学校に入り込むニセ科学 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 290
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582859256

作品紹介・あらすじ

エセ科学を広める右派教育団体、親学、EM菌、水からの伝言、肉食悪者説、誤った脳科学……教師や生徒の善意を悪用し、学校教育に侵入するニセ科学を第一人者が一刀両断。

感想・レビュー・書評

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  • 水からの伝言やEM菌については、この本を読んで初めて知りました。自分も子ども達も、そういう授業を行う教師に担任をしてもらわなくて良かったというのが率直な感想です。

    私達の人生に対して影響力を持つ教師や政治家などに、ニセ科学の信奉者が多数いることに驚きました。
    また、ゲーム脳や白砂糖有害説などを、テレビ番組でとりあげられ、書籍にもなっているので、何となく本当だと信じていたことが、実はニセ科学だと知りがっかりしました。

    著者は、水伝やEM菌の信奉者達、特に教師集団に対して批判的です。その人達を批判している割合が多いのですが、それだけ危機感を抱いているのでしょう。
    確かに、教師が、根拠のない嘘を闇雲に信じて、子ども達に教えていると思うと恐ろしい話です。
    ニセ科学に限らず、いろいろな価値観に対しても、人を教える立場にある者はニュートラルでいるべきです。

    自分も、科学リテラシーを高め、いろんな側面から考えるようにすることが大事だと思いました。どんな説でも賛成派と反対派があので、なるべく両方の意見を知ることが必要ですね。
    そうだとすると…この本についても、著者の意見だけでなく、ニセ科学信奉者達の意見も聞いてみるべきかもしれません。

    私が一番興味を持ったのはかけ算の順序強制問題です。子どもがかけ算を習った時から疑問に思っていました。どうして、ab=baという法則があるのに、それを否定するのか。やっと原因が分かりました。こんなくだらない理由で、子どもに嘘を教えないで。ab=baは法則です。abとbaで意味が違うなんてナンセンスです。

    このかけ算の順序強制問題は、最後の一章分に簡単に書かれていただけですが、このような「その他のニセ科学」についてもっと知りたいと思いました。

  • ニセ科学を否定するのって、本当に苦労します。なんでこんなことも分からないのだろう?では、ニセ科学に心酔している人を説得することができないからです。そんな人たちを論破できる知識と、様々なニセ科学について知ることのできる本です。

    それこそ、ユリ・ゲラーから「水からの伝言」に至るまで。
    あと、ニセ科学ではないけれど、学校にはびこる悪しき慣例である、かけ算の順序強制についての記載もあります。

    私としては、死後の”念?”の存在を信じてはいるので、他人のことをとやかく言えないのかもしれませんが、人に迷惑を掛けない程度の、気持ち?だと思って別に置いておきます。

  • 水の似非話やEMはともかくとしても、右脳左脳やゲーム脳、あるいは腸の長さの話なんかは、文字通り学校という教育現場に入り込んでしまっている。近年の大規模言語モデルとのチャットでも感じることだが、それっぽくてモワッと分かった気になる文章が出てきたとき、それを論理的に正していくことは簡単ではない。それゆえに、知的かつ専門的な見解がむしろ鍛えられる。逆に言えば、単にそれっぽい感じだけを持つ文章の方が誤解とはいえ分かりやすい(気がする)という点で広がるスピードは桁違いに速い。SNSのデマもしかり。発言・発信する方が悪いのに、騙される方もまた悪いという、人生の不都合な真実がまたここにも。

  • 大変良い勉強になりました。何度も読み返したいです。

  • 非常に参考になりました。
    うっかり偽科学、エセ科学に搦め捕られないよう気をつけたいと思いました。

  • この著者が以前に書いた本、「水はなんにも知らないよ」も読んだことがあります。当時、けっこう流行っていた「水はなんでも知っている」とかいう本に対する批判の内容で、実は勤め先で、この「なんでも知っている」の方を読んでいる人、正しいと信じている人が結構いるのに驚いて、両方を合わせ読んだのでした。
    今回の本は、その内容も含めて他のニセ科学についても取り上げ、かつ、それが学校という教育現場で先生の手により正しいと、子どもたちへの教育効果があると信じられ教材に取り上げられてきたことを合わせて取り上げているところに興味を惹かれました。

    取り上げられていたテーマは、「水からの伝言」「EM」「TOSS(Teachers' Organization of Skill Sharing)」「ゲーム脳を始めとしたニセ脳科学」「食育教育」「原発教育」、その他多々。一つ一つのテーマの内容、ニセ加減、などは個々に知っていることが多かったですが、それが実際に、教えるための指導要領案がTOSSによりサイト公開され、学校で先生たちに取り上げられ、正しいと信じられて教えられてきたこと、授業展開に活用されてきたことが驚きでした。

    が、そういえば実際に子どもが小学生のころ、学校にPTAの用で行ったときに、職員室前の廊下に堂々と、水に、植物に良い言葉をかけようという掲示がされていたのでした。当時、見てすごくびっくりしたのでした。

    大元の考えを広めた人達は、本当にそれを心から心底信じてのことなのか、それとも内心ではその怪しさを認識しつつ、隠しているのか、そこはわからないのですが。少なくとも、先生たちは子どもたちのためになる、「科学的」に正しい内容と信じて教えているところが、なかなか厳しい。一つ一つを、正しいかどうかファクトチェックするのは大変なことではあるし。正直なところ取り上げられているテーマのうち、「天然」「無農薬」あたりは、自分もこだわってきたものだし。

    現状でも「コロナ」「ワクチン」「マスク」などや、「スマホ脳」「AI」など、科学的に正しいかどうか、根拠があるかどうか、きちんと調べ尽くしたりはしていないのが我ながら実情です。

  • 水からの伝言などのニセ科学について、めちゃくちゃ詳しい本です。
    考え方云々以前に、
    「こういう危険な実践があるのだ」
    ということを知るだけでも意味があると思います。
    教育に関わる全ての人に読んで欲しいです。

  • 自分と相対する考えのものを意識して取り入れ、考える

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著者プロフィール

左巻健男
1949年生まれ。東京大学非常勤講師。元法政大学教授。『RikaTan(理科の探検)』誌編集長。
千葉大学教育学部理科専攻(物理化学研究室)を卒業後、東京学芸大学大学院教育学研究
科理科教育専攻物理化学講座を修了。
専門は理科教育、科学コミュニケーション。
主な著書に、ベストセラー『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤ
モンド社)ほか、『学校に入り込むニセ科学』(平凡社)、『おもしろ理科授業の極意: 未知への探究で好奇心をかき立てる感動の理科授業』(東京書籍)、『面白くて眠れなくなる物理』(PHP研究所)、『中学生にもわかる化学史』(筑摩書房)などがある。

「2022年 『世界が驚く日本のすごい科学と技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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