太陽の地図帖 地獄絵を旅する (別冊太陽 太陽の地図帖 20)

制作 : 加須屋誠 
  • 平凡社
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本棚登録 : 54
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (95ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582945560

感想・レビュー・書評

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  • 太陽の地図帖 地獄絵を旅する。加須屋誠先生の著書。悪いことを地獄に落ちるとか、あんな奴は地獄に落ちてしまえとか、日本においては地獄という言葉が使われることがあるけれど、地獄について真剣に考えたことのある人は現代日本人では多くないと思います。でもかつての日本人たちは、地獄について真剣に考え、多くの地獄図を描いた。それらの地獄図を紹介、わかりやすく解説した良書です。

  • 『地獄草紙』『北野天神縁起絵巻』など、今に残る地獄絵図とそれを所有するお寺の紹介をしている一冊。
    場面場面の絵面は壮絶で、現代人でも目を背けたくなるようなものが多数。なのだが、清少納言の時代(=平安期)から、すでに絵空事だと認識されていた…ようなことが書かれていて愕然。時代ごとの認識について、改めて知りたいと思った。

  • 国宝「地獄草紙」「北野天神縁起絵巻」「聖衆来迎寺本六道絵」を紹介する【地獄八景】と、「餓鬼草紙」「病草紙」「九相図」を紹介する【餓鬼、病、死体の世界】の二本立て。

    【地獄八景】
    源信『往生要集』に初めて地獄が描写され、人々が地獄に強い忌避感と興味を覚えたところが、地獄絵のはじまりらしい。
    バラエティに富む地獄の有様を見ていると、絵師の想像力の豊かさに驚かされる。
    罪によって堕ちる地獄が決まっているのだが、「水で薄めた酒を売った者」「桝目の計量をごまかし、不当な利益を得た者」など、現代とは罪の基準が異なるところも興味深い。
    地獄絵が現実世界の写し鏡だと考えるなら、現代の地獄絵は更におどろおどろしいものになりそうである。

    【餓鬼、病、死体の世界】
    「餓鬼草紙」「病草紙」はどこかコミカルなので気楽に見られるが、「九相図」はつらい。余りにリアリティがあって、生理的嫌悪感に襲われる。後味が悪くなってしまった。

  • うう、気持ち悪かった。ヨーロッパ中世の、輪切りにした手とか胴を几帳面に描く絵と同じ気持ち悪さ。絵巻物の本はいくつか読んでいるけど、部分部分のアップは初めてで、こんなにイヤーな事が描かれてるとは。今回取り上げられた絵巻はどれもあまり好きではないです。

  • おとなの「旅」の道案内、太陽の地図帖シリーズの1冊。
    「地獄絵」を追って日本を旅します。そしてこの旅はまた、地獄を巡り、地獄に対する人々のイメージを追う旅でもあります。
    *中には、かなりグロテスクで凄絶な絵もありますので、ある程度、覚悟して手に取られた方がよいかと思います。

    地獄絵の成立は古代にまで遡ります。最古の地獄絵は、東大寺二月堂本尊の光背に刻まれているそうです。これが8世紀。下って12世紀、中尊寺の大般若経に地獄の獄卒が描かれているとのこと。清少納言の枕草子にも、地獄絵を見たとの記述があります。芥川龍之介の『地獄変』も時代設定としては似た頃でしょうかね。
    こうした地獄絵・地獄の観念の元になっているのは、恵心僧都源信の『往生要集』(985年)。末法思想のただ中です。念仏によって末法を乗り切るよう、教え諭した書でありますが、一方で、これに従わなかった場合には、こうなるぞ、という克明な描写がなされています。
    地獄道・餓鬼道・畜生道・阿修羅道・人道・天道、以上併せて六道。ここを逃れて極楽往生を遂げるためには、念仏に頼るしかない、というのです。
    この教えが広まっていくと、人々は極楽にあこがれる一方で、怖ろしい六道とはどのような姿なのか、という思いも抱いていきます。斯くして、中世以降、地獄絵は大きく発展していくのです。
    源信の教えには、閻魔大王は出てきません。これは、日宋貿易を機に中国から伝わった十王(閻魔を含む、冥界の10人の王)の説話が六道思想と結びついたものです。
    これにさらに、各神社仏閣の縁起などが織り込まれた形で、地獄絵が各地で描かれ、地獄思想が人々に身近なものとなっていったようです。

    さて、地獄絵を通して、実際に地獄巡りをしましょうか。
    三途の川では死者の衣服をはぎ取る奪衣婆がいますね。
    三途の川には渡り方が三通りあって、善人は橋を渡り、普通の人は船に乗って、悪人は激流に投げ込まれます。地獄に着く前に、すでに待遇が違うのですね・・・。
    地獄では、罰の種類もさまざまで、よくこんな罰を思いついたなぁと感心させられるほどです。獣に食われるとか、獄卒に刺し貫かれるとかはともかくとして、水を飲もうとすると火に変わってしまっていつまでも渇きがいやされない、とか、素手で煮えたぎる鉄を掴まされる、とか、何かもうすごいイマジネーションです。罪の分類も細かくて、「旅人に酒を飲ませ、ものを盗んだり殺したりした者」とか「水で薄めた酒を売った者」とか「枡目の計量をごまかしたもの」とか、何だか妙にピンポイントです。こう細かいと、むしろ、身に覚えがある人は、「あ、オレ」とぎょっとするかもしれません。
    絵師たちの筆も非常に熱が籠もっていて、火焔の熱気や、獄卒の怒声や、毒虫の針の鋭さも感じられるようです。

    地獄は六道の最下層にあるもの。これは地底にあるとされていて、地獄の中も8つに分かれており(八大地獄)、一番下の無間地獄は、二万由旬(由旬は古代インドの距離の単位、約7kmとされています)地下にあるそうです。何だか変に具体的ですねぇ・・・。・・・ん? 地球の直径が約1万2千キロだから、二万由旬≒14万キロ、地球突き抜けてるんじゃないかって・・・?
    いやいや、そんなことを言ってはいけません!! 屁理屈をこねると地獄に堕とすぞ!なんて言われたら大変!!! そのくらい、とんでもなく深い、ということです。

    そんな深い深ーい地獄にもしも堕ちてしまったら、出てくるには、自身の信心や子孫による供養が大切とのこと。
    ひぃーん、悪いことはしないから、閻魔様、地獄には落とさないでくださいよう・・・。

    さて、何とか現世に戻って参りました。
    しかし、この本には、もう1つ山があるのですねぇ・・・。
    すなわち、現世を描いた「餓鬼草紙」、「病草紙」、「九相図」。このうち「餓鬼草紙」は、餓鬼道に堕ちた者が、一部、密かに現世に住み着いているさまを描いたものです。餓鬼は、決して満たされない飢えを人のおこぼれで満たそうとする哀しい存在です。これは、ある意味、想像の中ですが、「病草紙」、「九相図」となると、これは現実にかなり近いものと見た方がよいでしょう。実際に様々な病に苦しむ人々、生前美しかった人が死後に辿る様相が、相当リアルな筆致で描かれています。実際に病に罹った人、朽ちていく人を見ていなければ描けない、と思います。
    まるで、地獄のような苦しみ。現世こそが地獄、いや、地獄は現世の写し絵だったのかもしれません。

    さまざまに考えさせられる1冊です。


    *うーむ、これはいずれ『往生要集』を読んでみなくてはなー(--)。『神曲』と併せて読んでみたりすると興味深いのですかねぇ・・・。

  • 初、太陽の地図帖。「別冊太陽」から生まれた姉妹篇でテーマで旅をするのだそうだ。厚さも内容もお姉さんの半分ですが価格は手頃で手に取りやすい。これからのテーマに期待大です。

  • 古今東西問わず、人々は地獄絵に何故惹かれるのかというと、現実の投影に他ならないからなんだよな。
    もちろんS心もねw
    しかしこんだけヒデェのをいっぱいよく考えたよなあ、昔の人って。
    北野天神さんのが見たいなあー。

  • これ、卒論書いてる時に手元にあった
    ら良かったな〜
    絵の資料が豊富でなかなか見応え
    があります

  • 細野晴臣が何を語るか興味津々です。。。

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    「「地獄草紙」「餓鬼草紙」「北野天神縁起」など、地獄絵の名品をふんだんに紹介しつつ、恐ろしくも魅力的な「地獄」の世界を旅する一冊。文=細野晴臣、辛酸なめ子ほか。 」

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