神道入門 日本人にとって神とは何か (平凡社新書 305)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582853056

作品紹介・あらすじ

毎年、正月には数千万人もの人が初詣に出かけ、その一方で、神道の信者であると答える人は四パーセント。日本人にとって、神とは、神道とは、何なのだろうか?「見える神道」「見えない神道」の二つの側面から考えることで、初めてこの問いに、正面から向き合うことができる。神社、儀式、制度、ネットワーク、神概念、習慣・習俗など、神道の基礎知識をわかりやすく整理する。

感想・レビュー・書評

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  • 神道にかんする基本的な知識をコンパクトにまとめた入門書です。

    キリスト教やイスラム教などの創唱宗教を宗教の典型的なすがたとみなす観点では、教義内容や信者の範囲が明確でない神道は把握しにくいものに見えます。またたとえば「神道は自然との調和をめざす宗教である」といったような神道の本質を把握することをめざす議論は、しばしば独断的な解釈になりがちであると著者はいいます。このような神道のとらえがたさを踏まえたうえで、著者は「見える神道」と「見えない神道」という二つの側面を分けて、まずは前者に含まれる神社の歴史や神道思想などについて紹介し、その後伝統的な習俗として日本人の生活のなかに組み込まれている後者の側面についての解説をおこなっています。

    従来は民俗学が、著者のいう「見えない神道」の側面を解明することに従事してきましたが、著者は民俗学の成果を踏まえながらも、宗教社会学の立場からの検討をとり入れて、こうした側面に切り込んでいます。近現代の神道系の新々宗教の動向にも触れられており、また都市民俗学的な観点とのつながりについても、幅広く論じられている印象を受けます。

  • ・国学者と重なりつつも、一つの特徴ある流れを形成するのが復古神道家である。この流れにとって、決定的に重要なのは平田篤胤である。またその門人の大国隆正は、幕末維新期のいて政治的な影響が大きかった。
    …篤胤の処女作は『呵妄書』である。この書において、荻生徂徠の門人である太宰春台の『弁道書』が徹底的に批判される。春台は、神道は中国の聖人の道の影響によってできたことなどを主張した。弁道書の前半の方では、おおよそ次のようなことが述べられている。
    神武天皇より欽明天皇の代までは、日本に道というものはなかった。神道を我が国の道と思い、儒教仏教と並べて一つの道とするのは間違いである。天地山川、社稷宗廟の祭りを重んじ、災いを祓い、卜筮を行うのは、鬼神を恐れるからであって、神道はもともと聖人の道のなかに含まれている。今の世に神道と言っているのは、仏法に儒者の道を加えて作ったものであって、一見仏教と敵対するように見えて、実は一致しているのである。

    篤胤がこの書の内容を知ったとき、春台はすでに世を去って久しかったが、この書の細部にわたって逐一反駁を試みた。日本の神道が独自な基盤をもつことを主張した部分のあらましは、次のようになる。

    春台が、日本古代に道がなかったというのは卓見だが、中国に道があることを盛んに述べて日本を貶めるのはよくない。春台の頃までは、唯一神道、両部神道しかなく、真の道を説く者がなく、神道といえば、錫杖をふり、鈴をならし、大祓詞(おおはらえことば)を唱え、その他あやしきわざをすることのみを見慣れた時代であったから、真の神道を知らなかったのも無理はない。真の神道は、周易のなかに見える神道というのとは異なる。周易にある神は、実体を備えたものではないが、日本の神は記紀に出てくる諸々の神々である。その神々が始めた道であるから神道というのである。天地山川、社稷宗廟の祭りを重んじるのも、社稷宗廟の祭りは、先祖をまつるためであり、天地山川の祭りはそれぞれまつるべき伝説があって、山神、川神の名前まで分かっているからである。

  • 日本の歴史を理解する上で神道への理解を深めることは大事だよな、何かいい本ないかなと思って購入した本。
    著者はこの道では有名な方のようだが、申し訳ないが面白くない。
    ある程度の事前知識があれば内容が頭に入ってくるのかもしれないが、それなしに事実をつらつらと書かれるのはつらい。

  • 神道について学術的な見地からまとめられている一冊。

    神道がどうやって伝えられてきたか、海外に広がったか私達の生活にどのように影響しているのかくわしく書かれていました。
    求めていたもの(もっとライトな感じのものだったので)とは違いましたが四章などは身近な話題だってので比較的読みやすかったです。
    「入門」にしては難しいと感じました。

  •  現代に生きる我々にとっての神道とは何か?日本神話ではなく神道の定義などを知りたくて読んだ。

     神道を、「見える神道」「見えない神道」という風に分けたり、「宗教メーカー」「宗教ユーザー」という立場を区別したりと、わかりやすい。
     神道は、その時々の文化や他の宗教の影響も受けながら変化していっているものと言えそうです。
     しかし、その時々でも変化しない内容と変化していく内容があると思います。変化しない内容が神道の根幹でもあると思うので、その点でも分けて記述をしてほしかったと思います。

     書かれている内容も多岐にわたるため、本書を以て「神道とは何か」を説明しようとすると、同じように多岐にわたる説明をしなければなりません。
     ざっとですが読み終わったあとでも、いまだに神道がつかめない気がします。

  • 自分に身近な話ということもあって、第四章がとても興味深かった。読み終わって思ったけど、わたしは教派としての神道ではなく、民俗宗教としての神道に興味があるのかもしれないということに気づいた。信仰ともまたちょっと違うんだけど。宗教って難しいな~。答えがないな。

  • 神道のあらましを総覧できる本。十世紀はじめの「延喜式 神名帳」から現代の神社本庁までの歴史、国学者や神道系新宗教の教祖といった関連人物に詳しい。
    第五章では近現代の事象として四(=死)や九(=苦)を避ける言霊信仰や霊能祈祷師について取り上げられているが、神道と関連はあっても派生的なものなので、蛇足かなと思う。
    それよりも、第三章「神道に込められた情報」での神道の教えに紙幅を割いて欲しかった。

  • 結局のところ、日本人はどんな文化も安易に受け入れることができるのは、神道のおかげである。島国であるにもかかわらず、孤立せず、日本文化を保ちながら、海外の文化と争うことがなかったのは神道の多様性の考え方が土着していたからである。むろん、戦争はあったが、継続性はなく平和的な現状をみる八百万の神の功績はとてつもなく大きい。

  • 神道の中身より、近代以降の発展の歴史や経緯などに重点が置かれているので、人によっては期待はずれかもしれない。ぼくは逆に新鮮で面白かったけれど。知らないことがいっぱいあった。
    寺と違って、あまり人の姿が見えてこない神道、神社。仏教における良寛さんとか一休さんとか、そういうアイコンに乏しいせいなのだろうか。あるいは明治以降の国家神道が、政治的な目論見をもった人工宗教(?)だからなのかな?

  • 息子用

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著者プロフィール

國學院大學・神道文化学部教授。宗教社会学、現代宗教論、宗教文化教育研究。著書に『教派神道の形成』『新宗
教の解読』『若者と現代宗教』『図解雑学 宗教』『宗教社会学のすすめ』『神道入門』『宗教社会学がよ~くわか
る本』『本当にわかる宗教学』、編著に『現代日本の宗教社会学』『世界の宗教101物語』『ワードマップ 神
道』『図解雑学 神道』『現代宗教事典』『近代日本の宗教家101』ほか。

「2011年 『グローバル化するアジア系宗教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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