『罪と罰』ノート (平凡社新書 458)

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 85
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582854589

作品紹介・あらすじ

人を殺すことはなぜ許されないのか、ラスコーリニコフはこの物語の後、ひとりの人間として甦ることができるのか。人間存在の根源についてどこまでも考え抜いた作家、ドストエフスキー究極の主題に挑む渾身の一書。一文一文との格闘から生まれた新解釈、亀山=ドストエフスキーの真骨頂。

感想・レビュー・書評

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  • 文学

  • 【読書その97】亀山郁夫氏による罪と罰の新解釈。同氏による本をいくつか読んでいるせいか、非常にすんなり解釈に入るこむことができて、また罪と罰に対する新しい読み方を知った。再度ドストエフスキーの違う本も読んでみたい。

  • 本痴【ほんち】さんがゆく!
    第一痴 『罪と罰』ノート 亀山郁夫

    この間ものの本を読んでいたらば、著名な評論家?の方が、アマゾンなどでいろいろな感想文を見かけるが、いわゆる現代の流行作家ばかりを追いかけて、古典の基本をおさえていない人はいかがなものか、のようなコメントが。

    どき。

    宮部みゆきさんや道尾秀介さん、東野圭吾さん辻村深月さん大好きです。それがいけないとはいわれてないけど、でもそうか、あたし、古典、読んでないなあ、あるいは読んでもすっからかんに忘れてる。『罪と罰』あれえ、太陽が眩しくて人を殺す話?(それはカミュの異邦人です!)いやじゃないか、えっとあれか、兄弟の親殺し?(近づいたけどそれはドストエフスキーの別の作品ね、カラマーゾフの兄弟)てな具合です。お粗末。

    ロシアねえ。
    まず、人の名前が覚えられない。長いのよ。しかもあだ名にしないで!ムリ!

    この『罪と罰』も、長い話だから登場人物多いんだろうなあ、しかもあれでしょ、長い割には要約すると、「優秀な若者が金貸しの老婆を殺害して、苦悩の果てに自首する」だったよね?えーそれがなんでそんな長いの?それにさあ、ロシア文学って食べ物が美味しく書かれてないんだよねー
    って感じの印象しかなく。

    で、思いつきました。

    ゲーム買う前にゲームレビュー読むみたいに、「攻略本」読めばいいじゃん!
    ということで手にとったのが、本書。日本の第一人者だしこれなら安心してあらすじというなればステージごとのイベント紹介と攻略法が書かれているわけだ。やったあ楽勝。
    これで本チャン前に、予習してのぞめるぜ!という。

    なので、本を知らない音痴=オンチならぬ本痴=ホンチさんこと私が、攻略本を読み解く企画を立ち上げました。
    今回の攻略本は、亀山郁夫氏の『罪と罰』ノート。
    読みながら、そこで言及されている登場人物をメモしてゆき、ポイントになることも合わせてメモ。これを暗記カードとして売られているA6用紙いちまいに収めてく。別に受験生じゃないけど一枚にしとけば、実際に原作を読むときに(読むかはわかんないけど笑)文庫本でもこれを一枚挟めば読みやすいだろうと。

    で、あたしなりにもし今後『罪と罰』を読むとしたら気をつけたいポイントをまとめました。

    ・数字に注目。13や30など、随所に出てくるらしい。例えば書かれている物語は、エピローグを除くと正味13日間で終結するといった具合
    ・ドストエフスキーさんは幾重にもストーリーを書いて、チラ見せするのが好きらしい。ソーニャが初めて寝たのは誰か、マルメラードフの死因は事故が自殺かなど、なぜソーニャの母カテリーナは、狂死?の前に政府の高官であるイワンに直談判できたのか?ある補助線でがらっとストーリーは輻輳するかも?
    ・主人公ラスコーリニコフとの対比で置かれているのは父の位置にもあるスヴィドリガイロフ。実際のドストエフスキーは父に反発していたとの洞察もあるが、ラスコーリニコフにはスヴィドリガイロフを憎悪する能力が欠けている
    ・主人公の恋人?のソーニャに強く紐づくのが、主人公が偶発的に手にかけてしまうリザヴェータ。彼女にはソーニャを通じた母としての位置付けと、加えて神のモチーフも与えられている。つまり物語には、母殺しと神殺しが投影されている。

    おー。なんかそう聞くとこれ、あたしの大好きな推理小説ばりに、複雑に作者の計算と謎解きがちりばめられてるじゃないですか。
    なんだ、古典って、事件性がなくて平坦で、心情を読み取れないと楽しめないのかと思ってたけど、これはいけるかも。
    もし読んだら感想書くけどとりあえずは、攻略本を先行で読んで、ほんとに読みたい古典を探す、この方式で行きます!

  • 永遠の名作『罪と罰』の新訳で知られる亀山郁夫教授による解説書です。齊藤孝教授も『罪と罰』を何度も読み返すと聞きましたが、本書を読んで初めて知ったディティールの細かさに何度となく驚かされました。

    これを読む前、ロシアで製作されたドラマ版の『罪と罰』を見ていました。原作に忠実なつくりで、主人公のロジオン・ラスコーリニコフがたどる苦悩と『救済』への道のりが丁寧に描き込まれていました。亀山郁夫教授による『罪と罰』を呼んだのはそれよりも何年か前の話になりますが、忘れかけていた話のディティールを映像で視覚的に思い出したあとで、本書を読むとまた違った感慨がわくものでありました。

    ここには亀山教授によるドストエフスキーが人間に向け投げかけられた根源的な問いである
    『人を殺すことはなぜ許されないのか?』
    『人は人を本当の意味で裁くことができるのか?』
    『傷ついた人間の魂に復活は果たしてありえるのか?』
    ということが記されております。僕は正直ここまで『罪と罰』を読み込んだことが無かったので、ページをめくるたびに『おおっ!?』という新鮮な驚きと『ええっ、そんな解釈もアリなのか!?』という衝撃を覚えてしまいました。

    たとえば、究極のダメ人間であるマルメラードフの会話からこの物語の時間軸が13日間であることを割り出したり、『黄色の鑑札』を受ける前にソーニャが初めての『仕事』をした『相手』に関する箇所はそうでした。

    「ナポレオン主義」という独特の選民思想に取り付かれた元大学生のロジオン・ラスコーリニコフがその思想を実践するために金貸しの老婆であるアリョーナを斧で殺害するというのが大まかな筋ですが、偶然その場に居合わせてしまった『神がかり』である腹違いの妹、リザヴェータまでもを殺害してしまった所から、彼のロジックに狂いが生じるのです。狂気の街、ペテルブルクを彷徨しながらラスコーリニコフは様々な人物と出会います。予審判事のポルフィーリーとの鬼気迫る頭脳対決。スヴィドリガイノフやマルラメードフなどに代表される『規格外』の過剰な人物。彼等彼女等の内在的論理や行動原理を亀山教授は丁寧に解き明かしていきます。この辺はさすが専門家と、脱帽の限りでございました。

    やがて、罪の重さに耐え切れなくなったラスコーリニコフはソーニャの部屋で自らの罪を告白する場面では聖書の『ラザロの復活』の箇所をソーニャに読んでもらうのですが、ここにも様々な『意味』が挟み込まれてあって、読んでいてとても面白かったです。

    ラスコーリニコフはシベリアに8年という比較的『軽い』罰で徒刑するのですが、ソーニャが彼を追ってシベリアに赴くという展開。自らを『凡人』と悟り、ソーニャとの愛に生きるという希望に満ちたラストに何を見出すのかは我々一人ひとりの中にあるものですが、この小説の持つ奥深さを存分に教えてくれたということで、本書とは出会って良かったなと心からそう思っております。

  • 名作に対し自分の精神を賭して対峙した作品のうち、私が最も感動したものです。今春、名古屋外国語大学の新学長に就任された亀山郁夫先生は、今わが国最高のロシア文学者であることは言うまでもありません。ドストエフスキーの『罪と罰』は、その亀山先生の読書遍歴の起点にある作品です。先生はこの名作に十代の前半で出会いました。先生の精力的な近現代ロシア文学研究、ドストエフスキー翻訳活動の源流は正にここです。亀山先生は、『罪と罰』の読み方は二つあり、「事前の物語として読むか、事後の物語として読むか、で根本から意味は変わる。」(p.134-135)と言っています。十代半ば近くに『罪と罰』を読んだ先生は、「そのリアリティーを全身で受けとめてしまう読者」でした(p.134)。ドストエフスキーの記述をまるで生々しい自分の実体験のように受けとめ、まずその迫力に圧倒されたということなのでしょう。 
    本書は、『罪と罰』全6部とエピローグの内容をそれぞれ丁寧に要約しつつ、多面的な自問を提起し、格闘し、血の出るような渾身の自答が開示されて行きます。この名作が、このように細密に読まれたことがかつてあるでしょうか。本書は、こうして私たちを無数のディテールの深層へ導いてくれるのです。小説とこのように向き合ってこそ、人生の中で小説を読んで成長するという体験をもつことができるように思います。おそらく「名外大の学生にこの本だけは読んで欲しい。私の翻訳で」と亀山先生は思っておられますよ。
    [塩見図書館長]

  • 文庫版の読書ガイドの補強的資料。
    個人主義の台頭、フーリエ主義、スヴィドリガイロフの位置づけ等々は参考になった。

  • 本と一緒に読むといい。

  • 本編を読むには時代背景を知らないと進みません。本書は格好なガイドです。他の作品も必要ですね。

  • 亀山氏の評論を読んで、ドストエフスキーの著作に触れた。
    哲学的な考察を含んでおり、読了後の感想には個々で異なるものがあがるのではないだろうか。
    亀山氏訳語による光文社文庫のものも先日やっと読み終えた。
    一回読んだだけでは、まだ咀嚼しきれないもの。何度か読み返してはじっくり考えてみたい。

  • (2011/11/19購入)

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著者プロフィール

ロシア文学者、名古屋外国語大学学長
1949年栃木県生まれ。東京外国語大学外国語学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。天理大学、同志社大学を経て1990年より東京外国語大学外国語学部助教授、教授、同大学学長を歴任。2013年より現職。専門はロシア文学、ロシア文化論。著書に、『ドストエフスキー父殺しの文学』(NHKブックス)、『新カラマーゾフの兄弟』(河出書房新社)『『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する』(集英社新書)など、訳書にドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』( 共に光文社古典新訳文庫)など多数。

「2019年 『ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』 2019年12月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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