- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582855876
作品紹介・あらすじ
ガリレオは恩知らずで、ニュートンは二十代で余生を迎えた!?フランス革命の断頭台に倒れたラボアジエ、不遇の天才ラマルクに比べ、ダーウィンは凡庸だった-。宇宙の仕組み、生物の謎、数学の論理に果敢に挑んだ天才たちの「知られざる素顔」に迫りながら、その偉大な業績のツボを、わかりやすく解説する。人柄までが生き生きと甦る天才たちの「意外な」科学史。
感想・レビュー・書評
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取り敢えずダーウィンを盲信せぬ端緒は与え得る書
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新書文庫
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1933年生まれの著者による、有名科学者のエピソードも紹介する一般向けの科学史。
【気になった箇所】
・五章。ダーウィンをDisりラマルクを上げる著者の見解が問題に思える。門外漢の私には学説の部分は自信をもって判断できないが、意見を(本書のように)我田引水気味にさしこむことには納得できない。
・学生の質とゆとり……この教育談義ははっきりと根拠が弱い。
【目次】
第1章 天体運行の謎を解いたケプラーの生涯――三十年戦争を生き抜いた不屈の意志
第2章 物体運動の秘密を明らかにしたガリレオの素顔――名声と富を求めつづけた生涯
第3章 万有引力の発見者、ニュートンの虚像と実像――歴史的発見を二十年間も公表しない不思議
第4章 断頭台に消えた、近代化学の創始者ラボアジエ-文豪の戯曲に取り上げられた悲劇
第5章 巨人ラマルクと凡庸なダーウィン――「進化論」確立の裏面史
第6章 遺伝の法則の発見者、メンデルの孤高の生涯死――後、二十数年たって再発見された偉大な法則
第7章 ナポレオン三世をめぐる科学者たち――科学者の活動を擁護した君主と、科学の発展 -
1.ケプラー:
チコ・ブラーエとの師弟関係は興味深い.ブラーエの火星観測のデータを頂いて,...,ブラーエを毒殺??
2.ガリレオ:
ケプラーに不義理だと.
3.ニュートン:
後半の人生はあまりパッとしなかったと.ブラーエと同じで錬金術にはまっていた.
4.ラボアジエ:
化学者だが,税金集めの役人だったため,ギロチン台に.※しかし,物理よりも化学のほうが,ずっとbreakthroughは遅かったんだね,
5.ダーウィン:
著者・杉晴夫氏は,ダーウィンにはぼろくそですな.ラマルクはよく褒めていらっしゃる→当時の頑迷なキリスト教社会のなかで,「種は進化する」と勇気をもって初めて述べた人,しかし❝形質が遺伝する❞という❝用不用説❞を唱えたばかりに,おばか扱いを受けている
6.メンデル:
(この本に出てくる)ほかの方々も天才だろうが,この人は,→よくこんなことを思いついたよね.両親からの遺伝子に優性/劣性があり,という.あと,エンドウの実験で7つの形質がそれぞれ違う染色体に乗っていたというのが幸運だったですか. でも❝運も実力❞
7.ナポレオン三世をめぐる科学者たち:
まずナポレオン三世その人を褒めている=dictatorで,ほんとに科学を大事にしたひとは,この人以外にいないと.
#フーコー;地球の自転を証明.north or south poleに振り子を置けば,そうなるだろうなと理解できるが,そこ以外のところに置いた振り子がどういう動きをするのか? いくら考えてもわからなかった.humble backgroundのため苦労をしたと.
コリオリの力;これもよく解らぬ!
パストゥール;無生物から生物は発生しないことをへんな形のフラスコを使って証明.あと❝醸造学❞にも貢献.あとあと,狂犬病のワクチンを作った人だと.
※ケプラー,ブラーエ,ガリレオ,ニュートンのつながりが面白かった.みな,それぞれ人間くさくて 聖人君子ではなかったんだね. -
資料ID:92113602
請求記号:
配置場所:新書コーナー -
本書は、科学史の巨人達の姿を多くのエピソードとともに明らかにしたものである。ケプラー・ガリレオ・ニュートン・ラボアジエ・ラマルク・ダーウィン・メンデル・ナポレオン三世の紹介された実像は、一般に知られている姿とはだいぶ違っている。
本書によると、これらの科学史の巨人達は、みな「変人」だったようだ。まあ、これらの人々は、「人柄の良さ」で歴史に残っているわけではないし、最近の有名な科学技術の開発者にもだいぶ変わっている人もいることだから、そのようなとんがった変人でなければ、科学上の偉大な発見などはできないものだとも思えた。
ただ、本書はそのような「天才達の虚像と実像」を紹介しているが、読んでみてちょっと物足りない。もっと、これらの天才達の成果が社会に及ぼした考察や科学史上の位置などの考察を読みたいとも思った。
著者は、あとがきで「数年前から、講義を受ける学生の質が急に変化した。…無感動・無関心な態度を示すのである」と記し、その原因として「ゆとり教育の後遺症、理科教育の教科内容、教師の質、現代人の科学離れ」等を指摘しているが、科学を知的に楽しむように教育・紹介できない学者・教育者のほうに問題があるではないだろうかとも思った。
本書を読んでも、あまりワクワクするような思いはもてないし、知的興奮も感じられない。過去の巨人達のエピソードには、それなりの関心を持つものだが、もっと知的興奮を覚えるような切り口はなかったものかと感じた。本書は残念な本であると思った。 -
天才科学者として、ケプラー、ガリレオ、ニュートン、ラボアジエ、ダーウィン、メンデル、フーコー、パストゥール、コッホと関連人物を取り上げ、それぞれの業績や生涯を紹介している。
ケプラーが3つの法則を発見する背景には、ティコ・ブラーエが蓄積した観測データがあったこと、ガリレオの最大の業績は落体運動の法則の発見であり、天動説の主張や木星の衛星の発見などはとるに足らないものであること、ニュートンは20代前半で万有引力を発見したが、ケプラーとガリレオの成果を統一的に説明したに過ぎず、自ら実験した光学の研究では成果をあげられなかったこと、メンデルは統計的に処理する能力に優れており、死亡時は気象学者として評価されていたことなどに驚かされる。
進化論については、ダーウィンの業績を「誰でも思いつくこと」で「欠陥だらけ」などと一蹴する一方で、先人のラマルクを巨人として称賛・擁護しており、そういった見方もあるのかと思わせる記述になっている。
ラマルクが晩年(19世紀初め)に出版した「人間の実証的知識の分析」の中で「人類は(中略)先見の明のない利己主義に陥り、自らの種を絶滅させることに精を出している。土壌を保護していた植物を伐採し、そこに住んでいた動物を追いだし、地球の大部分を不毛の地にしてしまった」と述べている部分は、氏の視野の広さを感じさせる。
周辺の人物を含めても20人くらいしか登場しないので、ポイントをつないだ大きな流れはつかめるが、科学史というには無理がある。中心人物の職歴や周囲の人物との論争や支援者との関係、当時の社会情勢などは詳しく迫っているので、その点が読み応えがあった。 -
たしかに、芸術家はその私生活が話題になるが、科学者はなりにくい。本書はその人間性、人間関係に焦点を当てているところはおもしろいと思う。
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【自分のための読書メモ】
この本を手に取った理由は至極明快。著者の名はまだお聞きしたことがなかったけれど、帯をみて、藤原正彦の数学者についてのエッセーの科学バージョンを期待したから。
2009年は、ダーウィン生誕200年だったように記憶してるけれど、ダーウィンに関する著作も多く出たし、新聞の書評にもダーウィン関係の本は多く紹介されていたように思う。(一番印象に残っているのは、やはり大好き冨山太佳夫先生の毎日新聞の書評でした。)文系にとっては、ダーウィンの思想やそれを応用した社会ダーウィニズムの考え方は、やはり押さえておきたいところ。
けれどこの本によると、なんとダーウィンさんは実験系の生物学者には、ウケが悪いととのこと。作者曰く「凡庸なダーウィン」が神格化されていく背景や、神格化を必要とした社会状況が指摘されていたりしたこと。また、理論としては穴があり厳密性を欠いているがゆえに、今も影響を持ち続けているカラクリが指摘してある、5章がぼく的には一番おもしろかった。 -
人は誰しも、噂話が好きなものである。その実像と虚像にギャップがあるほど、噂話にはさまざまな尾ひれがつき、伝達も加速する。本書はそんなゴシップ好きにはたまらない噂話も盛りだくさん。しかも対象は、科学界に燦然とそびえ立つ偉人たち。恩知らずなガリレオ、あまりにも余生の長いニュートン、凡庸なダーウィン・・・現代科学の根底をなす発見をなしとげた巨人たちの赤裸々な人間像が、その功績とともに描かれている。
◆本書の目次
第一章:天体運行の謎を解いたケプラーの生涯
第二章:物体運動の秘密を明らかにしたガリレオの素顔
第三章:万有引力の発見者、ニュートンの虚像と実像
第四章:断頭台に消えた、近代科学の創始者ラボアジエ
第五章:巨人ラマルクと凡庸なダーウィン
第六章:遺伝の法則の発見者、メンデルの孤高の生涯
第七章:ナポレオン三世をめぐる科学者たち
天才は天才を知ると言われるが、それゆえに天才同士の接点にはさまざまな感情がうごめく。例えば、ニュートンとフックの光学論争。光は粒子か波かという論争をめぐり、ニュートンはフックから計算ミスを指摘され、実験物理学者としての凡庸さを露呈してしまう。やがて王立協会の会長になったニュートンは、腹いせにフックの痕跡をことごとく消し去ってしまったという。ニュートンは晩年にもライプニッツと微分積分法の先取権争いをめぐって、残忍な行為を行っている。
そして、本書の白眉は第五章の進化論をめぐる偉人同士の交錯にある。多くの科学文献で偉業とされるダーウィンの進化論であるが、彼もまたラマルクという巨人の肩の上に乗って先を見通すことができたに過ぎないという。高校の教科者などではダーウィンの前座扱いに過ぎないラマルクの『動物哲学』という書籍で、進化論の原型はほぼ発表されている。なかでもダーウィンの進化論より優れていると思われるのは、「生体が環境を感覚神経によって感知し、その結果生体の構造がより環境に適したものに変化する」という<生体内の力>に着目したポイントである。ダーウィンの自然淘汰より、ロマンあふれる考え方と言えるだろう。ラマルクの悲劇は、世渡りが下手であったということである。その一方でダーウィンの進化論は、その不完全さゆえに論争のタネとなり、世間一般に知られ渡ることとなった。運命とは皮肉なものである。
一番最初になされた発見や、一番優れた発見が必ずしも歴史に名を残すとは限らない。現在のベンチャー企業のスタートアップにも見られるような光景は、実に五百年以上も前から連なっていることなのである。偉人たちの業績を理解するとともに、人間味あふれる一面を垣間見ることのできる一冊。