- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582854985
作品紹介・あらすじ
レヴィ=ストロースの壮大な思想は、安易で図式的な理解を拒むが、彼独特の「世界との接し方」を見ることで、構造主義と呼ばれる「ものの見方」にまで通底する、思想家の仕事の核心に肉薄する意欲作。百年を超える生涯を通じて、彼は何と闘ってきたのか。現代世界に生きることのモラル、もうひとつの豊かさの思考。
感想・レビュー・書評
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レヴィ=ストロースが思想を形成するプロセスに光を当てた本。若き日のレヴィ=ストロースの思考の軌跡をたどることで、「構造主義以前の構造主義の感覚」に触れることがめざされている。もう少し著者自身の解釈を前面に押し出してもよかったのではないかと思う。なお、巻末に詳細な「レヴィ=ストロース著作・論文リスト」が付されている。
レヴィ=ストロースは音韻論的な知の適用領域を、言語によるディスクールの空間から、自然の多様性そのもののリアリティに根拠づけられた思考の空間へと解き放つことで、文化の中に自然を根づかせた。『生のものと火にかけたもの』における、人類が火を獲得する神話の分析は、火を用いて料理することが、自然から文化への移行を印づける出来事であることを示している。のみならず、「料理により、料理を通して、人間の条件がそのすべての属性を含めて定義されて」いると述べられる。
自然と文化を峻別するのではなく、自然の中に文化を根づかせることがレヴィ=ストロースの狙いであったとすれば、「人間とは交換するものである」という人間の本質の解明が彼の狙いであったという理解はあたらないということも理解されるだろう。著者は、個人が集団に帰属するという「同一性の論理」を超えて、「交換と循環による水平方向への関係の展開と伸張」に、今日なお理解されていない、レヴィ=ストロースの思想の意義を認めている。さらに著者は、ネイティヴ・アメリカンが、白人の持ち込んだおとぎ話をみずからの伝承に適合するように手なおしして取り入れた思考のあり方に、同一化の論理を超えた、「到来すべき他者の場所をあらかじめ用意する」という倫理の形を見いだそうとしている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今度Jóiaさんのボサノヴァのコンサートをやるので、その予習として、ボサノヴァといえばブラジル、ブラジルといえばレヴィ=ストロースということで、『闘うレヴィ=ストロース』を読んでおいた。
流石にレヴィ=ストロースの著書を読むのにはパワーが足りなさそうなので、伝記的な本書を選んだが、こちらも読み応えは十分であった。
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レヴィ=ストロースの著作は読みたいけれど中々難しく、『やきもち焼きの土器つくり』のみ読んでいます。今後読む時の助けとなれば…と思い手に取った本書で人としてのレヴィ=ストロースを私の中に想起させてもらえたような気がします。
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戦後のフランス思想家のなかでは、とても安定した精神をもっている感じのレヴィ=ストロース。実際、100歳を超える人生を生きた思想家って、あんまりいないのではなかろうか?
レヴィ=ストロースの分析の対象としたブラジルの部族などは、歴史的な変化の少ない「冷たい社会」であったこともあり、スタティックであるという批判もしばしばなされた。
が、一方では、「野蛮というものがあると考えているほうが野蛮人だ」といった強い西欧への批判の眼差しも常にあって、なんか単純に「いい人」というわけでもない気はしていた。
というところで、「闘うレヴィ=ストロース」という魅力的なタイトルのこの本。
新しいのは、マルキストの理論家・活動的だった若かりし頃の姿。そして、ブラジルでの遍歴時代を通じて、その思想が出来上がってくるところがすごく面白い。
そして、大成しても、やっぱ熱い思いは持続しているし、資本主義、歴史、社会といったダイナミックな視点は常に底流として流れているんだな〜、と。 -
【書評】(読書人2010.01.22)。
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前半では、若い頃のレヴィ=ストロースの足取りを丹念に追い、後半では、南北アメリカの神話研究を具体的に結構なボリュームで紹介しているが、「野生の思考」を追っていくその丹念さについていく根気が今の自分にはなかった。第2章後半の音韻論と親族構造の関係についての説明は、今まで読んだ解説本よりよくわかったような気がする。
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レヴィ=ストロースのことが知りたくて本書を読み始めました。学生のころから名前は知っていても、著書には手を出せませんでした。中沢新一とか内田樹の本を読みながら、でもやっぱりちゃんと原典に当たろうと思って、講演会の記録を読んだり、いくらか図書館で借りて、斜め読みをしたりしました。そして、やっとの思いで「悲しき熱帯」を買い求め読み始めようとしているところです。レヴィ=ストロースの姿は歳をとってからの写真でしか見たことがなかったので、ブラジルなどの原住民の中に分け入る姿があまりイメージできなかったのですが、本書で初めて若いころの写真を見て納得がいきました。ひげを生やしてラフな格好で、どこにでも入り込んでいきそうな勢いでした。さて、本書を読んでレヴィ=ストロースの若いころの生い立ちなどはなんとなくイメージがつかめたのですが、結局研究の内容については、特に神話の話あたりは全く分からずじまいでした。私自身、読解力が弱く、少し難易度の高い文章になると字面を追うばかりで、内容が全く頭に入ってこないことが頻繁にあります。ただ、5回ほど同じ文章を読んでみて、何が書いてあるのか分からないのは(知らないことばが多々登場するということはあるにしても)その文章にも問題があるのではないか、そう思えたりもします。一文が長いというのは読みにくいと思いますが、とにかく主語と述語が遠かったり、主語があいまいだったりで、何のことを指しているのかが分からないということがしばしばでした。さあ、結局予備知識はあまりそろわないまま、レヴィ=ストロースに挑戦します。(「神話論理」などに比べれば「悲しき熱帯」なんてすごく易しい内容なんだろうとは思っているのですが、それでも不安です。)→結局読破できていません。
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レヴィ=ストロースの壮大な思想は、図式的な理解を拒むが、「闘う知識人」としての姿を追うことでこの難題に挑む。100年を超える生涯で、彼は何と闘ってきたのか。第一人者による最良の入門書。
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ブックオフ池袋、¥400.
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レヴィ=ストロースの仕事をとても分かり易く書いていて、面白い。