柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582856156

作品紹介・あらすじ

古来、日本列島をたびたび襲う地震災害に心を痛め、困窮する民を救うべく「経世済民」の思想をもって民俗学を立ち上げた柳田国男。一方、柳田から「破門された」と語る今和次郎も、関東大震災を機に考現学を創始していた-。二人の足跡から、知られざる民俗学の淵源をたどる。地震から津波、大火、飢饉まで…。災害から生まれた思想は、どう受け継がれてきたか。

感想・レビュー・書評

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  • 柳田国男と今和次郎 (平凡社新書)

  • 『民俗学は単なる社会学にとどまらず人に寄り添う学問である』という宗旨がよく理解できた。

    単なる暴君(笑)としてしか認識していなかった柳田国男の心性の認識を改めなくてはいけないな。

    あの地震から一年、僕らは何を出来るのだろうか?深く考えさせられる。

    (宮本常一なんかも人に寄り添ったけれど、折口はどうなのだろうな?真性書斎の人のイメージだからなぁ…)

  • 柳田国男は「大きな災害によって家族を奪われ、そして家を失うということは、人が生きていくうえで最も堪えがたいことだ」と考えていた…と。もう少し柳田本を読んでみよう。

  • <閲覧スタッフより>
    古来より日本中を襲ってきた地震をはじめとする災害。そうした災害に対して「経世済民」の思想で“民俗学”を創始した柳田国男と、関東大震災以降、柳田の志を受け継いで“考現学”を立ち上げた今和次郎。時代と暮らしを見つめてきた二人の足跡から災害を考えます。

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    所在記号:新書||380.1||ヤナ
    資料番号:10212068
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  • 並行しときには交わる二人の業績を丹念に追いかけていく。

    『柳田国男と今和次郎は、民俗学においてこの「非日常時」に交わっていたはずだ。天災や人災によって家を失ってしまうこと、故郷を離れてしまわざるを得ないこと…。近代日本のなかで生まれた民俗学にとって最大の関心事であったはずの難問を、二人は生涯手放すことなく取り組み続けたのである」という結びの言葉にはいろいろと考えさせられるものがあった。

    それは宮本常一の『離島でも山村でも人間を育てなかったところは、もう僕がいってもとりかえしのつかないところまで事態が進行している。おそらくボクは死ぬまでこの問題に胸を痛めて歩かにゃならん』という言葉を思いおこさせた。

    それに比べて、今の学問のなんとひ弱なこと。。。

  • あまり真面目に読まず、さっと目を通してしまった。遠野物語に、海辺に移住した人がいて、その妻が津波で死んでしまったが、その妻が昔の恋人と一緒にいる幽霊?を見て、寝込んでしまった、という話があるらしい。で、その子孫もまだその海辺に住んでいたのだが、3,11でその老夫婦も流されてしまった、とあとがきにあって、それが妙にリアリティがあって印象的だった。柳田は、今を、「良い目をもっている」と評し一緒に民家を調査する旅に誘った。でもそのスケッチを、「上手なんだけど、人のいる感じがしない。留守みたいだ」と言ったらしい。まあ、確かに淡々とした感じはあるけどな。柳田は、確かに入れ物とか物よりも、そこに現れる人の生活というものに重きを置いた人なんだと思う。もともと、人が飢饉とかで苦しむのをどうにかしたいと、農政に力を入れた人だし。

  • サブタイトルにあるように、フィールドワークでの津波被害の伝承や関東大震災にも接してきた柳田国男と今和次郎が、災害とどう向き合ったかを取り上げている。
    視点は面白いが、二人の仕事の概略を辿ることに紙幅を取り過ぎて掘り下げ不足は否めないのが残念。

  •  職場の本屋の平積みから、なんのきなしに購入。

     柳田国男も今和次郎も名前だけでよく知らなかった。自分の不勉強を恥じる。

     おもしろい発見。

    (1)南方熊楠が、1906年の勅令による神社合祀政策に強く反対。(p109)

     村の鎮守様を強引にまとめるのはひどいが、集落を強引にまとめようとするのはもっとひどい。こういう効率性重視の発想は常に役人側にあるんだなと思って、納得もし、おどろいた。

    (2)柳田は今のベストセラー『日本の民家』に対して、そこに住む人の気配が感じられないと批判した。(p161)

     日本の民家がどんどんなくなっていくのをどう保存するか、アタマがいたい。兵庫県にいたときには県営公園にだいぶ移築したのだが、公園への移築事業とかたちあげたらどうだろう。地域のコニュニティの核にもなっていいように思う。

    (3)宮本常一:昭和8年の津波のあと、もっとも多かったのは斜面地への分散移住である。(p85)

     背景はよくわからないが、大きく斜面をけずらずに、地形を活かして、分散的に移住することはすばらしいと思う。自然の住民の知恵だなと思う。それを制度がゆがめないようにしないと。

     これは続けて勉強したい分野だが、民俗学に走るか、建築にウェイトをおいて考現学に走るか、悩ましいな。まず、考現学からいこう。

  • 今和次郎展の予習として読んだ。
    今和次郎の生きた時代とできごと(震災を含む)、関わりのあった人々について知ることができた。

    【無断転載を禁じます】

  • 経世済民について勉強したかったのだが、詳しくは掲載されておらずのため、読了。

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著者プロフィール

大阪府大阪市生まれ。民俗学者。著書に『災害と妖怪』(亜紀書房)、『蚕』(晶文社)、『天災と日本人』(ちくま新書)、『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)、『死者の民主主義』(トランスビュー)、『五輪と万博』(春秋社)などがある。

「2023年 『『忘れられた日本人』をひらく 宮本常一と「世間」のデモクラシー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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