ジョルジョ・モランディ-人と芸術 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 49
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582855746

作品紹介・あらすじ

前衛芸術、ファシズム、二つの大戦、アンフォルメルの台頭…イタリアの一地方都市ボローニャを離れることなく、ひとり寡黙な生を貫くことで時代に抗う画家がいた。同じ場所で同じ対象を描き続ける頑固なまでの姿勢-一見慎ましやかなその生は、観る者を静かに激しく揺さぶる、親密で静謐な空気感を湛えた独自の作風へと結晶した。謎に包まれた「手仕事」の背景にあるものとは?二十世紀最大の具象画家の知られざる魅力に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 〝静寂〟〝静謐〟〝ストイック〟等々・・・モランディの作品を目にしたとき、誰もがこのような印象を持つのではないでしょか?また、ピカソやデュシャンと同時代に生きた画家が、イタリアの片田舎ボローニャで、瓶や壺を並べただけの、ごくありふれたモチーフをなぜ繰り返し描き続けたのか?という疑問も、誰もが抱くものではないでしょうか?
    その答えがこの本の中にありました。モランディという画家は、ずっと気になる存在でしたが、実のところ本書を読むまで、何もわかっていませんでした。一見したところ同じように見える絵でも、実は作品によって様々な工夫や試みがなされていたようです。過去を破壊し、生涯にわたって次々とスタイルを変化させていったピカソのような派手さも、また世間が喜びそうな芸術家らしいスキャンダルにも縁はありませんでしたが、僧院のような慎ましく静かなアトリエで、モランディは美術史に残る仕事を成し遂げていたのですネ。その証拠に、彼の仕事は現代美術にも多大な影響を与えたようです
    偶然ですが、ちょうど昨日から、兵庫県立美術館でモランディの展覧会が開催されています。あらためて、じっくり鑑賞してみたいと思います。


    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 資料ID:92111535
    請求記号:
    配置場所:新書コーナー

  • 須之内徹の「さらば気まぐれ美術館」でモランデイの話が出てくる。そこにモノクロだが「静物」(1941)のカットがある。
    以前から気になっていた作品だっので本書を読む。

  • 絵を観る時、最も退屈に感じるモティーフは何か?
    個人差はあるでしょうが、私の場合、長らくそれは静物画でした。
    なんで机の上のリンゴとか、水差しとかどこにでもあるようなツマラナイモノを描くのか?
    アート趣味に入ったきっかけが幻想絵画だったせいもあり、セザンヌの魅力に目覚めるまでは、特にそう思っていました。

    この本はそんな静物画だけを一生涯描き続けた画家、モランディを語る1冊です。
    今回、原発事故の影響から展覧会が中止になったので、ガッカリついでに、この画家の事、少し勉強してみようと手に取りました。
    平凡社新書の薄い本だったので、基本入門書と思ったのですが、中身は結構マニアックで、美術史的な立ち位置からモランディ絵画を解説すると、後半は温厚なモランディを怒らせた1冊の評論集について考察されます。

    「わたしは全生涯で、制作に必要な平穏と静寂以外、何も求めてこなかった」
    この言葉通り、故郷ボローニャから一生涯出ることもなく、独身を通し、アトリエは普通のアパートの1室で僧房と呼ばれ、生活は修道僧のごとし。
    モティーフにするのはセザンヌ以上に地味な古びたビンやら壺やら皿などです。
    こんな画家が怒って出版差し止め裁判まで起こしたのは何故?
    興味のある方は読んでみてください。
    私は結構オモシロかったです。

    他に個人的に参考になったことは、うすうす感じていたニコラ・ド・スタールとの共通性。
    でもベン・ニコルソンまでモランディへ傾倒していたとは知らなかった。
    指摘されれば納得ですが、驚いたのはモランディがカラバッジョを評価していたことで、一見これは正反対の画風ですよね。

    方や時間が喪失し、宇宙が永遠の静寂の中で眠りにつくようなイメージを喚起させる画家で、方やイタリアバロックの絶対王者。
    濃い影の中に雷光が瞬くと、浮かび上がるのは、ナイフが走り血しぶきが滴り苦悶と激情の表情が交差する劇的瞬間を描く画家です。
    全部正反対。
    でも評価される前からモランディはカラバッジョオタクだったこの不思議。

    ただこれなんとなく分かるんですよね。
    一見、まったく違うものであったとしても、一人の人間の美意識って、深い底の部分で繋がる根っこがきっとあるです。
    モランディとカラバッジョはそれがあった。
    一人は酒飲みの喧嘩屋で殺人まで犯した画家で、一人は僧侶さながらの静寂だけを求めた人だったけど、響き合う根はあったんです。

    以前、綾波レイへの記事でグールドと夏目漱石を薦めたら、グールドが漱石の草枕のオタクだったと知った時の驚きを思いだしました。

  • なぜこの本を読もうと思ったのか、そのきっかけは忘れてしまったが、読後感はとてもよく、出会えて良かった一冊となった。

    しかし、その存在すらまったく知らなかった、モランディという画家の伝記(モノグラフ)を、こんなに興味深く読めるとは正直思っていなかった。

    何より、このモランディという人物の画家としての姿勢に、自分が悩んでいる色々なことに対しての糸口を見いだすことができたのが大きな収穫。

    まったくもってレビューになっていないがご勘弁を。

  • 普通の暮らしの繰り返しの中にも美しさはあるということを、同じような絵を(そして全く違う絵を)描きつづけることによって教えてくれる画家がいて、そのことについて考える本。
    この画家については須賀敦子さん関連からつながってきて辿り着いた。
    展覧会が延期になったのは残念だけど、もう少し待とう。と思う。

  • とても面白い本だった。モランディについてはあまり詳しく知らなかったので勉強になった。日本語のモランディ関連文献がほとんどない中新書でさっとモランディのことを知ることができるのはありがたい。しかし、新書という形態だが議論はなかなか本格的。モランディが過去の画家たちの影響をどのように受容・変容したか、同時代の作家に対してどのような距離を保ったか、など興味深い議論が展開されている。さらに、同じ著者の『半透明の美学』にも出てきた「埃の美学」はこの本でもモランディに即して熱心に論じれていて面白かった。

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著者プロフィール

1954年生まれ。京都大学大学院博士課程修了。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専門は西洋美術史・思想史。著書に『もうひとつのルネサンス』(1994)、『ルネサンスの美人論』(1997)、『モランディとその時代』(以上、人文書院、2003/吉田秀和賞)、『ミメーシスを超えて』(勁草書房、2000)、『マグダラのマリア』(中公新書、2005)、『芸術(アルス)と生政治(ビオス)』(2006)、『フロイトのイタリア』(以上、平凡社、2008/読売文学賞)、『半透明の美学』(2010)『映画は絵画のように』(以上、岩波書店、2016)、『映画とキリスト』(みすず書房、2017)など。編著に『カラヴァッジョ鑑』(人文書院、2001)、『ジョルジョ・モランディの手紙』(みすず書房、2011)など。訳書に、ロンギ『芸術論叢』(全2巻、監訳、中央公論美術出版、1998/1999)、アガンベン『中味のない人間』(共訳、人文書院、2002)『スタンツェ』(ありな書房、2008)『イタリア的カテゴリー』(共訳、みすず書房、2010)『開かれ』(共訳、平凡社/平凡社ライブラリー、2011)など。

「2017年 『映画とキリスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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