文学に描かれた「橋」 詩歌・小説・絵画を読む (922) (平凡社新書)

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582859225

作品紹介・あらすじ

文学に描かれる「橋」とは、渡るためのものではなく、人々の心を捉えるために存在するものである。小説の舞台として橋を巧みに利用することで、橋を渡る兵士たちの軍靴の足音が戦争の恐怖を伝え、橋が過去と現在をつなぐ役割を果たすことで、過ぎし日と、いまを見つめる登場人物の心の葛藤が深く投影される。
「橋」の世界が両岸を分けつなぐとき、文学はいきいきと動き出す。

感想・レビュー・書評

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  • そこに橋が登場する意味、橋の表す心情や状況をひろい集めたおもしろい一冊。
    現実に自分が渡るときは9割くらい「いい眺めだなー」で終わってしまうけど、文学においてはそんな単純な話ではないのだ。
    隅田川の新大橋は芭蕉がその工事を見ながら句に詠み、広重が絵に描き、それをゴッホが模写している。ランボーらが表現したのは、日常の風景に溶け込んだ美しいパリの橋。近松門左衛門の「名残の橋尽し」は橋の名を次々と挙げて心中しようとする男女の心と重ね合わせている。
    また、戦争のさなかの橋、彼岸との境界としての橋。さまざまな考察が現れて興味深く読んだ。

  •  橋という素材を中心に古典から現代文学、その中には海外の文学を含む作品を見渡したエッセイである。橋は異郷との境界にあり、それを結ぶ施設である。だから、そこを渡るときに起きる緊張感とか、逆に脱力感といったものは文学の素材になりやすい。
     本書は筆者の読書歴に基づき、文学の中で橋がどのように捉えられているのかを綴ったものであり、本書自体も筆者の橋に対する概念を綴ったもので、読者にとっては重層的に橋とは何かを考えさせるようになっている。
     私は橋が人工的な越境手段であることに以前から興味を持っていた。橋を架けるということは異郷に向かう努力と願望の象徴であり、架橋によって果たされる利益もあれば、逆に不利益もある。経済的な方面だけではなく、精神的な面にしてもこのことは大きい。
     私にとって橋を渡るとはどういうことなのだろう。それを考え直させてくれた。電車や車で通過していると分からない何かがある。少々遠回りでも橋を渡って歩く経験を積まなくてはなるまい。

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著者プロフィール

1944年福島県生まれ。法政大学卒業。文学座、劇団雲に研究生として所属。その後、美術雑誌『求美』、読売新聞出版局などの編集者を経て、エッセイスト、俳人に。俳号・磯辺まさる。99年第4回藍生賞受賞。俳誌『ににん』創刊に参加する。著書に『描かれた食卓――名画を食べるように読む』(生活人新書)、『江戸俳画紀行――蕪村の花見、一茶の正月』(中公新書)、『巨人たちの俳句――源内から荷風まで』『昭和なつかし 食の人物誌』(ともに平凡社新書)がある。

「2019年 『文学に描かれた「橋」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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