戦争するってどんなこと? (中学生の質問箱)

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582836660

感想・レビュー・書評

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  • 元米海兵隊員だった著者が、日本の中学生に向けて、戦争がどんなものかを説明した本です。

    非暴力抵抗の事例や、良心的兵役拒否に関する話、
    「テロに対する戦争」がなぜ泥沼に陥るのかといった話など、
    勉強になったところが多く、読んでよかったと思いました。

    著者と同じく私は戦争が怖いし、個人の立場として、戦争がこの世からなくなればいいと願っています。

    だからこそ、この手の本について願うところも大きい。

    以下のレビューでケチつけ気味のことを書いているのは、それゆえです。

    ============================================================

    著者は明らかに、「戦争はしてはいけないものだ」という立場から戦争を語っています。

    そうだとしても、「戦争がどんなものか」の説明と「なぜ戦争をしてはいけないのか」の議論は、
    ちゃんと区別するべきだと思いました。(本書ではこの点がごちゃまぜになっています。)

    「戦争の怖さを伝えて、戦争に反対するように仕向けよう」という意図が随所に感じられましたが、

    書き手がそういう態度で子どもにものを伝えてしまうというのは、
    実は危険なことなんじゃないかと私は思っています。

    なぜなら、書き手のそういう態度は、

    「戦争の必要性を伝えて、戦争に賛成するよう仕向けよう」という態度と同じ穴の狢だから。

    著者はきっと、日本の、世界の、平和な未来を願っていて、
    だからこそ、読み手として想定している中学生たちに、戦争の怖さを伝えたかったんだと思う。

    でも、本当に平和な未来を実現したかったら、大事なのは、
    戦争を擁護する側と戦争に反対する側が、理性的に対話できる土壌を作っていくことなんじゃないか。

    日本人は「和を大切にする民族」などと言われるけれど、
    戦争にしても、原発にしても、反対派と擁護派の結論が真っ向から対立するような議論になると、
    とたんに自分と違う立場の人に対して攻撃的になる。

    擁護派は反対派を、反対派は擁護派を、どこか見下したような態度をとっていて、
    相手の主張に対して聞く耳を持たない。
    自分の主張の正しさを攻撃的に主張して、相手は余計聞く耳を持たなくなる。

    戦争の本当の根っこは、そういう態度にあるんじゃないの? と思ってしまう。

    意見が違う人に対して、「あなたはこう考えるんだね。」というところをいったんニュートラルに受け止めるのは、
    対話の基本中の基本で、最近は小学生の道徳でもそういうことを教えているらしい。

    それは本当に大事なことで、お互いが相手の言い分をちゃんと受け入れて、理性的に対話した先にしか、
    戦争のない世界はない。

    戦争についての議論だったら、
    「戦争というのはこういうものである」
    「戦争を必要だという人たち、戦争を起こした人たちの言い分はこうだ」
    「戦争に反対する人たちの言い分はこうだ」

    ということを出来る限り客観的に並べてみて、さぁ、どう考えますか? って投げかけるようなやり方で。

    この本も、最終的には著者が「戦争に対してどういう態度をとるのか、考えるのはあなたです」と言っているけれども、
    判断材料の並べ方が、明らかに著者の誘導したい結論に寄りすぎという気がしました。

    ============================================================

    ・・・と、ケチつけ気味のことを書いてしまったものの、私も立場としては著者と同じで、戦争のない世の中になってほしいです。

    だからこそ、戦争を必要だと信じている人たちとも、ちゃんと対話がしたい。水掛け論や悪口の言い合いじゃなく。

    そういうことができる世の中になってほしいし、
    そういうことができる人を育てる教育を、日本にはもっと、していってほしいと思う。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001209843

  • 憲法9条を軸に、戦争を考える本。
    中学生の質問箱シリーズによるもので、簡潔な言葉で大変わかりやすく書かれている。
    そんなに単純に割り切れるものではないと思いながらも、単純な言葉で書かれていると心にストレートに響き、歴史と重ねて、今後の時代の流れに危機感を覚えた。

  • 「争ってどんなことするの? 日本が戦争できる国になったら? 軍隊があるほうが危ない?……ラミスさんが今こそ徹底的に答えます」
    「軍隊は国や人々を守れるの?それともかえって危険な存在なの?沖縄戦を生き延びた元県知事大田昌秀さんのインタビューも収録。シリーズ第四弾!」

    目次
    第1章 日本は戦争できないの?
    第2章 戦争ってどんなことするの?
    第3章 どうして戦争はなくならないの?
    第4章 日本が戦争できる国になったらどうなるの?(なにがどう変わるの?;どんな戦争をすることになるの?)
    第5章 沖縄から考えるってどういうこと?
    第6章 軍事力で国は守れないの?(軍隊があるほうが危ないの?;非暴力抵抗で国が守れるの?)

    著者等紹介
    ラミス,C.ダグラス[ラミス,C.ダグラス] [Lummis,C.Douglas]
    1936年サンフランシスコ生まれ。カリフォルニア大学バークレー校卒業。1960年に海兵隊員として沖縄に駐留。61年に除隊、80年より津田塾大学教授。2000年同大学を退職、沖縄に拠点を移し、以後、沖縄国際大学で教えるほか、執筆や講演などを中心に活動

  • 戦争とは何か。
    誰が、何のために、どんなことを考えながら、どんなふうになされるのか。
    そのメリット、デメリットは。
    なくすためにできること。


    これらがとてもわかりやすい文章で書かれていて、素晴らしい本だと思った。

    戦争の目的が特に興味深かった。
    かつては集団強盗から、資源をめぐるもの、国家権力を求めるもの、
    仮想敵国、政府への怒りを国外に向ける、経済面(とても消費の良い産業)、
    戦争中毒状態(ないと経済が回らない)、
    先進国と途上国の不平等な関係、
    これらが複合的に関わっているとのこと。


    兵士たちは、洗脳状態になり、
    自分達の行いは正しいと信じて疑わない、
    そうでないと戦闘や殺人なんてできない、
    という内容もとても印象深かった。

  • 戦争についてあまり考えてこなかったけど
    この本を機に、友達とかと話す機会や考えることができた。
    軍事基地を無くすことが戦争がなくなる方法の一つというのは理想論かと思った

    でも戦争がなくなるために考えることは必要と思わせてくれた。

    非暴力の勝利は実際にインドなどは成功しているなどの例が挙げられ勇気づけられた

  • タイトル通り「戦争をすること」について。

    戦争はなぜ起こるのか、戦争でどんな苦しみがあるのか、なぜ世界から戦争は無くならないのか、など戦争についての「なぜ?」を考えることができた。

    日米安保と憲法9条の話や、沖縄と日本政府や米軍とのことについても掘り下げていた。

    ただ、所々に著者の主観的な考えが混ざっていて、中立的ではないと思った。この本は、小学校高学年から中学生くらいを想定して書かれているのだから「戦争はダメ」ということは悪いことではないと思うけど、「憲法改正ダメ」とか「沖縄に基地の負担させるのはダメ」とか、そういう思想に持って行かせようとするのは疑問である。

    問題について賛成反対両者の声を取り上げて、「みんなはどう考えるかな?」という疑問提起に留めておいたらよかったのではないかと感じた。

  • 分かりやすくて丁寧に書かれていていい本だ。もっと早くに読んでても良かったな。道筋立てた思考がまだまだできてないから勉強していこう。2014年に著者が言ってることをまさに今体感している。

  • アメリカ海兵隊員として沖縄に駐留した経験もあり、現在は沖縄に住む
    政治学者であり平和運動家である著者が中学生レベルの質問に答える
    形式で戦争について嚙み砕いて話している。

    解釈改憲で集団的自衛権の行使(実はすべて個別的自衛権で対応
    可能)を可能にしたり、本来とは異なる意味で積極的平和主義を用い
    たり、特定秘密保護法を成立させたり、共謀罪を作ろうとしたり、何の
    根拠もなく「機は熟した」と言って2020年までに憲法改正をすると宣言
    してみたり。

    現在の安倍政権のやっていることが、本書を読むと見事につながって
    行くのだよな。自衛隊を「国防軍」にして、戦争の出来る国になろうって
    こと。

    その「戦争」というのは、アメリカの戦争に協力するってこと。今までも協力
    してるけどね。「血を流さないのなら金出せや」とか言われて、巨額の金額
    を出しているんだな。

    それに、在沖米軍基地。ヴェトナム戦争以降、アメリカが戦争している国
    に、ここから米兵が派遣されている。だから、中国や北朝鮮、ロシアの
    ミサイルは日本の米軍基地を目標に設定している。

    軍事力で平和が保てるなんてのは幻想である。抑止力なんてない。死
    刑に犯罪抑止力がないのと一緒。軍事力を持てば持つほど、標的にされ
    る確率は上がるはずなんだけど、日本政府はどう考えているのかしら?

    改憲論者に多いのだけれど、現行の日本国憲法はアメリカから押し付け
    られた憲法だから改憲しなきゃいけないと言う。だったら自衛隊は?日米
    安保条約は?日米地位協定は?米軍基地は?全部、押し付けなんです
    けど~。

    大体、アメリカの戦争に協力する為に戦争の出来る国にするとしても、朝鮮
    戦争以降、アメリカって戦争で勝ってないんだけどね。引っ掻き回して「あと
    はよろしく~」だから憎まれるんじゃないでしょうか。

    安倍晋三が「みっともない」と言う日本国憲法だが、ちゃんと読んでいるのだ
    ろうかね。前文なんて本当に素晴らしいと思うんだわ。

    以下に引用する。

    「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
    われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国
    全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び
    戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民
    に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の
    厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は
    国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
    これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くもので
    ある。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
    日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な
    理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に
    信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を
    維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる
    国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の
    国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有
    することを確認する。
    われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視しては
    ならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則
    に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国
    の責務であると信ずる。
    日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を
    達成することを誓ふ。」

    歴史を歪めてはいけない。負の歴史も歴史として背負わなければいけない。
    誰が作った憲法であっても、そこに平和を希求し、平和を維持する願いが
    込められているならば、憲法を遵守しなければならない。権力者であれ
    ば尚更である。その権力者が憲法を変えようなんてのはもってのほかだ。

    著者がいかにして平和運動家になったかの経緯も述べられており、中学生
    でも理解できるように書かれているので安倍晋三に送ってあげようかな。

    あ、「成」の字もまともに書けないでんでん晋三じゃ無理かも。

  • 少しずつ考えを深めていく。それが大事なんだなぁ

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