「中国模式」の衝撃―チャイニーズ・スタンダードを読み解く (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582856248

作品紹介・あらすじ

「中国模式」-その意味するところは、中国独自の発展モデル、発展基準、発展方式。中国ではいま、この言葉が流行し、政治指導者も発言のなかで頻繁に用いている。アメリカを急追するアジアの覇権国家の内実を知るには、この「中国模式」について知る必要がある。生活、ビジネス、経済、政治、外交に関して、中国模式-その等身大の姿を伝える。

感想・レビュー・書評

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  • 興味深かった。中国の行動論理が良く分かる。中国は日中関係の向こうにアメリカを見ている。これは、本当に日本の政治家に力が無さすぎる。任期も短い。やはりそれも構造の問題だ。

    ・30年以上中国問題に携わってきた日本政府高官に対中交渉の極意を尋ねると「中国はパチンコだよ。私はいつも、パチンコ台の前に座っている感覚で中国と対峙してきた」と述べた。
    パチンコ屋に入って、まず大事なのは、玉の出そうな台を見極めることだ。そして台を決めたら一定の資金を投入して打ち始める。最初はある程度入らなくても、ジッと我慢していると、ある時、中央のチューリップが、パッと開く。その瞬間に一発でも多く、チューリップめがけて玉を打ち続ける。「相手の門が開いた瞬間に打ち込めるだけ打ち込む。なぜなら門はすぐに閉まるから」というところがミソだ。
    中国はトップダウンだ。トップの心さえ掴めば、五合目までは征服したに等しい。何故山頂では無いのかというと、トップの気移りが激しい事と、下がスムーズにトップの意向を遂行するとは限らないからだ。だからトップの了解を取ったら、電光石火で契約書を作り、トップにサインしてもらうことが肝要だ。そして契約書を翳して部下たちを焚きつけて一刻も早く遂行してもらう。

    ・江沢民→曽慶紅→習近平・薄煕来
     胡耀邦→胡錦濤→李克強・胡春華
    毛沢東はソ連からの援助をバックに政治基盤を確立させた。第二世代の鄧小平は香港、広東省。第三世代の江沢民は古巣の上海に浦東地区というもう一つの上海を作り、証券取引所をオープンさせ、世界の金融機関を誘致した。第四世代の胡錦濤は北京・天津から東北振興、内モンゴルの石炭。
    第五世代の習近平は台湾を挟んだ福建省がバックボーン。北京・上海・天津に続く第四の直轄地重慶のトップだった薄煕来と長年の盟友だったが、薄煕来は失脚した。
    胡錦濤は2006年江沢民を中心とする上海閥で「江沢民の忠犬」と言われた陳良宇を汚職疑惑で葬った。その代わり、空席になった上海市のトップに習近平が据えられ、出世競争で李国強に習近平が競り勝った。

    ・QE2でFRBが6000億ドルの米国債券を米国内の銀行から買い取るということは、世界最大の米国債保有国である中国にとってみれば、米国債の価格下落による大幅な損失の他に、アメリカからのホットマネー流入で国内にハイパーインフレを引き起こす懸念すらあった。

    ・ASEAN問題の専門家、李文研究員曰く「中国を取り巻く東アジア諸国に米軍が駐留し、軍事的に中国包囲網が敷かれたとしても、それは致し方ないと思っている。何せアメリカの軍事費(6980億ドル)は、その下の第二位から第十五位までの『軍事大国』の軍事費の総和より多額なのだ。…だから中国は、軍事力ではなく、周辺諸国・地域に『経済包囲網』を敷いて対抗する。…この先、東アジア諸国で戦争が勃発しない限り、軍事的プレゼンスよりも経済的プレゼンスの方が勝るはずだ。」

    ・「アメリカはわが国の『新旧二つの生命線』を断とうと目論んでいる。一つは南シナ海の延長線上にあるマラッカ海峡で、このわずか幅2.4kmの海域をわが国に輸入される原油の8割が通っている。アメリカ軍のオーストラリア駐留は、このマラッカ海峡を威圧しようという狙いだ。わが国のもう一つの生命線が、新たなミャンマーラインだ。リスクのあるマラッカ海峡を通らずに中東からの原油を運べるよう、わが国は2013年に、ミャンマーから直接、雲南省へ原油と天然ガスのパイプラインを通すべく、工事を開始している。今回のクリントン国務長官のミャンマー訪問は、これに楔を打ち込もうという意図なのだ。」

    ・中国マクロ経済学会の王建事務局長。
    「アメリカは製造業を放棄し、新たな資本主義の形態、すなわち金融商品依存型の社会を築いた。それで大量の国債を発行し、それを世界に買わせる事で生命を維持している。つまり国債発行を拡大していかなければ生き残れないので、今後も国債を増発しまくる。
    こうした方針のアメリカは2010年来、ドルの存在を脅かしつつあるユーロを叩いてきた。ユーロ危機を誘発し、ギリシャやイタリア経済に打撃を与えたのだ。その矛先は次に、中国に向かうはずだ。中国はまず、輸出産業が被害を被る。欧米向け輸出が減り、元高ドル安が加速し、それが景気減速の要因となるだろう。さらにインフレ圧力も強まる。
    ドルの死はアメリカの死を意味する。だからアメリカはあらゆる金融政策を使ってドル防衛を図る。それでもダメなら戦争を起こすだろう。中国は一刻も早く体制改革を進め、このアメリカ発の危機に備えねばならない。」



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】

  • 時々記事を読んでいた近藤大介氏著。
    様々な角度から今(というか数年前)の中国を読み砕いている。自分自身が現在北京に居る事、実際に中国人から見聞きする話とリンクする事が多いので非常に興味深く読ませてもらった。中国生活におけるTipsを以下に抜粋。

    *使う人は疑うなかれ、疑う人は使うなかれ
    *日中プロジェクトが成功しないわけ:
    中国側>まずトップ同士で話し合ってから
    日本側>まず現場である程度固めないとトップを中国に呼べない そうこうするうちに両者が興味を無くす(無くしたと思う)
    *中国で成功している日系企業パターン:
    >語学・事情に精通した中国側を向いた日本人
    >日本本社に話をつけられる日本側を向いた日本人
    >綿密な報告書・企画書を作成できる机を向いた日本人
    の3人が居るパターン
    *中国がIMF攻略に乗り出すに当たって:
    主席、首相、総裁等々、外交する先々で声高に同じ事を主張したり、論文で発表したりする。「皆が同じ事を述べる事」は国家の意思が明確に伝わり、意外と効果を出す。

    最終章のアメリカとの攻防は非常にエキサイティングに書かれている。アメリカはアメリカで結構身勝手な所があり、中国側のロジックも分からなくはないが、自国の利益を一番に据える国々が力を持つ事は非常にあぶなっかしいと思わざるをえない。

    以上、面白かった。

  • 【選書者コメント】中国人が読んで笑う中国の現実。スローガンだらけの本より百倍価値が高い。

  • 中国は、底なし沼のように、足元は不安定で、
    掬われるところがある。
    杜撰の上に、杜撰を積み重ねている。
    そのために、住宅は ホーンテッドマンションとなる。
    天井に照明は、突然落ちてくる。
    なぜか、部屋が水浸しになる。
    電気製品は、突然、火を吹いて壊れる。
    まさに、ワンダーランドである。

    一方で、そのような杜撰な、マンションでも、不動産として、
    値あがっていく。
    そのうえ、街は、工事現場ばかりで、交通渋滞。
    動くにも動けないのだ。
    そういう中で、日本人駐在員は、まさにノイローゼとなるしかない。
    中国人のカネの執着は、周囲への不信の裏返しなのだ。
    通訳は、 〈日本語〉がわかるということでなく、
    自分のいうことを聞く人材が欲しいのだが、そういう人はいない。
    一人、一人が、龍となっている。

    アリババグループ馬雲董事長はいう。
    就業規則は、『嫌なら辞めろ、いるなら従え』

    中国で成功するには、トロイカ方式がいる。
    日本本社に顔が利く人
    中国事情に通じている人
    企画立案と報告書ができる人。

    習近平は、団派と太子党のバランスで、生まれたが。

    アメリカと中国との覇権争い。
    IMFを、めぐる攻防が、中国の戦略的な所以ですね。
    日本は、ここまで考えていないことを痛感。

  • 日本人の感覚から中国をみるときに
    生活の話をする人は多い。
    この人の生活の話の場合は
    特に、各種騒動の「その後」や「背景」の分析が面白い。
    私が中国にいた時は
    ホテル暮らしの域を出なかったが
    実際に住んでみるのはまた違うんだろうな。

    この本のように社会階級のつくられ方まで、
    日本人視点を貫いて突っ込んでいるものは
    あまり無いように思う。
    中国の新聞を久しぶりに読みたくなった。

    しかし、この人の日中問わず凄すぎる人脈は
    一体どうつくられたのか・・・
    そちらのほうに興味がある

  • 中国外交とはすなわち対米外交である。あらゆる二国間外交や多国間外交は、対米外交に通じる。アメリカにどう挑むかが、今世紀のい中国外交の最大の課題である。

  •  著者は、講談社の中国子会社の経営をしている方で、最初の方は、中国のさまざまなでたらめな交通ルール、生活習慣、雇用況などが、軽いタッチで描かれている。

     後半はうってかわって、中国とアメリカとのせめぎ合い、圧倒的に軍事的には米国が世界一だが、中国のプレステージが特に経済で高まってきており、人民元のレート、米国への中国投資の抑制、WTOの中国の位置づけの対立など、最近の中国の攻勢を記述している。

     TPPについても、米国側につくかどうかという観点から、冷静な判断が必要。

     米中との間合いの取り方が、日本の政治、経済の面からも微妙なさじ加減が大事。少しずつ、中国にシフトしつつ、米国の怒りも買わないという微妙で継続的かつ戦略的姿勢が重要。

     今の政権でできるか。

  • 中国という国を知りたければこの本を読まずして語れない。Vital Japanで知り合った50代の男性からこの本を薦められたのが今年の2月。以来気になっていたがようやく読了できた。

    中国人に聞けば誰でも知っている言葉「中国模式」。世界のいかなる国がこのChinese Standardを踏襲することはできないだろう。人口13億人、民族数56を超えるこの国を統率していくには、ウルトラ級のリーダーシップがないと国は発展しない。

    この本でも書いていたが、中国の政治を動かしているのはトップ9人。その第1位にいるのが胡主席そして温首相は第3位、さらに第6位には習近平(次の国家主席といわれている人)などの合議制で全てが決まる。だから意思決定がものすごく早く、やると決めたら後は猪突猛進だ。日本では遅遅として進まぬ決断も中国では即断。また中国は短期的には5カ年計画にそって政治が進められ、中長期的には10年、20年先のあるべき姿をきちんと示している。対する日本は、もはや言うまでも無い。

    また最近重慶の市長薄氏の解任劇もこの本を読めば歴史が分かる。この薄氏(太子党、次期トップ9に入るのが確実視されていた)も実は重慶模式といわれている方法で、打黒(暴力団排除)をはじめ9つの主要政策を実行していった。このやり方が毛沢東時代の文革にかなり近いやり方であったために、温首相が非常な懸念を表明し薄氏を失脚させた。

    中国はなぜか古から権力闘争に明け暮れており、胡主席以後の次期国家主席内定までも影で権力闘争が行われていた。なぜこれほどまでに権力闘争がはびこっている国家が経済成長できるのか本当にわからない。ただ一ついえるのはこの権力闘争に勝利した者は間違いなくエリート中のエリートである。

    さて日本はこの国と共存していくべきなのか、それとも脅威ととらえ遠ざけていくべきなのか?ここからは僕の意見になるが、適度に距離を置きつつ共存していくべきであると思う。アメリカと中国はこれから先、幾度と無くぶつかり合いが続くであろう。70年代の米ソ並みの冷戦がこれから起きるのではないか。そんな中で米国寄りで、中国の経済成長を取り込んで国を発展させていく以外に日本の未来は無いのではないか。ただ中国は強行的なところが多いので、アメリカとしっかりタッグを組み主張すべきところはしっかり主張していく、

    また中国は急激な経済発展をしているが、庶民の人間としての人格が出来上がっていない。国民の人格の高さは今後経済発展していく上で非常に重要なものとなるであろう。確かに中国人は勤勉かもしれないが、不正を悪いと思っていない。お金儲けのためには手段を選ばない。これでは国家は成り立たないと思う。

    今までは日本を真似て、日本を反面教師としながら中国は成長してきた。今度は中国を真似る部分は真似て国をよくしていく必要があるのではないか。

  • これはお薦め。でも2012年前半に読まないと鮮度が落ちてしまうかも。
    中国と米国の対峙について時系列で事実を示されると、なるほどと思ってしまいます。

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著者プロフィール

1965年生まれ。埼玉県出身。東京大学卒業。国際情報学修士。講談社入社後、中国、朝鮮半島を中心とする東アジア取材をライフワークとする。講談社(北京)文化有限公司副社長を経て、現在、『週刊現代』編集次長(特別編集委員)。Webメディア『現代ビジネス』コラムニスト。『現代ビジネス』に連載中の「北京のランダム・ウォーカー」は日本で最も読まれる中国関連ニュースとして知られる。2008年より明治大学講師(東アジア論)も兼任。2019年に『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)で岡倉天心記念賞を受賞。他に『アジア燃ゆ』(MdN新書)『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』(以上、講談社現代新書)など著書多数。

「2023年 『日本人が知らない!中国・ロシアの秘めた野望』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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