新書791地球はもう温暖化していない (平凡社新書 791)

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  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582857917

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  • 衛星や気球のデータでは、最近100年の気温の変化は0.7°cである。海面上昇も100年で20cmである。いずれもほぼ安定していて、1998年からは温度上昇は頭打ちになり、太陽活動が弱まることによってこれからは気温が下がるかもしれない。そんなときに日本は毎年温暖化対策に4兆円も使っていて、CO2排出削減政策がGDPを年間1〜2%、金額にして5〜10兆円も押し下げているので、一世帯あたり20万円もの損失になるのだ。温暖化対策などしないで、寒冷化に向けてエネルギーと食糧の自給ができるようにすべきであるのに、日本は温暖化狂想曲に踊らされている。日本の気象学者はもう研究費目当ての温暖化ムラの住人しかいなくなってしまった。
    水蒸気の温室効果は非常に高く、正のフィードバックによって温暖化を加速させると思われていたが、衛星や気球によるデータで、正のフィードバックがほとんどないことがわかった。IPCCは雲も正のフィードバックがあると主張していたが、宇宙線の研究によりむしろ負のフィードバックがあるとわかった。
    よくある温暖化の被害にも間違いが多い。ツバルやモルディブはサンゴ礁の島である。サンゴは海面近くで増殖し、やがて死滅し、波や風に運ばれて白い砂となって堆積する。こうしてサンゴ礁は氷河期以来100mの海面上昇を追いかけてきたのだ。南太平洋のフナフチ諸島の調査によると、過去100年で7.3%増加していた。サンゴ礁は海水準変化に対しては大きな適応力を持っているのだ。
    キリマンジャロの万年雪が温暖化によって溶けたという説もあるが、明らかに誤りである。6000mの高地は常に氷点下なので雪氷は溶けようがなく、湿度が下がったため蒸発(昇華)したのだ。実際、残された氷の尖った形状は 氷が昇華して消えていったことを示している。
    日本では2008年以来、地球温暖化を中学・高校で教育するよう文科省の学習指導要領で定められた。義務教育で生徒全員にCO2の温暖化を教え込んでいるのは問題である。学問的に評価が定まってない事柄について一面的な見方を教え込むことは根本的な誤りである。
    気候変動枠組条約は温暖化対策を口実に世界の富の再配分を図る国連政策の一環であるという説もあり、多分その側面もあるだろうが、援助はあくまでも理にかなった形で行うべきもので、科学の仮面を被った政治、科学者の仮面を被った御用学者たちの手に委ねるべきことではない。

  • 学問的に、極めて説得力のある論。CO2主因の温暖化論は、完全に破綻した。

  • <要旨>
    1. 長期的に見ると、地球の平均気温は変動を繰り返してきた。

    2.小氷河期以後300年間、気温は上昇してきたが、1998年以降頭打ちになっている。

    3. 近年、気候変動と太陽活動との相関は、太陽磁場が宇宙線量の増減をもたらすことから起こっている。宇宙線の増減に応じて低層雲量が増減し、その結果、気温の下降・上昇を招く。

    6. 足許、太陽は長期間に渡った活動期を終了したため、気温の低下をもたらす蓋然性が高い。

    7. 今後数十年間は、二酸化炭素増加によりその一部が打ち消されるものの、全体として寒冷化に進んでいくと予想される。

    8. 大気中の二酸化炭素は、植物の育成を促成するというポジティブ要因がある一方で、人間環境にとってネガティブな要因は特にない。

    9. 炭素資源を後世に遺すことこそ以後の課題である。炭素資源の代替となる資源としては、水素エネルギーおよび藻類バイオマスエネルギーが考えられるが、後者に取り組むことが喫緊の課題である。

  • 地球温暖化の原因が二酸化炭素であるという説が破綻していることはある程度理解していたが,本書では太陽活動の影響を考慮するべきだと述べている.宇宙線量と低層雲の相関から,低温化が予測される由.京都議定書に隠された問題の洗い出しも楽しく読めた.二酸化炭素の排出削減に無駄な金を使うことは即刻やめるべきだ.

著者プロフィール

1934年千葉県生まれ。東京大学理学部物理学科(地球物理学専攻)卒。同大学院数物系研究科博士課程修了。理学博士。専攻は金属物理学、とくに金属-水素系の物性と材料科学。現在、中央大学名誉教授、物質構造科学研究所・東京大学生産技術研究所客員研究員。著書に『拡散現象の物理』(朝倉書店)、The Metal-Hydrogen System(Springer)、『気候変動とエネルギー問題』(中公新書)、『水素と金属』(共著、内田老鶴圃)、『物理学大百科』(共監訳、朝倉書店)などがある。

「2015年 『地球はもう温暖化していない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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