正岡子規、従軍す

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 17
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582835151

作品紹介・あらすじ

なぜ子規は病身でありながら、命を賭して、日清戦争の従軍記者となったのか?戦争体験は子規文学に何をもたらしたか?近代詩歌の巨星の、ターニング・ポイントの謎を照射する画期的論考。

感想・レビュー・書評

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  •  著者は3年前、長編評論『森鴎外と日清・日露戦争』を上梓し、「文学者と戦争」というテーマの新たな地平を拓いた。本書はその続編とも言うべきもの。書名のとおり、正岡子規の文学と思想を、日清戦争における彼の従軍体験を鍵として読み解いたものである。

     子規といえば、俳句の革新者としての彼、また後半生の凄絶な闘病からその生涯が語られることが多い。対照的に、子規の従軍体験に光を当てた評論・評伝はごく少ない。
     それもそのはずで、子規の従軍生活はわずか44日間にすぎない。彼は軍隊での従軍記者の扱いがあまりに粗末であることに激怒し、途中で帰国してしまったのである。実際に戦闘が行われる場面も見ていない。

     だが著者は、この短い従軍体験こそ子規にとって大きなターニング・ポイントであり、子規の文学の核に肉薄する鍵がそこにあると考える。そして、すでに結核となり喀血も何度か経験していた子規が、周囲の反対を押し切ってまでなぜ従軍記者を志願したのかという、近代文学史上の謎に迫っていく。

     著者の前作『寺田寅彦 バイオリンを弾く物理学者』には感心しなかった私だが、本書は面白かった。とくに、子規はなぜ従軍したかという謎に対する答えが綴られる最終章は圧巻である。

  • 日本近代詩歌の革新者・子規。その偉業の分岐点に、闘病の引金となった日清戦争体験が位置している。従軍記者子規とは何だったのか。見過ごされてきた「子規の戦争」を解読する。

  • 作者は正岡子規の不世出の作品とそれを生み出した主体に対して、中国人に対する差別意識と日清戦争に従軍して国家を翼賛した事実は、「国家と個人、あるいは国家と文学との対立と矛盾、そしてそこに大きく口をあけた亀裂を、最も鋭く体現・露呈させた」としている。正岡子規をはじめ、明治の文豪たちが抱いた中国に対する差別意識とその無自覚性を大きな問題としているが、私は差別というより大国に対する日本人の劣等感の裏返しではなかったのかという印象を持った。江戸期やそれ以前から中国に対する差別意識やそれを促す何かがあったのか?
    わずか一か月の従軍で中国人をつぶさに観察できたわけでもないだろうし、たしかに不衛生極まりない状況に出遭ったのであろうが、それは単なる不快感であって、それが直ぐに差別に結びつくとは思えないのである。

  • 日清戦争時代の日本の大衆の気持ちが良くわかります。子規もまた漱石も同じような気持ちだったのですね。

  • 事実として知っていても、実際の映像をNHKドラマ『坂の上の雲』で香川照之扮する正岡子規が、あんなにも意気揚々と従軍を志願して中国大陸へ行ったことが原因で自らの命を縮めることなったのを目の当たりにすると、何としてでも近くに時間移動している南方仁先生にでも連絡して、その行動を中止させてと頼みたくなったりします。

    いったい彼は中国へ行って何をしようとしたのか。そんなに特派員報告を新聞に書きたかったのか。

    遅れたアジア・没落する可哀そうな中国という単純なヒューマニズムくらいで自分の死を早めたとしたら、悔やんでも悔やみ切れないのですが、はたしてその真相は・・・・・。

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