- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582855234
作品紹介・あらすじ
現代の言語学者も舌を巻くほどの精緻な「音の分析」によって、一五世紀の中頃、"ハングル=訓民正音"は創られた。圧倒的な漢字文化のまっただなか、合理的な仕組みと、美しさを兼ね備えた文字を、国王と若き学者たちは、どのように創ったのか?「音が文字になる」奇跡の瞬間を、ハングルの創生とともにたどる。
感想・レビュー・書評
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ドリトル先生が「物事を始めるときはその歴史をまず知るといい」と言っていたので、ハングルを始めるにあたり、その歴史から。
おもしろかった。
ハングルの元となった訓民正音。
途中は漢字といっしょに使われていたところまでは日本語と同じだけど、その後ハングルが正式に確立される。
学習の機会に恵まれた人たちだけでなく、国民全員が使えることばをと、世宗らによって編み出された。論理的で、音素まで表現できる画期的なエクリチュール。
ハングルの成り立ちを知って、学習にも身が入りそう。
「いのち」という詩が胸を打つ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【内容紹介】
シリーズ 平凡社新書 523
出版年月 2010/05
ISBN 9784582855234
Cコード・NDCコード 0287 NDC 829.11
判型・頁数 新書 376ページ
ハングルは15世紀に、驚くほど精緻な「音の分析」をもとに創られた文字。現代の言語学者も驚嘆するその〈緻密な仕組み〉とは? 圧倒的な漢字文化の只中で、文字革命はいかに行われたのか? ハングルは、15世紀に李氏朝鮮で創られた〈文字〉である。精緻な「音の分析」をもとに創られたこの文字は、現代の言語学者も驚嘆するほどの〈緻密な仕組み〉を備えている。これほどの文字を、第四代国王・世宗(セジョン)と、彼に仕えた若き秀才たちはどのように創ったのだろうか?
また、当時の朝鮮は、行政を執り行う際の文書も、歴史を記述するのも、風景や人情を詠む詩歌も、すべてに漢字が用いられてきた。しかも、隣り合う中国との外交などでの付き合いもある。日本以上に、圧倒的な漢字文化のまっただなかにあった当時の朝鮮で、文字革命はいかに行われたのか?
ハングルの仕組みを〈言語学的〉に、そしてその成り立ちを〈歴史〉から見ていくことで、〈奇跡の文字ハングル〉の合理性、秘められた可能性を探っていく。
[第22回アジア・太平洋賞大賞受賞]
韓国ハングル学会より[2012年度・周時 経(チュ・シギョン)学術賞受賞]
<http://www.heibonsha.co.jp/book/b163471.html>
【簡易目次】
序章 ハングルの素描
一 ハングルの仕組み
二 『訓民正音』という書物
第1章 ハングルと言語をめぐって
一 ハングルの名
二 朝鮮語=韓国語の世界
三 ことばと文字
四 朝鮮語=韓国語はいかなる言語か
第2章 〈正音〉誕生の磁場
一 文字を〈創る〉──漢字の磁場から
二 自己増殖装置としての漢字
三 〈訓読〉の仕掛け
四 朝鮮語の〈訓読〉──〈口訣〉の構造
五 〈質量を有するテクスト〉
六 西方からの道──〈子音文字ロード〉の終焉
第3章 〈正音〉の仕掛け
一 文字を〈創る〉──空気の揺らぎから〈音〉を切り出す
二 〈音〉から〈かたち〉へ
三 単音=音節文字システムの創出
四 四分法システムの衝撃
五 音の変容を〈かたち〉にする――形態音韻論への肉迫
第4章 〈正音〉エクリチュール革命──ハングルの誕生
一 〈正音〉革命派と漢字漢文原理主義との闘い
二 〈用音合字〉の思想──〈知〉の原子を問う
三 〈正音〉よ、生きとし生けるものの〈こゑ〉を聞け
四 〈正音〉よ、くにのことばを──エクリチュール革命宣言
第5章 〈正音〉エクリチュールの創出
一 〈正音〉よ、音を統べむ──『東国正韻』
二 〈正音〉よ、三千世界を照らせ──儒仏道のみち
三 〈正音〉よ、天地宇宙を学べ──『千字文』
四 〈正音〉よ、我らが調べを──『杜詩諺解』と時調
五 〈正音〉よ、語れ、奏でよ──〈正音〉文芸とパンソリ
六 朝鮮固有語の血脈と漢字漢文の血脈の二重螺旋構造
七 〈正音〉反革命を超えて
第6章 〈正音〉──ゲシュタルト(かたち)の変革
一 〈かたち〉とは何か
二 正音の形と〈かたち〉
三 身体性を得た正音の美〈宮体〉
第7章 〈正音〉から〈ハングル〉へ
一 闘う〈正音〉、たたかう〈ハングル〉
二 再びゲシュタルトを問う──近代から現代へ
終章 普遍への契機としての〈訓民正音〉
『訓民正音』を読むというできごと -
講演に備え、予習も兼ねて再読する。国や人と同じく本にも幸運な出会い、不幸な出会いがある。初めての海外に向かう機上で読んだケルアックの『路上』は生涯忘れ得ない一冊となった。韓国語に出会い、留学先の韓国で著者の講演を韓国語で聞けたのだから、この本との出会いは当然前者であろう。本の題名は『ハングルの誕生』であるが内容は韓国語についてだけではない。文字を創出する為には先ず言語とは何かを知る必要がある。ハングルの構造を概観しながら言語一般について改めて考えさせられた。韓国語が分らなくても充分に楽しめる筈。三読予定。
追記:自国文化の過度な礼賛は常に慎むべきであるが、本書がハードカバーの学術書としてではなく、一般教養の普及を目的とした新書版で出たことは、日本の出版文化の底力として、少し位は誇っても良いのではなかろうか。^^; -
▼福島大学附属図書館の貸出状況
https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90222137
朝鮮王朝世宗25年(1443),朝鮮語を表記するための文字「訓民正音」が創製されました。「訓民正音」は,その後「諺文,正音,反切,国文」など多くの別称が与えられています。そして,1913年頃から現在の名称「ハングル」が使用されるようになりました。ハングルはいつ,どこで,誰が,何のために創ったか,はっきりとわかる希な文字です。また,ハングルは科学的・合理的で,体系の整った文字だと言われています。本書には,ハングルの誕生過程および特徴だけでなく,日中朝の漢字文化についても多くの紹介があります。ハングルのこと,ひいて東アジアの漢字文化に興味のある人にとっては恰好の資料です。
(推薦者:経済経営学類 金 敬雄先生) -
15世紀の中頃に世宗によって創始されたハングルが、音を文字に表わすという試みをどのように実現したのかということを、言語学的および歴史的観点から論じている本です。
もうすこし気楽に読むことのできる内容だと思っていたのですが、「あとがき」には「ハングルについて言語学的な視座、〈知〉という視座から述べた書は、少なくとも新書ではなかった」と著者が語っており、その穴を埋めることを意図して書かれています。そのため、ことばづかいにやや衒学的なところが見られますが、ハングルの画期的な意義を新書を通じて幅広い読者に伝えようとする著者の熱意が伝わってくるような語り口で、韓国語についてほとんど知らないわたくしにも、おもしろく読むことができました。 -
世宗が作らせた「訓民正音」。朝鮮民族に独自の文字を持たせた画期的な書物。漢字の草書体や画の一部から作られた日本のかなやカタカナと違い、一から音声学的にも適合した文字として作られた文字、ハングルの誕生と各種の角度からの解説。
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大学生の時に読んで、韓国語に興味を持ったキッカケの本。「形/音/意味」が一致していない日本語って複雑だなとも同時に思った1冊。
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◆シンプルなのに、実は独創的な人工文字ハングル。その文字としての切れ味の鋭さに驚愕すること間違いなし◆
2010年刊行。
著者は元東京外国語大学大学院教授、元ソウル大学校韓国文化研究所特別研究員(朝鮮言語学・日韓対照言語学、音論・語彙論・文法論・言語存在論)。
先に読破した「漢字伝来」が日本語における漢字の受容・変容の過程と、日本での文字形成過程を明らかにした書なら、本書は、日本と同様に漢字受容圏である朝鮮半島における、
① 朝鮮文字の成立過程(=漢字放逐過程)
と
② その極北たるハングルの言語学的特徴とを解説したもの
と言える。
①の叙述量が少ないのは、李氏朝鮮の三代・世宗がハングルを一気呵成に作り上げた事情による。
一方、叙述の大半を占める②は、実に刺激的な論考である。詳細は本書を紐解いて欲しいが、① ハングルが漢字や漢文、漢字の借字表記法としての吏読とも口駃(?。日本語訓読に近い)とも違い、文字の創出である点。
② その文字の形態の最小基本単位が音の最小単位音素から来ている点。
③ 音素を文字形態にする基本法則が発音時の口蓋の形態を記号化した。
というあたりだ。
シンプルかつ独創的なこの方法がハングル作成者(法則を定めた人)のシャープさを物語っているとも言えそう。
そして本書に掛ける著者の熱意。詳細な文献案内と提示、充実の事項索引。新書とは思えぬ充実ぶりが著者の本気度を語って余りある。
音素(例えば「照る」と「蹴る」におけるtとk)・形態素など、力が入る故の詳しさが読者の敷居を高くしているきらいはあるが、それでもなお一読の価値は揺るがないだろう。
漢字を捨て去った朝鮮半島に対して、表意文字の漢字を残した日本語。漢字の読みを覚えるのが容易ではないが、一度覚えたら漢字という表意文字の持つメリット=視読速読が容易との比較をしてみるのも思考実験として面白いかもしれない。 -
平凡社新書『ハングルの誕生』著者 野間秀樹先生 講座のご案内 - 平凡社
http://www.heibonsha.co.jp/news/n23342.html
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ハングルは15世紀に、驚くほど精緻な「音の分析」をもとに創られた文字。現代の言語学者も驚嘆するその〈緻密な仕組み〉とは? 圧倒的な漢字文化の只中で、文字革命はいかに行われたのか? ハングルは、15世紀に李氏朝鮮で創られた〈文字〉である。精緻な「音の分析」をもとに創られたこの文字は、現代の言語学者も驚嘆するほどの〈緻密な仕組み〉を備えている。これほどの文字を、第四代国王・世宗(セジョン)と、彼に仕えた若き秀才たちはどのように創ったのだろうか?
また、当時の朝鮮は、行政を執り行う際の文書も、歴史を記述するのも、風景や人情を詠む詩歌も、すべてに漢字が用いられてきた。しかも、隣り合う中国との外交などでの付き合いもある。日本以上に、圧倒的な漢字文化のまっただなかにあった当時の朝鮮で、文字革命はいかに行われたのか?
ハングルの仕組みを〈言語学的〉に、そしてその成り立ちを〈歴史〉から見ていくことで、〈奇跡の文字ハングル〉の合理性、秘められた可能性を探っていく。
[第22回アジア・太平洋賞大賞受賞]
韓国ハングル学会より[2012年度・周時 経(チュ・シギョン)学術賞受賞]
http://www.heibonsha.co.jp/book/b163471.html -
図書館から借りて3週間と1日。ようやく読み終わった(既に返却期限が切れています(^^;)。
というかこの本、ちっとも面白くなかった!内容が言語学的すぎてわたしには意味が全く分からなかったのよ!
いや、言語学的なのかどうかは分からないんだけど、エクリチュールだの、ゲシュタルトだの、その他いろいろなわけ分からないヨーロッパ語(だと思われる)がたくさん出てきて、いや、そういう概念って日本語にないから、より定義を厳密にさせたいがために定義に厳密なヨーロッパ語とか使ってるんだろうけど、そういう言葉を初めて見るものにとっては、文章読んでても余計にわけが分からなくなるだけだと思う。
なので、やたらハングル文字の優秀さについて「こんなにすごいんだぞ!」って言いたいんだろうな~、その書きぶりからして、って思うんだが、実のところ、なにをそんなに感動してるのか、全然こっちには伝わらなかったのよ。。
なんかちょっと残念な本でした。
ただ、訓民正音という書については、いつか韓国に行ったときに、実物を見てみたいなあ~なんて思ってて、どこの博物館にあるか調べたんだが、なんと保存しているところ(澗松美術館というところらしいのだが)って毎年5月と10月しか公開してないんだと。。うーむ。今度韓国行くときはこのことに考慮しなくちゃ。