- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582857139
感想・レビュー・書評
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戦国大名について総合的にまとめた一冊。
最新の研究を踏まえており、織豊政権は戦国大名の延長線上にあるのでは?という問題意識を踏まえた内容となっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史学者が戦国大名、主に後北条氏の統治体系について記した一冊。
後北条氏に偏るのはともかくとして、やや学術的で難しく感じた。 -
[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
戦国時代の統治に関する解説は大量の史料が残っている後北条氏を中心に扱われる。この辺りは戦国時代の最終的な勝利者である徳川氏が江戸で幕府を開いたことが大きく影響しているんだろうな。
近年の研究で判明した事を知ってもらうために書いたとあるだけあって、非常にわかりやすく、解説されている。この辺りが一般的になると世の歴史物は一段と面白くなると思うんだけどな。 -
近年の戦国大名論をまとめた良書。文書がよく残存している北条氏の事例を中心に、戦国大名家の活動(外交・政治・戦争)と統治体制について細かく記述している。新書としてはかなり専門的であり、一般の戦国ファンが読むのはちょっとキツいかも。
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≪目次≫
序章 戦国大名の概念
第1章 戦国大名の家臣団構造
第2章 戦国大名の税制
第3章 戦国大名の流通政策
第4章 戦国大名の行政機構
第5章 戦国大名と国衆
第6章 戦国大名の戦争
終章 戦国大名から近世大名へ
≪内容≫
戦国大名北条氏研究の第一人者による「戦国大名」論。近年の研究成果から、織豊期が特別で、近世の始まりとする史観は「おかしい」として、戦国大名は室町期と江戸期(元和偃武以降)の過渡期の存在であり、近世大名と戦国大名の大きな差は、「平和なのか戦争なのか」が大きいとした。織田信長も豊臣秀吉も基本的には戦国大名であり、北条氏や武田氏などとの差はない。秀吉政権が目立つのは、国内が「平和」になったこと、秀吉が「成り上がり」で、子飼いの家臣がいなかったこととによる、とする。まあ、納得しました。授業に反映させます。 -
戦国大名と言えば…
メジャーなところで武田信玄に、上杉謙信に…
今川義元や毛利元就や北条早雲などなど…
もちろん織田信長やあとを継いだ豊臣秀吉、徳川家康などもいる…
教科書で名前を目にしたり、歴史小説やテレビなどで、誰が何をどうした、誰と誰が戦った、勝った負けた、というのは知っている人も多いはず…
武田信玄や豊臣秀吉や徳川家康などいろんな武将のエピソードも知っているぜ、って方も多いかと…
しかし…
その実態を…
例えば、家臣団がどういうように構成されていたのか、とか…
どのような行政機構だったのか…
どのように戦争を行っていたのか…
どういう税を課していたのか…
どういう流通政策をとっていたのか…
などなどはあまり知られていない…
というかその実態はまだまだわからないことも多い…
そこで、比較的資料が残っている北条氏を参考に、戦国大名の実態を紐解いていく…
戦国時代に関しては、この30年でようやく研究が進んできたそうで、歴史小説などで得た知識とは結構違ってきているんだそう…
研究がもっともっと進んでいくと、今までの戦国大名、武将のイメージがガラリと変わるかもしれない…
例えば戦国大名と革新的とされる織田・豊臣大名(や近世大名)との違いは実はそんなにないんじゃないか、ということになって来てるらしい…
革新的だったから天下を統一できた、というのが一般的なイメージだけど、実はそれほどの違いはなかったようだ、とのことらしい…
歴史小説をチョロっと読む程度の知識しかないボクにとっては結構なインパクト…
面白かった…
戦国大名に興味がある人はゼーヒーと思うけど、そんなにいないか… -
守護と戦国大名の違いは一円的な領国支配をしているか否か。中世と近世の社会をわけるのは自力救済か、より上位の権力に紛争解決権を預け自力救済を凍結するか。織豊大名と戦国大名に質的違いはない。統一政権ができてからの違いは戦争状態の停止によるもの。つまり国衆の家臣化による消滅。ただし、家老として自身の領国支配は続けて行く場合が多い。戦国大名の在り方を規定するのは村の在り方。中世後半は飢饉の時代。常に村は生き残るために紛争をかかえていた。戦国大名は村を持続可能にして治安を維持する代価としての年貢や夫役を徴収した。。国衆も同様に安全の代価として臣従して上納金を納めた。。だから敵の侵攻や飢饉に対応出来ない大名は頼もしからずと言われて、離反される。そのために戦国大名は名誉を傷つけられないように常に戦争状態にあった。
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ここから始まる!もっとも新しい戦国大名像。
1980年代以降、急速に進展した戦国大名研究の成果を集約し、現時点における戦国大名の全体像の概略をまとめ、新しい戦国大名の基本文献として提示する。とくに室町時代までの大名・国人、戦国時代の大名との共通点と相違点を明確に示し、戦国大名の独自性とその歴史的位置について明らかにする。
飢饉と紛争が相次いだ戦国時代、戦国大名はどのように生まれ、地域国家の秩序を成立させたのか。大名家と家臣団の在り方から戦争にいたる背景まで、領国経営に必要な要素を検証する。また江戸時代へと向かう中での大名の変容をも視野に入れ、その統治構造をわかりやすく解説する。(2014年刊)
本書のねらい
序 章 戦国大名の概念
第一章 戦国大名の家臣団構造
第二章 戦国大名の税制
第三章 戦国大名の流通政策
第四章 戦国大名の行政機構
第五章 戦国大名と国衆
第六章 戦国大名の戦争
終 章 戦国大名から近世大名へ
主要参考文献
期待にたがわず面白い本である。本書のねらいにもあるとおり「80年代以降の研究成果を集約した、それまでとは異なる新しい戦国大名像を凝縮したような、手軽な概説書というものは、いまだ出されていない」という状況の中、本書は「現在における戦国大名像を端的に認識していただくことができる」内容となっている。
最近とみに新書の値段を高く感じる気がするが、本書が780円(税別)で買えるということは幸せなことであり、十分に満足のいくものである。
もちろん史料の制約や新書というスタイルによる限界は感じる。本書では多くが北条氏の事例を元に論じられているが、他大名の事例についてもう少し踏み込んで欲しかったきらいがある。例えば「御国」の論理について、武田氏や今川氏でもみられたとあるが、もう少し踏み込んだ解説が欲しかった。また、同様の事例は、長久手の頃の徳川氏や信長との対立を深めた頃の毛利氏にもあったのであろうかと疑問が湧いた。
また、国衆との関係では、従属国衆に十分な支援が出来なかった北条氏康が、蘆名盛氏から「頼もしからず」という評判が立ち始めていることを伝えていることが紹介されており、高天神城を見殺し、評判を落とした武田勝頼に通じるものを感じた。
終章では、「織豊大名・近世大名への変化についてどのようなとらえ方をするのが適切なのか」現在の著者の理解が示されているが、読んでいて、今まで薄々ながら感じていたものが、白日のもとにさらされた感じがした。今後の研究の進展に期待したい。