テレビは原発事故をどう伝えたのか (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582856316

作品紹介・あらすじ

人びとは固唾を呑んで、福島原発事故のテレビに見入っていた。そこで、テレビは「原子炉は安全だ」「放射能が漏れても直ちに健康被害はない」と、政府と東電の主張を繰り返した。その結果、ネットなどで、「大本営発表」との批判が噴出した。その批判が妥当なのか、ここで番組の丁寧な検証を行いたい。"3.11後のよりよい社会"を構築するためにも。テレビは誰の目線に立って報道したのか?メディア・スタディーズの専門家が答えを出す。

感想・レビュー・書評

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  • 原発事故の最初の7日間のテレビ報道について。いろんな論点があったが、一番驚いたのは、専門家の楽観視した解説。テレビだと聞き流してしまうが、文字でみると、矛盾や破綻が見える。専門家としては、あり得ない!の思いが混乱をさせていたのでしょう。少し気持ちもわかるけど。

  • 大本営発表に終始したマスメディア、より自在な発信と共有が行われていたネットメディア。

    ネットをきちんと使いこなしていかないと、生命も財産も守れないということですね。

  • 原発事故の報道についての実態を知ることができた。

  • 3月11日の地震発生から
    一週間の原発報道について
    たんねんにたどっています。

    健康に影響がない、
    という政府の発表をそのまま伝えるだけのテレビ報道と
    ネットでの草の根の報告をかんがえると、
    とちらが本当なのかよくわかります。

  • 既得権に胡坐をかき顧客をないがしろにする業界は、やがて滅びる。
    今、これに一番近い業界がマスメディアであると思う。
    福島原発事故後、「ただちに健康に影響はない」との政府発表を流しながら、自社の社員には30キロ圏内に「危ないから入るな」と指示した自己矛盾を突くだけで充分であろう。

    NHK、民放各局の事故後1週間の報道の検証の後、独立系メディアであるIWJやOurPlanet-TVの成果を対比させられると、その違いが浮き彫りになる。

  • 震災の時から、どの放送局も同じような報道しかしていないと思っていたが、この本を読むと、それがよくわかる。
    テレビで報道されないことが、ネットでどのように展開されていたかなどは、メディアよる役割の違いが、放射能に限らず、他のことでも言えると思う。テレビに代表されるマスは「所有」が原則であり、ネットは「共有」だと説く。その考え方は、男の論理と女の論理の違いでもあり、女性的に考えている人が増えているというアテナドクトリンのひとつとも言えるのではないか。

  •  本書は「福島原発事故」をめぐる2011年3月11日から31日までのNHKと民法キー4局の全報道をすべて検証したものである。よくまあ著者は800時間ものビデオに目を通したものである。
     当時多くの人々がマスコミの報道に釘付けとなっていたことは当然であるが、誰もが全ての報道に目を通すことはできないのもまた当たり前の事実である。本書は、その主要な報道全てを検証したものであるが、読んでメディアというか人間の「不完全さ」を痛感した。
     今までの報道でも「首相官邸」や「東電本店」の対応のひどさは様々に指摘されては来ていたが、報道機関もまた「非常時」に対応できていなかったことは、本書の検証の中で明らかにされている。
     「振りまかれた楽観論」や「SPIIDIの存在を認識していたのか」等々の検証は、報道内容が実害をまねいた事実を指摘しているし、「日本テレビの爆発映像」の取扱いについても多くの問題点があったことが浮かび上がっている。
     これは、報道機関もまた、原発の「安全神話」に絡め取られていたということなのだろうか。
     本書は決して「反原発」の本ではないが、これを読んだ読者は「原発」を安全に運営管理することは非常に難しいという事実をデータとして認識するのではないだろうか。
     メディアもまた痛烈な反省と自己改革を突きつけられていることは間違いがないが、メディアにそれができるのだろうかと本書を読んで痛感した

  • 今まで読んできた、原発事故と報道のあり方の意見とそれほど変わるところはなかった。ただし、いままでの原発推進派とメディアの関係が、今回の報道姿勢につながったのではという点は目新しかった。

  • 2012年7月31日読了。
    大学の恩師にすすめられた一冊。

  • 津波報道では想定外の被害・危機を煽ってでも避難を促すのに、原発報道では「安全神話」から逃れられず最小の被害予想に縋ってしまったテレビ…テレビ報道に対する信頼回復への第1歩は、テレビ各局が自ら(この本の試みのように)この実績の徹底的な自己批判から始めなければならない。

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著者プロフィール

早稲田大学教育・総合科学学術院教授

「2023年 『メディア論の冒険者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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