書いて稼ぐ技術 (平凡社新書 494)

著者 :
  • 平凡社
3.14
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本棚登録 : 244
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582854947

作品紹介・あらすじ

フリーライターは名乗れば誰でもなれるが、それで食べていけるかどうかが肝心。何をどう書き、得意ジャンルをいかに確立するか。自らのキャリアをどのようにデザインするか。そして、世間をどう渡っていくか-。文筆稼業25年の著者が自らの体験を披瀝し、「書いて生きる方法」を説く。

感想・レビュー・書評

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  •  フリーライターという仕事の実態や雰囲気がよくわかる本。

     第1章ではフリーライターのなり方から丁寧に書いてあるので、趣味(アマチュア)でブログをやっている人でライターに興味がある人は、本書に従ってやれば兼業ライターになれるんじゃないかと思う。
     面白いなと思ったのは、「編集者が見ているのは人柄」だとか、会いに行く時は身だしなみに気をつけろ、など当たり前の事がかなり丁寧に書かれていること。文筆業というと自分が書く文章のことにばかり気がいき、出版業界も一般社会の一つであり普通のビジネスマナーが大事だってことに気づかない人が多いのであろう。(でもこれはフリーライターを目指す人だけでなく、就活生なんかもそうで、結局どこかで誰かに教わらなきゃ知らないまんまってだけのことなんだと思う)

     メモ術などの仕事術や企画書の書き方など、フリーライターになることを目指していなくとも参考になる話が多かった。

     また、書評について、批判を書くべきか書かないべきかという話も、かなり面白かった。
     私個人は、基本的に批判めいたことは書きたくないし、紹介に値しないと判断した本はそもそも取り上げないようにしている。その上で、手放しで紹介できないものについては批判を加えるが、基本的に紹介するのはそれ以上に読む価値があると思うから。なるべく読む対象を明示するようにして紹介しているのも、読むべき人に向けて紹介文を書きたいからである。
     そんなことを脳裏に浮かべながら読んでいると、結論的にはかなり近いことが書かれていたように思う。興味のある方は、ここだけでも是非読んでいただきたい。

     著者自身が公言している左翼的なスタンスやそれっぽい指摘はちょっとアレだったが、それ以上にライター業界や出版業界の話が興味深かった。「他人に読んでもらう文章」を考え直すという意味では、ライターに興味がある人以外も(例えばここでレビューを書いている人にも)読んでもらいたい一冊。

  •  永江はこれまでにも、『インタビュー術!』と『〈不良〉のための文章術』というライター入門を書いている。その2冊は、それぞれ取材術と文章術に特化した内容だった。対して、本書はライターという仕事の全体像を概観するものになっている。

     また、前2冊はわりと高度な内容で、すでにライターとして食っている人が読んでこそ参考になるものだったが、本書は初歩的な内容で、ライター志望の大学生あたりが読むとちょうどよいものになっている。「『どうやってなる』『どうやって続けていく』という、いわばキャリアデザイン的な部分に力を入れ」(あとがき)て書かれているから、なおさらだ。

     すでにライターである人には『インタビュー術!』『〈不良〉のための文章術』を、ライター志望者には本書をオススメしたい。

     したがって本書は、ライター生活四半世紀近い私が読んでも、あまり得るものはなかった。なにしろ、「ゴーストライターといっても、幽霊について書く仕事ではありません」なんてレベルから説き起こした内容なのだから……。

     ただ、著者自身の体験談がふんだんに盛り込まれているので、同時代をライターとして生きてきた私には、共感したり身につまされたりする点なら多かった。
     たとえば、次のような一節――。

    《バブル崩壊とインターネットの普及によって、ライターがたむろする編集部という光景もなくなりました。出版社は経費節減でライターに食べさせる無駄飯などなくなりましたし、タクシー券も出なくなって立て替え払いの後日精算となりました。》

    《地域とのつきあいも大切です。とくに隣近所の。フリーライターはただでさえ隣近所から白い目で見られがちです。昼間っから家にいたり、街をぶらついていたり。服装も夏は短パンTシャツ、冬はデニムにセーター。うさんくさいと思われている。だからこそ、「おはようございます」「こんにちは」「おやすみなさい」の挨拶は忘れずに。》

     また、出版業界人が寄ると触ると不景気な話になる昨今だが、その中にあって、永江が次のように述べていることには勇気づけられた。

    《こんな時代だからこそフリーライターに、と私が考えるのは、相対的に出版産業が不況に強いから、ということでもありますし、それよりなにより、「いざとなったら会社より個人」と思うからです。会社はつぶれるけど、個人は死ぬまでつぶれません。》

  • 昔の本だけどいろいろ参考になった。

  • ===引用ここから===
    大切なのは、「やりたいこと」より「やれること」、「できること」です。いまできることをやればいい。手持ちの札だけで勝負する。いちばん堅実で間違えないやりかたです。やれることをやりながら、少しずつやれることを増やしていけばいい。
    ===引用ここまで===

    文筆家、永江朗氏が、フリーライターとして生きていくにはどうしたら良いか指南します。名刺の作り方、営業や企画のノウハウから始まり、メモの取り方、アイデアの整理、調査や質問の仕方、関係者との付き合い方や印税など実務的な面でのアドバイスを説明します。あまり知る機会のなかった『お金』の面など、文筆家の苦労と楽しさが伝わってきます。

    まず、名を知られてないライターが初めにするべきは、企画書を作ることですね。ちなみに、パワポで小奇麗に凝ったものを用意するのではなく、汚い字で威勢だけいい企画書の方が、人柄が滲み出ていていいとのこと。出版業界の文化を表しているようにも読めますが、言わんとすることは理解しました。

  • 内容的には、文章技術論はほんのわずか。ページの大半を費やして書いてるのはライターとしての営業術、要するに売り込み方にはじまり人生設計を説き、その後に発想術や取材術が続く。この構成でわかるようにキャリアデザインに重きを置いてる。まぁ、確かにライター志望だから、文章のいろはは熟知している。一番の難関は「仕事をいかにゲットする」かに尽きる。著者は本書の中で、名刺は持ち歩け、好印象を与えろ、他人がやりたがらない企画が編集者には好まれる、得意分野を持て、1枚の企画書が次の仕事につながる、自分の著書があれば名刺代りになるなど・・・。列挙したことは至極当たり前だけど、執拗なまで力説するところをみると、いかにこれらが疎かになってるんでしょうなぁ。

  •  本についての書籍も書いている作者がフリーライターとしてやってく為に何が必要かを語る。

     出版業界やライターの日常が伝わってくる。名刺をつくる、できれば早めに自費出版でない著作を一冊出しそれを本当の名刺とするというのにはなるほどなぁと思った。
     ただ、おそらくこういう本を読む人の最大の疑問はどう最初のコネをつくるかであると思うが、著者についてのどうライターになったかは書いてあるものの、これを読んだ人達がどう最初の取っ掛かりを手に入れるかについては満足いく内容ではないのではないかと感じた。

  • <本文より>
    大切なのは、「やりたいこと」より「やれること」、
    「できること」です。いまできることをやればいい。

    手持ちの札だけで勝負する。いちばん堅実で、間違えないやりかたです。
    ――
    フリーライターの仕事は、読者に代わって何かをする、いわゆる代行業みたいな
    ものです。書評は読者に代わっておもしろい本を探して紹介する選書代行業。
    読者はその本がどんな本なのかを知りません。著者についても予備知識がない
    かもしれません。そういうまっさらな状態の読者にその本のことを伝えるわけです。
    ――
    そのように考えると、私が書いているこの書評も、代行業なんですね。
    このブログを読んでくださった方が、私の感動に共感してくださって、
    書店やネットで、本を購入して下さったら、素晴らしいことですね。

  • チェック項目5箇所。フリーライターで食べていくのは大変だ、とよくいいます、だけど大変なのはフリーライターだけじゃない。テレビは時間をむだにします、受動的なメディアですから、本や雑誌だったら、つまらないともう読み進められない、おもしろくてやめられないということはありますが、テレビは油断するとまったく内容のないバラエティ番組や通販番組までだらだら見てしまいます。松永真里さん・・・初対面の人に会って知りたいのはその人の価値観。新人ライターは自分のウェブサイトかブログを持つことが不可欠。世の中には同時に複数のことができる人と、一つのことに専念して確実に片づけていく人の二パターンがある、後者の人はライター向きではない。

  • 314

    私の知っている優秀な編集者たちには、古書店と図書館をうまく使うという共通点があります。わざわざそのために仕事場を神田神保町に移した、なんていう人もいるくらい。古書店は「本を安く買えるところ」というイメージがあるかもしれませんが、 店の性格のひとつでしかありません。古書店には古い本も新しい本も、いわば時空を超えて本が並びます。昨日出たばかりの本も並べば、1200年あまり前につくられた百万塔陀羅尼まで売っています。

    図書館を積極的に利用しましょう。図書館がいいのは、辞書などレファレンス本しているところです。いまどき大百科事典なんて図書館に行かなきゃ見られません。少し 規模の大きい図書館なら、複数の大百科事典があります。同じ項目を読み比べると、けっこう違いがあります。暇な日は、ぼんやりテレビを見たりネットに夢中になってむだな時間をつぶしていないで、近所の図書館に行ってみてください。何の目的もなく書架を端から順番に見ていく。本の背表紙を読んでいくだけでも、いろんなことを思いつくはずです。 ふだんは足を踏み入れない児童書コーナーに行くのもいいでしょう。衣食住の歴史などを わかりやすく図解した絵本や図鑑のたぐいがたくさんあります。閲覧室に持っていってぱらぱらめくってもいいし、借り出してもいい。

    資料の基本は本です。どんな本をどう読むかによって、フリーライターの仕事の質は決 まります。趣味で読むのではありませんから、好きな本だけ読んでいればいいというものもない。ときには苦手なジャンルや嫌いな人の本も読まなければなりません。 退屈でも、我慢して読むしかありません。 フリーライターとして仕事をするときは、同じテーマの同じような本を大量に読むことをおすすめします。同じような本を何冊も読むのはムダなことのように思えるかもしれませんが、ムダなようなことを敢えてすることによって見えてくるものもあります。 同じテーマの本をたくさん読んでいると、そのテーマに関する本質が見えてきます。私はこの現象を「球が止まって見える」と呼んでいます。松井やイチローにとってピッチャ ーの投げたボールが止まって見えるように、そのテーマの本質が見えてくるのです。 似たような本であっても、著者が違えば主張は少しずつ違っています。違っているはず です、類書がたくさんある中で、著者は自分の主張がいかに他と違っているかを訴えようとしますから。少しずつ違っているんだけれども、共通しているところもたくさんあります。 その共通しているところが、同じテーマの本をたくさん読むことによってだんだん、 絞られてきます。そのテーマについての最大公約数的なもの、それが「本当のこと」と 言っていいでしょう。 「本当のこと」は陳腐なものです。だいたい私たちの常識にかなうもの。一見、常識に反しているようでも、よく考えると納得できるもの。

    「本当のこと」が見えてくると、「嘘のこと」も見えてきます。財テクでいうなら「収入 を増やして支出を減らす」ということから外れた突飛な提言は、見た目は派手でもどこか 嘘くさい。陳腐でないもの、凡庸でないものは、どこかに無理があります。ネタとしては それでいいのかもしれませんが、あくまでそれはネタです。 もしもそのテーマに関する本を一冊しか読まなかったとしたら、それはギャンブルみた いなものです。それがとてもすぐれた内容の本だったら当たりです。その一冊から得られ るものは大きいでしょう。しかし、それが奇をてらっただけのトンデモ本だったら、間違った知識を得ることになります。間違った知識を元にしたのでは、間違った原稿しか書けません。その本が当たりかハズレかは、本をたくさん読んでみないとわかりません。たくさん読むうちに、その本を相対的に評価できるようになります。

    私は小説を仕事で読むとき、登場人物の一覧表をつくることがあります。といってもき ちんとした一覧表ではなく、新しい人物が現われるたびに紙に名前をメモしていくだけで すが。小説は人間関係を把握すればだいたい全体像がつかめます。登場人物の名前以外に、 地名など固有名詞を紙に書いていくこともあります。固有名詞は小説を読むときの鍵にな ります。哲学者の鷲田清一さんに、海外文学を読むときのコッを教えてもらいました。登場人物 の名前を暗記することだそうです。鷲田さんはドストエフスキーの小説に出てくる人物の 名前をずらずらっと諸んじて見せました。登場人物の名前を覚えてしまうと、ストーリー も、印象的な文章も、記憶することができます。

    出版業界は学歴や階層からいってもかなり特殊な、偏った世界です。学歴は圧倒的に四年制大学卒業以上が多い。高卒の人や短大卒、専門学校卒の人もいますが、数からいうと です。また高卒や短大卒、専門学校卒で出版業界に入った人も、日ごろから読書によって四大卒以上の知識を身につけている人が多い。

    結婚もリスク分散のひとつです。昔から、ひとりでは食べられなくても、二人ならなん とかなる、といいます。ひとりで年収一五〇万円の生活はつらいけど、二人合わせて三〇 〇万円ならなんとかなるかも。結婚しても生活費は倍になりません。多少広いところに移 るとしても家賃は倍にならないだろうし、食費も少し増える程度でおさまってしまいます。 光熱費もあまり変わらない。 貧乏だから結婚できないといいますが、貧乏な人は結婚したほうがいいです。独身のひ とり暮らしなら失業すると収入ゼロ。結婚したら、片方が失業してももう一方が家計を支 えられます。収入ゼロではないので、仕事探しもうまくやれるでしょう。

    ライターは常に新しいジャンルを開拓していかなければ生き残っていけません。 生物学者の福岡伸一さんの著作に『動的均衡』というエッセイがあります。生物は食物 などのかたちでたえず外部を取り込み、自分の細胞をどんどん入れ替えています。それが 生命という現象です。見かけは同じでも、常に変わっている。変わらなければ死んでしま いますし、死んでしまったものは変わりません。変わらずにいて死んでしまったものは、 腐って消えていくだけです。しょうが、均衡を保つためには動的でなければならない。あらゆる職業にいえることで ライターもまったく同じです。 こういうと大げさに聞こえるかもしれませんが、ようするにいろいろやってみる。じたばたしてみる。

  • 著者はフリーライター。ライターのなりかた、生計のたてかた、取材の仕方など、ライターという職業のよいところ大変なところがよく分かる。安定した生活をしていくためのリスク対策は、ライターでなくても参考になるところが大きい。出版業界の諸事情も面白い。さらりとした文体で、とても読みやすかった。

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著者プロフィール

1958年生まれ。ライター。書籍輸入販売会社のニューアート西武(アールヴィヴァン)を経て、フリーの編集者兼ライターに。90~93年、「宝島」「別冊宝島」編集部に在籍。その後はライター専業。「アサヒ芸能」「週刊朝日」「週刊エコノミスト」などで連載をもつ。ラジオ「ナルミッツ!!! 永江朗ニューブックワールド」(HBC)、「ラジオ深夜便 やっぱり本が好き」(NHK第一)に出演。
おもな著書に『インタビュー術!』(講談社現代新書)、『本を読むということ』(河出文庫)、『筑摩書房 それからの40年』(筑摩選書)、『「本が売れない」というけれど』(ポプラ新書)、『小さな出版社のつくり方』(猿江商会)など。

「2019年 『私は本屋が好きでした』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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