白川静 漢字の世界観 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582854404

作品紹介・あらすじ

白川静は、甲骨文、金文など漢字の始原を訪ね、「文字は神であった」という斬新な視点に基づき、『字統』『字訓』『字通』を初めとした多くの本を著した。その研究により文化功労者に選ばれ、文化勲章を受章している。だが厖大な著書の故もあり、その全体像は把握しにくいものだった。博覧強記の著者が"巨知"白川静に挑み、その見取り図を示した初の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 白川静に触れようと思い購入した一冊。
    「千夜千冊」の人。この人の頭の中はどうなっているだろう、と改めて恐ろしくなる。

    しかし、書かれた白川静もまた、知の巨人。
    中国という離れた里に果敢に踏み込みながらも、日本への回帰を果たそうと、一生の中でただ一途にそのことを成し遂げるなんて……。

    神と分かちがたく結びついていた時代の文字。
    その文字の使われ方から、在り方をおこす。
    賛否両論ある人だけど、そのような方法で信を持って深みに入っていくことが出来た人だ。

    『詩経』と『万葉集』を並べて読んでいたという所にも驚きだが、行為を呪能と結び、たとえば「若菜摘む」のような言葉に含まれた予祝の意味合いは目から鱗。な、なるほど。

    続いて、白川静本人の著作に触れようと思うのだけど、この一冊があまりに分かりやすく書かれていたので不安しかない(笑)
    しかし、松岡正剛も述べるように、私たちの今使っている言葉を、単なる記号としてしか扱えないのは、広大な時間を生きてきた日本語にとってあまりに不幸なことなのだと思う。
    そして、日本語に触れるためには、平仮名・片仮名はもちろん、やはり真名である漢字から目を逸らすことは出来ない。

    許慎の『説文解字』のように、為された偉業を頼りに私たちは次の道に進むことが出来る。
    それ以上に、研究としてまずは大元を見、大元から立ち上げてゆく白川静の歩み方は尊敬しかない。

  •  松岡正剛から白川静への愛が感じられる一冊だし、ものすごく読みやすく入りやすい文章。白川静入門として完璧だった、と思う。
     白川静の中で「漢字は日本の国字」であるというのはそうで、日本語は文字から離れられない。いま、この瞬間に漢字が消え去った場合、中国やベトナムはやっていけるかもだけれども、日本はやっていけないのではないかというのは、白川静も、それから白川静に批判的な側の人も、同意見だったように思う。

  • 現代の知の巨人のひとり松岡正剛による、中国後漢の許慎から1900年のときを経て、新たな「漢字の体系」を纏めた白川静の評伝かつその世界観を概説した著作。
    著者は冒頭で、白川静を語ることは、「文字が放つ世界観」を覗き、「古代社会の人間の観念や行為」をあからさまにし、「中国と日本をつなぐ東洋思想の根底」を深くめぐることにほかならない大仕事であると語っているが、まさに、白川氏がその三つを突き詰め、結びつけることによって、独創的な研究を築き上げ、中国においてさえ過去誰も成し遂げられなかった漢字の体系・原理を明らかにしたことが、綴られている。
    具体的な漢字の成り立ち・意味も多数紹介されている。白川氏は漢字研究のごく初期において、多くの漢字の一部に使われる「口」は、唇や歯のある口ではなく、言霊を紙や木に書いて入れておく容器を指していることを発見したが、そのことすら、漢字の解説の古典中の古典と言われる許慎の「説文解字」でも、それ以降の研究でも誰も明らかにできなかったのだという。
    白川氏は、「漢字には文字が生まれる以前の悠遠なことばの時代の記憶がある」、「この漢字をもってしか、もはやわれわれの東洋的原初の構想や祈念や欲望や憎悪を振り返ることはできないのではないか」と考えていたと言うが、今日なお脈々と生き続けている世界で唯一の象形文字・表意文字である漢字を国字として使う日本人として、この文字の持つ深遠なる意味を感じることができた。
    (2009年11月了)

  • ざっくり読んだ。白川静がどのように漢字研究の道に入ったか、なぜ孔子伝を書くにいたったか。20歳で詩経と万葉集を同時に読む、31歳で立命館大学漢文学科に入学など、白川静が地道に漢字研究への道をたどったことが分かる。

  • この本を手に取ったきっかけは、子供の頃親が買い与えてくれた字典が白川先生が関わっていいたものだった事を思い出したからです。
    一文字ずつの成り立ちの説明がついていて、とても関心を持って読んでいたことを思い出します。友達は全く違う字典使っていたけれども、うちの親は個性的だなぁと今になって思います。
    両親に感謝です。

    ※心に残ったこと※
    全体的に松岡先生の文章は難しく、正直自分でも100%理解できているとは思いませんでした。
    そんな中で壱番心に残ったことは、日本語の素晴らしさです。古墳時代に中国から漢字が入ってきてから日本語のリテラシーが確立して行くまでの流れについてなんて、今まで考えたことがなかったけれども人々の努力によってできあがっていく様は非常に興味深いなぁと思いました。
    機会があれば日本のリテラシーの確立についても、もう少し何か本を読んでみたいなぁと思いました。
    また若干ですが本書の中に孔子が登場しました。白川先生独特の孔子伝を読んでみたいなぁと思いました。
    白川先生の志は70歳になって日本語についてなどの本をまとめたいと決意して職を辞したというエピソード、その熱意に感動しました。
    自分自身も急いでいるときなど、文字をくずしたりしたり略して書いていることがよくありますが、今回この本を読んでみて文字の大切さを、改めて感じました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「両親に感謝です。」
      ご両親に感謝出来る梅子さん偉いワ!
      白川静字書三部作(「字統」「字訓」「字通」)は、欲しいと思いつつ手に入れそびれてい...
      「両親に感謝です。」
      ご両親に感謝出来る梅子さん偉いワ!
      白川静字書三部作(「字統」「字訓」「字通」)は、欲しいと思いつつ手に入れそびれている。そんな訳で平凡社ライブラリーのエッセイ(「字書を作る」「文字遊心」「文字逍遥」等)で我慢しています。。。
      2013/04/08
  • 10年ほど前、読み始めて挫折。今回は一気に読めた。
    白川静の漢字学への案内をする本。わかりやすくはなく、読む人を選ぶ。
    文字(漢字)の始原、文字は神であり、巫祝の行事と結びつき、個々の文字自体が呪能を持っていた・・・という白川の主張。
    著者松岡はえらく感嘆している。その時代に思いをはせれば、文字に畏怖を覚えるが、秦の始皇帝の文字統一と巫祝による統治の時代が終わった後は、文字は呪能とは切り離されたので、現代とは2000年の断絶があると思ってしまうのはひねくれているかな?

    つまり古代中国シャーマンの時代の文字と呪能に興味がある人には、この本も白川静の著作もおもしろいでしょう。

    白川が70歳過ぎてから、「字統」「字訓」「字通」の字典3部作を著したことには感嘆。
    どの文字がどういう呪能を持っていたかを明らかにする研究自体は大変な業績。ちなみに文字の呪能に興味があれば「字統」を読むのが一番です。

  • 漢字の新たな境地を示してくれた。日本人は中国文化を取り入れたことだけではなく、それより先進化させて現在を作ったことに感動。また白川さんの宇宙にも感銘。

  • 松岡のことは好きとは言い難いが、白川を嫌いとは言え無い。これまた除籍本。

  • 白川静の漢字学が面白いのは知っていたが、この本も入門用の解説として面白かった。さて次は何から読んだものか。

  • 人は言葉を使って考えているとするならば、日本語が、どういう言語なんだろうということを知らなければ、自分がなにを考えているかすら分からないということになる。

    と思って、日本語について、学んでみようと思って、読んでみた1冊。

    数年前に評判になったような気がしていたが、2008年が初版。もう10年以上前の本なわけですね。

    白川静。面白そうななんだけど、どこから手を付けたらいいのか分からない状態であったが、なんとか、全体の地図みたいなのが、浮かび上がってきた感じ。

    そっか、万葉集と詩経、孔子みたいなところに、多分、私の興味はありそうだな。

    万葉集の「東の野に炎の立つ見えて かえりみれば月かたぶきぬ」の読解はスリリング。

    そして、この歌を書き記しているのはいわゆる万葉仮名なんだけど、そこには、外国からやってきた漢字を日本人なりに使いこなす工夫があり、そこから、カナ文字、カタカナを生み出し、漢字の音読み、訓読みを使いわけて、日本語化していたった日本の先人たちの膨大な苦労と工夫。

    話し言葉と書き言葉の違い。

    パロールとエクリチュールといえば、そうなんだけど、表意文字である漢字、そして、それを日本語として使うためのもろもろの工夫に思いやると、ちょっと気が遠くなってしまう。

    日本語で考えるというテーマに読み言葉と書き言葉というテーマが組み込まれて、話しはますます複雑に。。。。

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著者プロフィール

一九四四年、京都府生まれ。編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。一九七〇年代、工作舎を設立し『遊』を創刊。一九八〇年代、人間の思想や創造性に関わる総合的な方法論として″編集工学〟を提唱し、現在まで、日本・経済・物語文化、自然・生命科学、宇宙物理、デザイン、意匠図像、文字世界等の研究を深め、その成果をプロジェクトの監修や総合演出、企画構成、メディアプロデュース等で展開。二〇〇〇年、ブックアーカイブ「千夜千冊」の執筆をスタート、古今東西の知を紹介する。同時に、編集工学をカリキュラム化した「イシス編集学校」を創設。二〇〇九~一二年、丸善店内にショップ・イン・ショップ「松丸本舗」をプロデュース、読者体験の可能性を広げる″ブックウエア構想〟を実践する。近著に『松丸本舗主義』『連塾方法日本1~3』『意身伝心』。

「2016年 『アートエリアB1 5周年記念記録集 上方遊歩46景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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