- Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582837421
感想・レビュー・書評
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武田百合子さんの娘さん花さんの写真エッセイ。エッセイと言っていいのか、雑記という感じかも。ご本人もそういうとらえ方が好きそうだなと思う。花さんが撮影された写真も文章も良い意味でなんだか雑多な感じで昭和の雰囲気を感じる。
富士日記では、花さんは百合子さんが泰淳さんのお世話をするのに差し支えるから確か中学校から寮に入っていたような、そのころのお話も載っていて富士日記がかかれていたころ、こんな学校生活だったんだなと興味深かった。山荘の話もあったりして、あの山荘まだ手放していないのかなとか思ったり。富士日記の中でしか知らない武田夫妻の娘としての花さんが表面だとしたら、この本では花さんの奥行を見たような感じで面白かった。
題名がとても良いなと思う。猫はまったりしてのんびりしているから、確かにおばけで出てきても怖くないかも。人を驚かそうなんて魂胆はなくて、ただ死んだことも知らずに自由にしていそうで。題名のとおり「くも」という亡くなってしまった愛猫の話がたくさんでてきて、くもの気配がたくさんする。やんちゃで自由でのんびりで優しい気配がとても良いなと思った。
あと不安な時には怖いな本を読むってところ新しい視点!普通心が落ち着く本を読むんじゃないかな。でも不安や恐怖心で不安を追っ払うのって面白い。それから百合子さんは子供の宿題も手を抜かずにやってしまって賞ととってしまうとか、百合子さんらしい気がして笑ってしまった。そんな子から見た親の一面の話も面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ところどころに挟まれるモノクロの写真が雰囲気あってすてき。愛猫くもとの思い出話を中心としたフォトエッセイ。
現在なのか過去なのか…。読んでるとなんだか時間が曖昧になる感じがした。
『猫のお化けは怖くない』というタイトルが好き。確かに猫なら怖くない。 -
「人間のお化けは出ないでほしいわ。でも、猫のお化けなら怖くないから、しょっちゅう出て来てもらいたい」
死んだ猫の名を何度も呼ぶ日々。知らない土地をうろうろしていると、ふいに自分を呼び止める何か。自分以外、誰も電車を降りなかった静かな町――。
愛猫「くも」との旅、「くも」のいないひとり旅。「くも」がいた日々、「くも」がいなくなってからの日々。
写真もエッセイも時が切り取られ、止まっているかのよう。人の姿はないのに、人の気配が濃厚で、まるであの世とこの世の境目を写し取ったのかと思える静謐さ。
けれどなぜだか生命力逞しく、生々しくも旺盛な活力が行間からどんどん溢れ出てきて、うすぼんやりと読んでいると、うっかり溺れそうになる。
こんな写真を撮ることができて、こんな文章が書ける花さんは、とても不思議な人なんだなぁ。 -
しみじみと心に沁みる話。