新書727エネルギーとコストのからくり (平凡社新書 727)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582857276

感想・レビュー・書評

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  • 501.6||Ok

  • 分かりやすく書いている。内容的には後半は特に筆者の考えが多い。

  • 「地球環境やエネルギー問題」に興味がある方には、是非おすすめしたい。

  • 今から2年ほど前(2014.4)に、エネルギーについて45の質問に答える形式で解説された本で、米国で爆発的に生産が増えているシェールガスを考慮して書かれています。

    今まで石油については確認埋蔵量という形で表現されることが多かったですが、コストの面から見た場合に、現実モデルと仮想モデルがある中で、現実に使える時期は仮想モデルから考慮すると、やはり石油ピークは存在し、石油の時代が終わる可能性があると私は理解しました。

    以下は気になったポイントです。

    ・採取したエネルギーと、採取するのに使ったエネルギーを比べたものが、エネルギー収支比である。採取するのに使ったエネルギーが大きい場合(1より小さい)と、飢え死にする(p19)

    ・石油や石炭は地下に眠っていてこの状態では価値がない。しかしエネルギーを使って地上に持って来ればタダではなく、値段がつく。値段がつくとは、エネルギーを使った証である(p20)

    ・石油の価格は、需要が高まった19世紀中頃までは、石油は高値であった。機械堀りにより大増産が可能になり、1860年に20ドルだったのが、翌年には200分の1になった(p24、38)

    ・イギリスには石炭が豊富にあり、木炭から石炭への燃料が切り替えられることによって森林破壊は軽減され、エネルギー問題も解決した(p30)

    ・1879年にエジソンが白熱電球を発明してからは、石油は灯りの燃料としても使われなくなった。使われるようになったのは、1885年の自動車発明以降、自動車が普及につれてから(p35)

    ・日本では地盤沈下のために、1972年に、ガス田開発が停止された。今は茂原市を中心とした九十九里浜のみ(p46)

    ・イギリスは北海油田の石油ピークを契機に石油の輸入量が輸出量を上回った、それに伴って景気も悪化した(p48)

    ・天然ガスを油田で燃やすのは、天然ガス用の設備をつくるよりは得なので(p61)

    ・石油ピークの到来はそんなに遠い日ではなく、東京オリンピックが開かれる2020年頃であろう(p71)

    ・コンビニから商品がなくなった理由は、コンビニ商品はトラック輸送がメインであり、その燃料がなくなったから(p73)

    ・アメリカにおけるシェールガスは、すでにあるもの(パイプライン、採掘技術、人材)を使って採取しているので、コストが安く済む(p83)

    ・メタンハイドレード100年分というのは、有望地域にあるものを全部掘った場合の数字であり資源量のこと。資源量は膨大だが、埋蔵量はゼロだろう(p88、91)

    ・自然エネルギーのコストが高い理由は、石油・天然ガスや石炭に比べて、集める労力が多い反面、得られるエネルギー量が少なく、パワーが小さく、スケールメリットが得にくい(p100)

    ・日本の地熱発電が伸びない理由は、自然保護の観点と、温泉事業保護の観点があって、適地を見つけにくいため(p110)

    ・人口が増えた理由は、食料が増産したため、増産できた理由は、石油を燃料とした機械の発展、石油化学製品である肥料や農薬が開発されたから(p133)

    ・経済が落ち込むから石油の消費量が減るのではなく、石油の供給量が減るから経済が落ち込む(p136)

    ・私達の所得が増えないのは、加工産業やサービス産業が停滞しているから、その最大の原因は石油の価格が高くなり、エネルギー全体の価格が上昇したため、エネルギー消費量が落ちたから(p142)

    ・エネルギー消費量が減っている原因は、省エネのためではなく、石油のコスト高による石油消費の減少が原因である。石油の消費量が減って、GDPが落ち込んだ(p144)

    ・日本はエネルギーコストが上昇すると、上昇した分、産業た停滞する仕組みになっている、産業が停滞すれば仕事の数も停滞する(p145)

    ・アメリカのシェールガス開発は、アメリカ国内で行われている。シェールガスが高くても、購入に使ったお金はアメリカの誰かの収入になり、仕事を与えていることになる(p154)

    ・国内産を買えば、日本のどこかの人にお金が渡り、そのお金はまた日本で使われる(p156)

    ・都会の最大の欠点は、食料やエネルギーを生産せず、外から持ってきているところ。食料やエネルギーが途絶えれば、都会は崩壊する(p180)

    2016年4月17作成

  • 震災後を強く感じさせる本。データへの主体的な姿勢は良いと思うが、推進派と議論をかみ合わせてよりよくする、という感じにもっていけるのか一抹不安。見せたいところを見せる人を専門家というのもちょっとおっかない。では、素人は見せたいところみたいところだけ言ってるわけじゃないのか、という話になってしまいそう。

  • エネルギー、主に石油資源の現状からコストの点で今ある課題を挙げて今後の日本に必要な施策についてアドバイスを送っている。巷にある嘘っぽい中身のない幻想本を読むくらいならすごく現実的なお話をしていると思う。

  • エネルギー収支比=採取したエネルギー/採取するのに使ったエネルギー、高いほどいい。

    1999年イギリスの北海油田がピーク、2001年ノルウェーの北海油田がピーク、最近は中東の石油がピーク。生産側の事情で価格が変動する。

    コークスは石炭を蒸し焼きにして硫黄やコールタールを抜き取って作られる。高炉にコークスと鉄鉱石を入れると、下から鉄が出てくる。

    石油は扱いが簡単。掘らなくても自噴する。点火も楽。

    日本には石炭がある。石油が大量に輸入されたため置き換えられた。釧路炭鉱だけ。

    南関東ガス田=水溶性天然ガス。船橋ヘルスセンターはガスの開発によってできた。しかし地盤沈下で停止。
    関東平野の温泉にはガスが溶けているので爆発事故が絶えない。

    石油開発の当たる確率は20%程度。天然ガスも出てくるが、少量なら燃やしてしまう。

    石油は、コストがかかるので全部を取り出すことは出来ない。したがって枯渇はしない。しかし高値になる。
    やすい石油はピークに達している。2020年にはピークに達する。可採年数は仮想モデルなのでそのとおりにはならない。

    ガソリンがなくなるとどうなるか。コンビニから商品がなくなる。

    石油の価格が上昇している、ということは石油ピークに達しているから。オイルサンドやシュールガス、深い海の石油の開発が進んでも割合が増えれば高くなる。

    アメリカのシュールガスは、今までのインフラと使っているから、なんとか採算にのる。
    シュールガスは用途が少なく、石油の代わりにはならない。プラスチック、化学繊維、肥料など。

    石油は自噴が止まると油槽に70%残っている。メタンハイグレードもあっても取り出せない。

    石油火力は14~15円、天然ガス火力は6~7円、石炭は5~7円。太陽光は37~46円、風力は11~26円、地熱が11~27円と高い。

    オランダの風車が風力発電の原型。ヨーロッパは偏西風が強い。風車によってできた干拓地でチューリップ栽培が行われてバブルがおきた。
    地熱発電も、自噴する熱水を利用するため、石油ピークのカーブと同じになる。再生資源ではなく枯渇性資源。
    浅い井戸で雨が降っても枯渇する。

    ガソリンエンジン車を全部電気自動車にすることは不可能。電気をそんなに供給できない。

    内燃機関=ガソリンエンジンやジェットエンジン。蒸気機関は外燃機関。内燃機関は小型化できるが、燃料は液体である必要がある。

    3R=リデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再加工)。

    コンバイン=複合=刈り取りと脱穀を複合した機械。

    米は江戸時代一人あたり消費量が150キロ。今は60キロ。
    経済が落ち込むから石油の消費量が減る、のではなく石油の供給量が減るから経済が落ち込む。
    石油の値段が上がれば、すべての値段が上がる。
    現在の物価は、1バレル100ドルの物価。石油が上がればコストプッシュインフレになる。

    エネルギーコストが上昇すると、産業が停滞し、工場が外へ逃げていく。
    石油に頼らない職場を見つける=観光産業、手作り産業。

    太平洋戦争のきっかけは、アメリカの石油禁輸政策。お金があっても石油を買えなくなる。石油ピーク後は石油争奪戦になる。

    アメリカは大量の石油があったため、社会構造が石油漬けになっているが、ヨーロッパは石油のない時代の生活が社会に息づいている。

  • チープオイル(ガワール油田みたいなの)の生産はピークを迎えるため、原油価格は高止まりして世界経済を急落させるというお話。
    確かに、深海や非伝統的オイルが増えているのであるがそれはもうおこっている状況。

    アメリカの70年代が自国のオイル産出ピークと経済低迷がおこったというのがその根拠なのだが、インパクトの規模と確度はいまいち説得力に欠ける。特に価格による量のコントロールという経済学の基本的な視点にかけるので、著者自体の信憑性が薄い。

  • 東2法経図・開架 501.6A/O54e//K

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著者プロフィール

NPO法人石油ピークを啓蒙し脱浪費社会をめざすもったいない学会副会長。東京都生まれ、東京大学工学部卒業。工学博士。通産省工業技術院地質調査所入所、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、アジアの政府間機関COOP、経済産業省・産業技術統括調査官、政府間機関Group on Earth Observation(ジュネーブ)を経て、現在、産業技術総合研究所地質分野企画室に勤務。日本学術会議連携会員。

「2013年 『みんなではじめる低エネルギー社会のつくり方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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