果因果因果因

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 39
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582835465

作品紹介・あらすじ

お前の中の俺を返せ!サクセスを夢見て玄界灘を渡った無名歌手、場末の回転寿司で働く全てがかったるい青春、ハッテンバで成り上がり実業家となる双子らが交錯し、マヌケでくだらない日常を生き抜く-。映画やマンガのような生き方に憧れ、人生の虚妄にまどう若者に贈る連作小説集。

感想・レビュー・書評

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  •  特殊漫画家・根本敬による初の小説集である。
     といっても、根本は2009年の著作『真理先生』の一章を小説仕立てにしており、小説デビューはそこで果たしていた。丸ごと一冊の小説集が初なのだ。もとは平凡社のサイトでウェブ連載したものだという。

     『真理先生』の「小説」(というタイトル)を読んだ際、当ブログのレビューで私は次のように書いた。

    《根本のマンガをそのまま小説に置き換えたような、彼以外には書き得ない作品。もしかしたら、根本敬は町田康のように小説家に大化けするかもしれない。》

     本書に収められた4つの中短編もしかり。100%の特濃根本敬ワールド。かなり読者を選ぶ作品だが、根本の著作を愛読してきた人なら愉しめるはずだ。

     書名は「ガインガインガイン」と読む。
     かつての名著『因果鉄道の旅』を彷彿とさせるこのタイトルが示すとおり、登場する人物はどいつもこいつも強烈な個性をもつ「因果者」ばかりである。普通の人は一人も登場しないといってもよい。

     「因果者」たちがたどる数奇な運命を描いた4編は、どれも不気味で下品で奇妙な物語なのだが、しかし根源的なフリーダムの感覚にも満ちている。「人間はどう生きてもいいんだ!」という「生の肯定」が全編の通奏低音となっていて、ゆえに読後感は爽快である。

     4編それぞれ面白いが、私がいちばん気に入ったのは「お寿司9696(クルクル)会館」。
     場末の回転寿司屋で出会った男女が夫婦となり、紆余曲折を経て画期的な回転寿司店を開くまでの物語なのだが、これほど先の展開が読めない小説も珍しい。どう転がっていくか予測不可能な面白さがある。

     くわえて、4編とも随所に根本らしい歪んだ笑いが仕組まれていて、かなり笑える。既成の小説にはまったく似ていないが、しいて近いものを挙げるなら、やはり町田康の諸作になるだろうか。

     文芸誌各誌は、根本敬に小説を依頼すべきだと思う(すでに依頼していたら失礼)。そして、根本が芥川賞でもとったら面白いのだが……。

  • ジャケ貸出で読みはじめましたが…。
    人によって、好みが分かれると思われる作品。
    私はあまり、好みではなかったので…読みにくかったです。
    読破するまで一苦労しました(´ω`;)

  • 中原昌也と合わせて読んだが、世界観として完成しているのは圧倒的に根本だろう。「何が言いたいかわかる/分からない」というのは別に「文学」と何の関係もない、といわれればそれまでだが。
    雰囲気だけが濃厚で、吉田戦車を小説にしたような、ただそれだけなのが中原。小説以外の著書とも首尾一貫したコンセプトが明快な根本。別に比較するような話ではないかもしれませんが。

  • この作家、自称『特殊漫画家』だそうだ。
    内容は……まるで趣味じゃないので読むのは結構苦痛だったけど、これも何かの縁、と頑張って最後まで読んだ。
    理解に苦しむ表現が多く、例えがよくわからない。
    たまにクスリと笑える表現もあるにはあるけど。
    多分もう、この作家の本は読まないだろう。

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著者プロフィール

上智大学教授

「2019年 『東南アジアの歴史〔新版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

根本敬の作品

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