)
なぞなぞさん(「わしズム」29号)
8月の8日間
あとがき
☆関連図書(既読)
「夕凪の街 桜の国」こうの史代著、双葉文庫、2008.04.20
「この世界の片隅に(上)」こうの史代著、双葉社、2008.02.12
「この世界の片隅に(中)」こうの史代著、双葉社、2008.08.11
「この世界の片隅に(下)」こうの史代著、双葉社、2009.04.28
「この世界の片隅に」こうの史代原作・蒔田陽平著、双葉文庫、2016.10.16
「日の鳥」こうの史代著、日本文芸社、2014.05.01
「日の鳥(2)」こうの史代著、日本文芸社、2016.06.10
(2019年3月28日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
平凡で、些細なこともじっと目を凝らして眺めていれば、日々はおかしなことだらけ。日常を描き続ける漫画家、こうの史代が貴方へ送る小さなお便り。待望の初エッセイ集。 -
2017.2.25市立図書館
「Web平凡」2009.6-2010.8、いちおう文章主体の連載だったらしい。それに、2006年から2009年にかけて「わしズム」に掲載された漫画6編。ぐるりのことや季節の巡りを地道に観察したり定点観測したりしてそれを記録して…なるほどこうの史代のマンガ世界はこのような好奇心や取材の労力でできているのだな、と実感する。ちょっと安野光雅にも似た実験的な構成・内容が満載で、一冊にまとまってみると総合雑誌のような雰囲気。
「この世界の片隅に」を書いた頃の経緯や気持ちがわかるのは貴重。ユーモアの感じられるのんびりした雰囲気に包んでちょこっちょこっと毒も見え隠れしているのがすごい。
2018,8,10購入 -
凄い。
映画「この世界の片隅に」で名作「夕凪の街 桜の国」発売以来、再度注目度が急激にアップしたこうの先生のエッセイ。
その濃密さといったら.....ちょっと驚愕モノですよ、ほんとに。
エッセイというとページ辺りの文字数が少なめでさらっと読めてしまうイメージがあった自分ですが、本作はちょっと引くくらいの文字数です(しかも手書き文字!)。
そしてカラー&挿絵&漫画もふんだんに描かれていて最初から最後まで充実の内容!
「これ1200円+税でいいの?」って思う書籍となっております。
(今はどこも売り切れな感じですが2016.12にはまだ定価で買えるサイトがありました。よくぞ買った、私。)
本書の中でこうの先生が書かれている「作家が作品に全力を尽くすのは当然の事で立派でも何でもない。ただ選んだ資料によって値打ちが決まり、読者によって居場所ができる」の一言になるほどと思う。
私が思うにきっと成熟された人からしか成熟した作品は生まれないのだ。
当たり前のことなんだろうがそんなことがとても腑に落ちる。
というわけで「ユリイカ」の特集号も素晴らしかったですがほぼ同じ値段を出すのなら断然こちらをおススメ致します。
(増版の方心からお願いいたします、出版社さま。)
支払った金額の数倍の満足感が得られた本作でした。
ありがとうございます。