新書849新版ハリウッド100年史講義 (平凡社新書 849)

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  • 平凡社
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  • / ISBN・EAN: 9784582858495

感想・レビュー・書評

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  •  ハリウッド映画の歴史を10年区分で解説する。まず、ハリウッド誕生以前の話、つまり、映画そのものについて本書は解説する。映画の起源は、明確なものはないが、映画に必要な2つの要素、すなわち光学装置と投影文化が合わさったものだと定義すると、19世紀の終わりに誕生したと考えられる。その後、ハリウッドの歴史を見ていくが、外的要因と内的要因によって、ハリウッドの特質が変遷することがわかる。前者は、第1次、2次大戦の影響、後者は独占禁止法やレッド・パージなどと、映画はその時の時代背景と密接に関係する。これらにより、勢いを増したり、時には衰退することもあったが、ハリウッド映画は人々の夢を作る、ということは今でも一貫している。

  • 有益な入門書なんだけれども、導入の能書きが長いかな。専門家の目を気にしすぎて、説明が遠回りしている。そこらはもっと簡略化するか別項におしこめて、まずは本論をぐいぐいと進めてほしいところ。

  • 映画のタイトルが、たくさん出てくるが、その映画の写真がないので、映画にあまり詳しくない人がこの本を読んでも、イメージが湧かず、良くわからないのではないだろうか。

    私は映画を何千本と観ているので、本書に出てくるタイトルの8割方は観ているし、観ていなくてもタイトルは知っているが、それでも全体を通して面白味がない本だった。

    内容は、ハリウッド映画を、作る人/売る人/観る人の3つの視点で観て、歴史を追うものだが、文章は表現が回りくどく、歯切れが悪いし、淡々と書き連ねているだけで、リズム感がない。

    “大学で教科書として採用されている”と、あとがきに書いてあったが、確かに教科書的な作りである。教科書としてなら、良い本と言えるのかもしれないが、一般の映画ファンにはお勧めしにくい。

    また、映画を語る上で欠くことのできない、映画音楽について、全くと言っていいほど触れていないのも大きなマイナス点である。本文中で、ヒッチコックの映画には何度も言及しているが、バーナード・ハーマンの名前も出てこない。あの「サイコ」の有名なシャワーシーンでも、ハーマンの音楽がなければ、緊迫感が半減するどころか皆無にもなりかねない。実は、ナイフで突き刺すカットがないのにもかかわらず、あれほどまでの恐怖を演出しているのは、音楽の力によるものである。

    映画の通史を描いた類書では、写真が豊富な「世界シネマ大事典」がお勧めである。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685062

  • 一応読んだのは増補版だが、この10年で様変わりした主にネットの世界にはとてもおいつけないし、映画という枠組みだけで語ることに無理が出てきているのかも。ともあれかのハリウッドの歴史について駆け足で通史をたどれる便利な本。各論については別途専門研究書が参考文献にあがっているが、欧文ばっかでちょっと手が出せない。
    もっと読みたいとおもう箇所は、テレビ業界との関係とワッサーマンがやったジェームズスチュアート法人化。
    以下メモ。

    ■前史
    のぞき箱から大勢の観客向けに転換。エジソンの活躍。
    実録風景、見世物が中心だったのをエドウィン・ポーター(「大列車強盗」)が物語路線開拓。ポーターの編集方法ABAB(加藤幹郎「ジャンル映画論」に詳述あった気が)
    低所得者向けニッケルオデオンと中産階級向けエジソンの特許ビジネス(1908ザトラスト設立)の戦い。
    買い切りからレンタルに移行し、盗作や剽窃の歯止めを図る。以前は映写業者の裁量で本編に別映画のカット(画面にむかって拳銃を撃つ)を挿入されることもあったがそれができなくなる。

    ■1ハリウッド誕生
    アドルフ・ズーカーのアイディア。アトラクションの一貫として汽車の窓外風景に映写を行っていたが、汽車に乗せる必要がない事に気づいて映画のみの興行をはじめる。
    エジソンの1巻もの志向、ズーカーの長編フィーチャー志向。
    一次大戦で好景気化し、映画の輸出が5倍。イタリア・フランスを抜いて制作本数世界一。
    グリフィスの功績はショットとシーンの関係の構築(分析的編集)と製作の分業化。
    グリフィスが得意としたメロドラマの要諦とはなにか。科学の時代における個人による幸福追求装置。
    「イントレランス」の興行的失敗と功績。エジソンの支配から逃れたハリウッドの「発見」。気候のよさ、優れた景観。
    古典的ハリウッドとは、「アメリカ」の「白人」映画の世界。ハリウッドドラマの大原則(1物語の時間と空間に混乱がない2心理の動きが明瞭)とその技術。
    エンディングにおける矛盾。ハッピーエンディングはじつはハッピーそうに終わっているだけで話は終わっていない。ほとんどは男女の恋愛成就で幕を閉じるメロドラマ調。古典的ハリウッド映画においてはメロドラマはメインの筋運びに並行して走るサブプロット以上の、通奏低音のようなもの?
    コメディの隆盛。マック・セネットの連続ギャグ→チャップリンのギャグとドラマをゆるやかにまとめた物語。

    ■2夢見るハリウッド
    狂乱の20年代、映画製作資金繰りへの投資が加熱し22-30年で十倍。
    1917フィラデルフィアの劇場チェーンがおこしたファーストナショナル興行社連盟による制作、配給、上映のまるごと管理(垂直統合)。追随するパラマウントのズーカー、MGMのマーカス・ロウ、この時点では3社で全土15000ある映画館の1割にも満たなかった。他社の追随は続き、以上のビッグスリーに対して、リトルファイブが追随(カールレムリのユニバーサル、フォックス、ワーナー、製作者配給会社+フィルムブッキングオフィス、ユナイテッド・アーティスツ)。
    スキャンダルの火消しに作られた全米映画製作者配給協会MPPDAの設立と共和党大統領候補の側近で長老派の大御所ウィル・ヘイズ会長登場。
    ○サイレント全盛期制作の効率化がすすめられ、プロデューサー体制が確立。
    シナリオの導入、グリフィスの挫折31年、スターの魅力、運動神経と裸、エキゾチズム(ルドルフ・ヴァレンチノ。雪州との比較)、大作と抱き合わせ作の両輪体制、欧州映画人の参入とライティングシステム確立。
    ○30年代黄金時代の光と影。
    「映画宮殿」絢爛豪華な劇場の設立。
    ボードビルのかわりとしてのトーキー導入。電話・ラジオ業界の参入で映画業界の再編もありえた?、ワーナーの「ジャズシンガー」(27)。同年五社協定による設備投資機材決定。
    29年大恐慌にはいり32年ころから収益減。その結果役員陣の刷新と業界地図も変化する。ビッグファイブ(パラマウント、MGM、20世紀フォックス、ワーナー、RKO)とリトルスリー(ユニバーサル、コロンビア、UA)
    ○録音方法の苦戦とカラー化の模索、特殊効果の発明。
    ジャンルの隆盛。ミュージカル、ギャング、怪奇、喜劇
    ○倫理規定
    不況のさなかカトリック系の「礼節同盟」が映画のランク付けを行うと発表。映画の自主規制団体は1909年中産階級向けに映画を作る動きの中で設立されて以降外部規制団体から業界を守ってきたが、ここにきて業界の引き締めが行われる。MPPDAは1934年,すでに1930年に作成されていたコードの厳格化宣言と管理局PCAを設置し局長にはカトリック系のジャーナリストジョセフ・ブリーンを任命。68年まで続く自主規制機構が完成する。
    一方、こうした倫理規定の内外からのつきあげで、映画産業は思想・感情・経験の文化媒体としてみなされるようになっていく。
    コード前後での変化をコメディを例に紹介している。
    ○以前・マルクス兄弟的荒唐無稽
    ○以降・スクリューボール・コメディによるロマンスを通した自省馴致
    活躍した監督。ホークス、キューカー、ルビッチ、キャプラ、フォード、ワイラー。俳優。ゲーブル、グラント、スチュワート、コルベール、ヘプバーン。
    3人のプロデューサーのアメリカ文化を体現した夢。
    ユニバーサルのタルバーグ、MGMのセルズニック、フォックスのザナックとコロンビアのハリーコーン。
    「アンナカレニナ」(35)「ロミオとジュリエット」(36)「孔雀夫人」(37)「風と共に去りぬ」(39)「オズの魔法使い」(39)「ニノチカ」(39)

    ■3古典的ハリウッドの成熟
    ヒッチコック、ウェルズのハリウッド進出。戦争・銃後映画の変容。欧州からの亡命者。
    ○1946年、パラマウント訴訟(38年〜)の決着。独占禁止法の適用でビッグ5リトル3の8社すべてに劇場チェーンの分離、ブロックブロッキングの廃止命令。以降10年をかけて傘下の劇場が切り離されていき、垂直統合は崩壊する(制作と配給はそのまま)。訴訟がこの時期に決着したのは欧州復興計画マーシャル・プランにおりこまれた文化輸出事業に映画を含める思惑があったようで、ハリウッドは国歌の介入もあって再編されていく。
    ○「郊外」の誕生とテレビの普及、劇場の観客動員は46年がピーク。テレビが9割普及する57年までに興行収益は7割減。
    ○赤狩りとハリウッドテン
    ○40年代ノワールとは。画面と話の暗さ、フラッシュバックとボイスオーバーの転覆的使用。物語の説明としてのボイスオーバーではなく、過去の内省と逡巡、滅びゆく私へのボヤキ

    ■4黄昏に輝くハリウッド
    パラマウント訴訟の結果、独立系の乱立と、配給は相変わらずハリウッド頼み。59年には全ハリウッド映画の7割が独立系制作。
    映画制作のイニシアチブがプロデューサーの手から離れていく。MGMルー・ワッサーマンによる役者の法人化による節税。
    ○集客のため見世物性が復活する。画面の拡張、ドライブインシアター、シネラマ(52年〜)、立体、コードを無視した独立系作品が呼ぶ話題性、コーマン、エクスプロイテーション映画。
    豊かなアメリカの陰り。「捜索者」(56)「めまい」(58)「サイコ」(60)。
    モンロー活躍。裏切り者カザンのメソッド演出。レイ、サークのあやういメロドラマ。
    ○映画の二極化、商業か文化。
    60年代政治の季節は、若者文化の台頭、ピルの性革命、公民権運動、ベトナム戦争など社会が大きく変わった。映画を量産できなくなったハリウッドは大作主義でかけにでて、テレビ、独立系との差別化を図ろうとした。「ウェストサイドストーリー」「サウンド・オブ・ミュージック」「ベン・ハー」「アラビアのロレンス」「クレオパトラ」らスペクタクル大作。
    同じ頃でてきたフランス批評、作家主義、ニューシネマ。

    ■5 70年代以降
    69-72年の大損益500億円、大作主義への反省。スター作家の登場、アルトマン、シーゲル。
    50年代に形骸化していたコードの撤廃とレイティングシステムの導入による弾力化。
    マーケティングと70年代梁山泊コーマン学校の雄たちコッポラ、ルーカス、スピルバーグ、スコセッシ。ウディ・アレン登場。
    映画のルックの変化。映画学校卒の技術博覧会の様相で、広角レンズ、望遠、ディープフォーカスを多用し画面の迷路化と謀略の世界の表象。子供の表象。
    ユニバーサルのワッサーマンによるブロックバスター戦略。コングロマリット化関連業界との連携によるイベント化、ハイ・コンセプト一斉上映大規模宣伝をつかったこれまでとちがう大作主義。(水平結合)
    ○テレビの位置づけ。p217
    映画ははじめテレビというメディアテクノロジーを自らのバリエーションのひとつとしてとりこもうとしていた。劇場でのテレビ上映会、テレビへの有料番組の提供など50年代に試みられた。つまり放送形態ではないテレビの可能性をさぐって放送業界と綱引きをしていた。この綱引きは48年に適用された独禁法と同様の思惑から連邦逓信委員会FCCのによって調停が行われ、テレビは放送媒体として位置づけられた。この見返りとして「シンジケート」という制度を立ち上げテレビを出口回路とする番組の制作主体のひとつとしてハリウッドの利権を保証した。
    こうしてテレフィルムなどのアイディアを出してテレビをひとつの活路として見出していく。その立役者がワッサーマン。制作の現場でのプロデューサーシステムがパッケージシステムにかわったものをさらにテレビでの宣伝、二次使用、など戦略にくみこんでいった。それが成功したのがブロックバスター映画で、大規模な宣伝が逆に中身をも変えていった。
    ジョーズ、ゴッドファーザー、スター・ウォーズなどハイ・コンセプトな作品を全国一斉上映で劇場動員を煽った。

    ■6世界が舞台
    ○メガコングロマリットとは。
    ビデオ、ケーブルテレビの登場。並行結合の出口回路の選択肢が増えリスク回避。
    映像使用権の多角化、レンタルビデオ、機内映画、玩具、ノベライズ、など収益構造が複雑化し、相互関連会社化で関連会社との結びつきが多角化。その結果90年代ハリウッドの総収益に占める映画配給比率は10%。
    この時代の流行はCG.ドルビーサウンド、キッズ向け、シリーズ化。
    メディアが多様化したせいで全国ネットのテレビは相対的に存在価値を減じていく。それに拍車をかけたのが連邦逓信委員会FCCが主導した政策。「番組」と「宣伝」の区別の緩和をはかり放送内容の質が変化していく。90年代にはネットが参入してさらに混乱を極める。
    一方シネマコンプレックスの輸出が成功し、ハリウッド王国の拡大はつづく。
    ニューラインのタイアップ戦略、キャラグッズ戦略。ワインシュタイン兄弟ミラマックスのアート系路線の成功。
    90年代の覇者6つのコングロマリット。
    マードックが85年に買収したフォックス。60年代シンジケート系としてスタートしたヴァイアコム(パラマウント、UPN、MTVなど買収)。酒造会社シーグラムが松下電器から買収したユニヴァーサル。ソニー傘下のコロンビア。タイムワーナー(cnn、ケーブル会社などを買収)。ディズニー(ABC買収、ニューライン、タッチストーン系列)
    映画祭の多様化

  • 東2法経図・6F指定:778.25A/Ki69h/Takehara

  • ハリウッドの歴史について流れが多少わかった
    なんかちょっと読みづらかったけど
    映画論っていいなと若干思う

  • 簡潔に纏まっている

  • 2000.08.15

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著者プロフィール

北野 圭介(きたの・けいすけ)
1963年生。ニューヨーク大学大学院映画研究科博士課程中途退学。ニューヨーク大学教員、新潟大学人文学部助教授を経て、現在、立命館大学映像学部教授。映画・映像理論、メディア論。2012年9月から2013年3月まで、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ客員研究員。著書に『ハリウッド100年史講義 夢の工場から夢の王国へ』(平凡社新書、2001年/新版2017年)、『日本映画はアメリカでどう観られてきたか』(平凡社新書、 2005年)、『大人のための「ローマの休日」講義 オードリーはなぜベスパに乗るのか』(平凡社新書、2007年)、『映像論序説 〈デジタル/アナログ〉を越えて』(人文書院、2009年)、『制御と社会 欲望と権力のテクノロジー』(人文書院、2014年)。編著に『映像と批評ecce[エチェ]』1~3号(2009年~2012年、森話社)、訳書にD・ボードウェル、K・トンプソン『フィルムアート 映画芸術入門』(共訳、名古屋大学出版会、2007年)、アレクサンダー・R・ギャロウェイ『プロトコル』(人文書院、2017年)など。

「2021年 『ポスト・アートセオリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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