- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582857740
感想・レビュー・書評
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『日本残酷物語』とは、昭和30年代半ばに平凡社から刊行されたシリーズである。
ここで描かれるのは日本の最底辺に生きる人々の生活である。
「姥捨」、棄老の物語は果たして前世紀の遺物、いやもっと前、近代以前の風習なのだろうか。
『女工哀史』で描かれた徐行の歴史は本当に今も、「歴史」なのだろうか?
『日本残酷物語』の中の人々は、今も、そのまま生きてはいまいか?
もちろん当時と状況は変わっていても、同じような問題が今も同じまま残っている。
それは次の章でも述べられている。
第三章、最暗黒の「近代」では、「弱き者」たちの世界を描く。
胸が締め付けられる。
112頁、『現代の日本でも、児童や高齢者の問題は克服されてはいない。
日本には、用事を慈しみ、老人を尊ぶ美風があるように想像されがちであるが、全く反する感情があり、制度が存在する。
「福祉」というものの定着しにくい風土が、この国にはある。
子供と老人の「残酷」は形を変えながら、いまでも更新され続けているのである。』
補足:松谷みよ子が「民話の会」に触発されていたことは新たな発見であった。
優しい物語の奥に、深いものを感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2020.04―読了
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宮本常一と谷川健一が中心で編集した『日本残酷物語』全7冊ができるまでと内容の概説。
前回の東京五輪の頃に書かれた地べたの民衆史を2020年に読むとどんな事を思うんだろう。『忘れられた日本人』や石牟礼道子『苦海浄土』へ繋がる現代篇2冊なんて特に。
でもその現代篇だけ文庫化されていないんだって… -
書籍の時代背景・執筆者の解説
日本残酷物語という1960年ごろに話題となった全7巻のシリーズについて解説している。全体で約230ページある書籍の冒頭1/3は執筆者や書籍ができた経緯,背景について解説しており,残りの2/3でシリーズを1巻ずつ解説している。日本残酷物語ができた経緯としては,宮本常一という著者の存在が大きく,前身となる「日本風土記」からの流れをくんでいるとのこと。
後半の2/3の部分では,担当した執筆者の紹介や関連書籍,時代背景についても触れられており,けっこう長ったらしい記述もあった。
全体としては,長ったるしくて読んでいておもしろくない部分がけっこうあった。時代背景の解説はもう少し減らして,日本残酷物語への著者の感想や考察をもう少しほしかった。批評家というか論文のレビューみたいで堅苦しくていまいちだった。
p. 53の「民衆の世界が世間に知られるのは不幸によってである」という一文が印象に残った。2016年に電通の若手女性社員が自殺したことが大きな話題になったが,まさにこれと一致していると思った。時が流れても,民衆の生活・立場というのは変わりないのだなと思った。