- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582856910
感想・レビュー・書評
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『#ビートルズは音楽を超える』
ほぼ日書評 Day287
これほど終わらせたくない仕事は無かった…と、後書きにある。偽らざる著者の想いだろう。非常に内容の濃い一冊であった。
1週間ほど前に紹介した『ジョンレノンはなぜ神を信じなかったのか』が、宗教学者たる著者がエルビスやディランらアメリカ人の中にあるキリスト教的通奏低音が英国でのビートルズには感じられないという「無」を主張するところで終わったのに対し、本書はビートルズ「らしさ」がどこからやってくるのかを丹念に解きほぐしており、新書版ながら深みを感じさせる。
ビートルズ本の大半は「音楽」的観点で新規性を語るものが多かったと思うが、英文学者である著者が「文学」=歌詞の側面からかなりの紙面を割いてビートルズを分析しているのも(日本語の本としては)新鮮だ。『アリス』の著者ルイスキャロルの影響が大きいジョン、カムトゥゲザー等はその最たるものだが、通常は2人の間で語られる「愛の歌」に三人称を持ち込んだポールの特異性が数年のうちにはやはり「神」を想像させる視点の導入に繋がっている等、示唆に富む解釈である。
後半はそうした読み解きが主となり、若干牽強付会的印象も受けるが、中盤のビートルズは「お笑いバンド」としてモンティ・パイソン等からの影響や、作品から見るクレイジーキャッツとの共通点、バラバラに揃った「飛んで走って跳ねて」等の指摘も興味深い。
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長く人気のあるロックバンドに共通するのは、本書でいう「つながる孤高」と表現されるもの…いわゆる我々が魅力と分かりながら言葉にできずにいる、バラバラな個性を持ったメンバーの一体感ですね。作曲のバランスでいえばクイーンがベストだったと思いますが「つながる孤高」でいえばフーのようなバンドがビートルズに近いでしょうか。また、彼らの「労働者階級である」という意識はある種の「願望」で、それを含めた移動可能な中間階級という概念、といったものから、他の英国グループにも適応できるんじゃないか、という気がしますね。
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ビートルズ誕生時のイギリスの社会的背景や、ビートルズとイギリスの「お笑い」との関係、歌詞への宗教的影響等を考察した評論。私は今までこのような視点でのビートルズ解説を読んだことがなかったので、とても新鮮に感じた。ビートルズマニアの方にはぜひ読んでもらいたい。