夜ふけに読みたい数奇なアイルランドのおとぎ話

  • 平凡社
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本棚登録 : 350
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582838305

作品紹介・あらすじ

気鋭のアイルランド研究者により、これまでばらつきのあった人名などの固有名詞をなるべく原型に近い形で統一。独自の世界観を忠実に再現した決定版。
話題の海外民話集「夜ふけに読みたいおとぎ話」シリーズに、アイルランド民話集が仲間入り。既刊のイギリス民話集と同じく、アーサー・ラッカムの装画と挿絵も楽しめる。

感想・レビュー・書評

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  • 「夜更けに読みたい○○のおとぎ話」シリーズ3作目。
    前2作と同じく、アーサー・ラッカムさんの挿絵。
    舞台はイギリスからアイルランドに移り、パングル・バーンという猫がガイド役だ。
    後書きによるとこの猫、日本で言えば平安時代の頃ドイツで実在していたらしい。
    南ドイツのとある修道院で見つかったという、古い写本に落書きされていた詩が本書のエピグラフで、その詩が「猫のパングル・バーン」というもの。
    貴重な財産である写本に落書きなんてとんでもない話だが、きっと写学生と猫は大の仲良しだったのだろう。孤独で辛い作業の癒しとなっていたのかもね。
    上等な皮でできた羊皮紙はネズミにねらわれやすく、その分猫は大事にされた時代だ。
    パングル・バーンにいたっては、アイルランドでは知らない者はいないらしい。

    大人気の猫・パングルによれば、良いお話には特別な匂いがするという。
    どこかピリッとしていて、わくわくする匂い。
    第一部で紹介されるのは「パングルのおはなしぶくろ」全5話。
    第二部は「クウァルの子フィンの物語」全4話。

    数奇なお話には相当接してきたが、これ以上はないほど数奇だった。
    石井桃子さんの、子どもたちに伝えることを旨とした優しい訳とはまるで違う。
    読み手の予想をはるかに越えるワクワクどきどきのお話ばかり。
    運命のように異界に足を踏み入れ、次々に試練に立ち向かう話が多い。
    もろく、誘惑に弱い人間。反面、情け深くもある。
    グリムの「三人の糸つむぎ女」によく似た話があるが、珍しく教訓まで加わっている。
    妖精も次々に現れるが、良い妖精とは限らない。とんでもないのもいる。
    話し合って解決できることなど、無い。決して無い。
    キリスト教が広まる以前のお話ばかりで、壮大な輪廻転生の話も多いため日本人には理解しやすいかもしれない。

    第二部の主人公フィンは、父の敵に命を狙われながら旅に出るという冒険談。
    旅先での試練が並大抵ではない。
    お話の設定上奇想天外なのはやむを得ないが、旅の目的は現在の私たちと変わらない。
    何と引き換えにしても知恵が欲しい。その一点なのだ。
    コロナ禍で思うにまかせない日々を送る今、「行きて帰りし物語」の主人公たちと私たちは、なんと似通っているのだろう。
    恐れるばかりでは何も始まらない。
    少しでも判断力をつけたい。よく見る目とよく聞く耳と、正しい行動がとれることと。
    英雄ではなくとも、私たちも日々知恵を求める旅に出ているのだ。

    文字がなく口承に頼った文化だが、固有の民話や伝説を愛する気風が歴史上の苦境からのがれる拠り所となったらしい。誇りって大事だね。
    「暗黒のドゥルイド」はまだフィンの前に立ちはだかっている。続編が早く出てほしい。
    「アーサー王伝説」とともに、ケルト文学の入り口として最適かも。
    カナダが舞台ではあるが、「赤毛のアン」も実はケルト人のお話。
    プリンス・エドワード島にはアイルランドからの移民がたくさんいたのだ。
    そんな眼で読みなおしてみるのも面白いかもしれない。

    本書はどれも読み聞かせ用のお話たち。
    目次に★の数で難易度が表されているので、よく練習してのぞみたい。
    私も挑戦してみようと企画中だ。それこそ地図を持参して。
    日本では聞いたこともないような話に、聴き手が喜んでくれるのを夢見てもいる。

  • と言う訳で(?)三冊纏めて購入するコトに

    夜ふけに読みたい数奇なアイルランドのおとぎ話 - 平凡社
    https://www.heibonsha.co.jp/book/b491988.html

  • 夜ふけに読みたい シリーズ第3弾

    古のアイルランドに伝わる物語~
    異国の古に思いを馳せる
    素敵な私の中の大好きな思い~

    トゥアンの物語~バシュクネ族のクウァルの子フィンの物語

    カレルの子トゥアン(アルスターの家系)
    カレルの父は赤首ムレダハ
    実際の父はスタルン、そのまた父はセラ、パルトローン(ノアの孫)の弟
    パルトローンがアイルランドに来たのはノアの洪水のすぐあと
    トゥアンも一緒に来た
    トゥアンは、人間から鹿、イノシシ、タカ、鮭の一生を過ごす
    鮭の時、アルスター王カレルの漁師に捕らわれ、王妃に食べられた。やがて王妃は月満ちてトゥアンを産み落とし、王妃とカレル王の子にした。

    フィン(金髪という意味) 幼名、デウネ
    父は、アイルランドのフィアナ戦士団長クウァル
    フィアナ戦士団長の地位を狙っていたモルナに殺される
    母は、ムルネ「丈なす髪の美女」
    ムルネの父は妖精族ヌアドゥの子タドグ、母はエトリン女神
    兄は光の神「長い腕のルグ」

    フィンがフィアナ戦士団長になったあと、
    母の妹トゥレンと結婚したイラン
    イランは結婚する前妖精(シー)の娘ウハトデルヴ(美しい胸の意)と恋人だった
    結婚したイランに嫉妬し妻のトゥレンをハシバミの杖で猟犬に変えてしまい、大の犬嫌いのフェルグス・フィンリアトの屋敷へ連れて行く
    トゥレンがいなくなったイランはウハトデルヴの元へ行きトゥレンの魔法を解いてもらうが、犬である間に産み落とした二匹の犬の魔法は解けなかった
    この二匹が、ブランとシュケーオラン、フィンのいとこ

    フィンが愛し愛された妖精のサドヴ
    妖精国の暗黒のドルイドに求婚され、フィンが戦闘に行っている間に連れ去られてしまう
    七年後、狩りの最中に猟犬のブラン、シュケーオラン、その子どもたちのローウィル、ブロード、ロムルートが小さな男の子をみつける
    鹿の姿に変えられたサドヴに育てられた少年、オシーン(小鹿という意味)

    猫のパングル・バーン
    日本の平安時代のころにドイツで実際に生きていた猫
    アイルランド文学最古の猫
    南ドイツのライヒェナウという修道院でみつかった九世紀の古写本の落書きがもとになっている


    巻頭詩 猫のパングル・バーン
    マヴィル修道院へようこそ
    第1部 パングルのおはなしぶくろ
    小さな白い猫
    ものぐさな美しい娘とおばさんたち
    ヤギ皮をまとう少年
    金の槍
    語れなくなった語り部

    神さまがくる前の神さまたちのお話

    第2部クウァルの子フィンの物語
    (フィン・マク・クウィル)
    カレルの子トゥアンの物語
    (トゥアン・マク・カリル)
    フィンの少年時代
    ブランの誕生
    オシーンの母

  • いつだろうと、読んでるその時が炉端に火の弾ける夜ふけ。
    「パングルのおはなしぶくろ」と「クウァルの子フィンの物語」の二部構成。目次に各話の読み聞かせの難易度が表示してある。登場人物の多い話も珍しくないし、固定テキストを前提にした「読み聞かせ」にはちょっと向かないんじゃないかな……。「読む」ほうも聞くほうもたいへんそう。そして「語り部向け」と「旅の詩人向け」の違いは、「読み聞かせ」にはあんまり関係なさそう。

    巻頭詩「猫のパングル・バーン」にがっちり心をつかまれた。修道院で重宝されていた猫を称え、猫と写字生の自分と、それぞれの仕事に専心する喜びを綴ったもの。この本のナビゲーターを務める写字生アイドと3代目パングル・バーンが教えてくれる背景がとても面白かった。貿易船やウィスキーの蒸留所に修道院。鼠ハンターの活躍の場は幅広い。
    囚われの姫を助ける冒険もの、人間離れした若者の英雄譚、妖精郷への旅、繰り返す生まれ直しと変身など、物語は彩り豊か。怠け者が怠け者のままハッピーエンドを迎える、グリム童話とそっくりなお話もあるあたり面白い。大陸との交流の中で移入でもされたんだろうか。
    「金の槍」にはなんとなく、いつかアヴァロンからアーサー王が帰ってきてブリテンを解放してくれる……という伝説を彷彿させるものがある。アイルランドへの抑圧が反映されていそうな。

  • おうじさまがクズである。

  • たまには、こういう本を読みたい。
    妖精や動物、自然が出てくるのが面白いし、共感もてるから童話とか神話とか好き。

  • アイルランドのおとぎ話初めて読んだ。
    おとぎ話って大抵ドロドロしていたり人が不必要に死にまくったり(しかし明るい口調で)スッキリしない終わり方するものも多いけど、思っていたよりはスッキリ、あまり不幸にならないなあと思った。
    ただ、アイルランドについて全く詳しくないのと流し読みのようになってしまったので、もっと考察しながら読めたら面白いだろうな。
    子供だけでなく大人も楽しめる。フィンの物語はまだ続きがあるのね。じわじわと続きが気になる本だった。

  • 2020年6月新着図書

  • 2部構成でアイルランド民話と、神話からフィン・マク・クウィル(フィン・マックール)の話を編纂したものが収められている。

    繰り返される「3」のモチーフや王お抱えの語り部、変身譚などアイルランドらしい話が読みやすく編集されていたように思う。子どもが初めて触れるのに丁度いいのではないだろうか。もちろん大人にとっても読みごたえがある。

    アイルランドの物語はどれも曖昧な結末である。ハッピーエンドでもその幸せが永遠に続くかは分からないと匂わせるような雰囲気が漂っている。諸行無常……。

    フィンの老年の話が載っていなかったのはあまり心躍る物語ではなかったからだろうか。あまり幸せな一生ではなかった、程度にほのめかされていたのみだった。

  • ケルト神話にも通じるアイルランドのおとぎ話の短編集です。
    小さなお子様への読み聞かせにも良いし、
    小学生くらいなら自分で読むこともできるでしょう。

    本書に収録されているのは9話ほどで、少し物足りなかったかな、とも思います。

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著者プロフィール

東京女子大学英米文学科卒業。ミステリー、純文学、ロマンス小説、ノンフィクションの翻訳を手がける。主な訳書に、K.クイン『戦場のアリス』(ハーパーブックス)、D.B.ミラー『白夜の爺スナイパー』『砂漠の空から冷凍チキン』、H.ケント『凍える墓』(以上、集英社文庫)、S.ボーム『きみがぼくを見つける』(ポプラ社)など、訳書多数。

「2020年 『夜ふけに読みたい 神秘なアイルランドのおとぎ話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

加藤洋子の作品

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