新書751森と日本人の1500年 (平凡社新書 751)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582857511

感想・レビュー・書評

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  • 最近の九州などの水害地で大量の倒木が流れ着いて被害が拡大しているのが不思議に思っていたが、接ぎ木で根の浅い木々が切り時を過ぎて残っているために起きているんだときく。
    少々雑多な内容ではあるが、日本人と森との歴史を概観できる。ほぼその時々の都合で、切りつくしたり放置したりを繰り返してきたことがわかる。
    今後、差し迫った問題として森や動物への漠然としたイメージを捨てて真剣に向き合う必要があると思う。

  • 652-T
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  • 多くの人が読んでくれればなあと思った一冊。

    里山と広葉樹林に強い興味があって読んでみましたが、江戸時代以降は木材が建材と燃料の基礎であったことで国内の里山が禿山化していた事実、建材利用は勿論、塩の生成や金属の精錬等すべて燃料が木材(最後のほうはは石炭?)だったことを考えればそれに納得するのと同時に、当時の土地の腐り方は相当深刻だったんだなあと想像させられた。。。
    そこから100年が過ぎて(半分は人工針葉樹林で原生林と比較したら全然かもですが)現代の山林と昔の禿山と比較したら木々が見事に復活してて時間は数十年かかるけどしっかり植えれば復活するものなんだなあという事実に何だか嬉しくなった。
    その一方、文明進化で石油や原子力といった強烈な代替燃料を手に入れたことと外国の木を伐採してそれを輸入することで日本の木々の伐採が減って偶然森が復活したのかと思うと少し複雑な気持ちで、森と木材については日本人のみんながもう少し知って考えて意見を出し合ってもいい話題なんじゃないかなって思った。

    里山生活、やるなら早くしなきゃ。。。

  • 森林と日本のこれまでの流れ。単純な一つの答えがあるわけではない。思った方向に進まないことが多く、物事には両方の側面がある。
    その中でも国土の保全の保全のための施策を講じるにあたって持ちうる考え、拠り所とは。
    愛とそれによる観察、美しさの基準。

    ◯最後に達するはずの「極相」の植物を最初に植えても、現在の環境には適応しない

    ◯現在の木材消費量の4割以上は製紙用
    ◯民間森林所有者:1.王子製紙19万ha、2.日本製紙9万ha、3.住友林業4.5万ha、4.三井物産4.4万ha
    ◯A材製材向き、B材合板向き、C材チップ向きが、よく管理された森で1/3ずつ。A材から取れる用材は3割程度
    →製紙用需要によるバランスの必要性

    ・3世紀、邪馬台国の時代から成立していた林業

    ・造林技術と経営をうまく組み合わせた吉野林業の成立
    ・天然更新方式の木曽
    ・ブランドとしての北山丸太、四谷丸太

    ・国有化による林政、林学の始まり
    ・吉野林業を見本とした造林学

    ・ワンダーフォーゲル=渡り鳥
    →自然の中を歩き回ることが青少年の教育によい
    →ドイツ森林法では「市民が森林を自由に歩き回る権利」を確保
    →日本の学校林の現状は?

    ・外材輸入の増加、ハウスメーカーのプレカット工法による人工乾燥の必要性→国産材の未適応、一方で役物需要の増加

    ・森林セラピー、環境教育、温暖化対策としての新たな可能性
    →一方で注意しなければ、切り捨て間伐の増加等、誤った方向にいく

    ・放棄林が美しい混交林になるケースもある

    ・施策に「美しさ」を基準とする

  • 「森づくりは半ば科学、半ば芸術」という言葉が印象的。
    焼畑や林内放牧など、日本のアグロフォレストリー(農林業)の紹介。主にドイツを参考とした日本の近代林業と紆余曲折、戦前まで辛うじて残されていた各地の土着で多様な林業技術との対比が面白い。(ちいさな帆)

  • 古事記なんかの時代以来の、日本の「林業」の歴史をひも解き、現状と未来を憂える本。

    日本には本当の原生林はほとんどないと言われる。つまり、先人がほとんど何らかの手を入れてきたということ。その、人々が営々と積み上げてきた森づくりの歴史である。

    こうして通史的に眺めていると、明治維新や世界大戦などの大きな転換があるたび、役人や政治家が(理想に燃えたかどうか知らんけど)ヨーロッパなどの知見を無批判に持ち込み、地場の伝統や知恵に学ぶこともなく、机の上や密室で考えた半端な施策で森を荒れさせたのだ、という流れが見えてくる。卑近なところでは、先の政権交代時にも似たような構図があったらしい(わけのわからん、目先の補助金など)。
    明るい未来展望が開けた感じではなかったけど、考えさせられる好著であった。

  • 日本の森林の99%は人によって手を加えられたものであって、自然そのままの自然林ではないそうです。古くから木材や燃料として木は用いられ伐られてきました。そのため、大和政権のころから、植樹などの森林の手入れについての記述が古文書に残っているそうです。さらに、近代に入ると製紙業も加わりますし、産業革命によって木材の需要は軒並み上昇していく。よって、明治期の山々にははげ山も多かったとか。そこで政府はドイツから学んだ林学を政策に取り入れ、計画的な林業を本格的におこなうようになったとか。しかし、時代は下り、太平洋戦争によってまた林業は荒れ、戦後また立てなおされはするものの、現代に続いてきた日本の林業は、かつての欧州のやり方のように、力によって自然を支配するという思想を今でもその根本の思想として持っているようで、あまりうまくいっていないようです。逆に、欧州では自然に逆らわないように、自然と共存するような形での林業が主流になってきているとか。それは、ずっと昔の日本の林業の精神だったものでもあるのだそう。森林の手入れについても、間伐、つまり間引いたり、枝払いをすることによって、他の木々によりよく陽が当たるようになり、成長を促し、森林自体が健康になっていくことや、一斉林といって同じ種類の木をその土地すべてに植えず、針葉樹や広葉樹をバランスよく植えて多様性を保つことで、病気や害虫などで森林丸ごとが一気にだめになるリスクを抑えることができることなど、森林の分野のみならず、他の分野にも応用できそうな話になっていました。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。静岡大学農学部を卒業後、出版社、新聞社等を経て、フリーの森林ジャーナリストに。森と人の関係をテーマに執筆活動を続けている。主な著作に『虚構の森』『絶望の林業』『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』 (イースト新書)、『森林異変』『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『樹木葬という選択』『鹿と日本人―野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』(ごきげんビジネス出版・電子書籍)など多数。ほかに監訳書『フィンランド 虚像の森』(新泉社)がある。

「2023年 『山林王』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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