江戸三〇〇年「普通の武士」はこう生きた: 誰も知らないホントの姿 (ベスト新書 92)

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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584120927

感想・レビュー・書評

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  • サムライ。
    侍は忠実な企業戦士サラリーマンか。
    そして、日和見主義もいれば窓際もいて。

    武士道について、読むなら新渡戸稲造よりも井原西鶴か。

    まあ、確かに映画『ラストサムライ』は随分なステレオタイプですよね。

  • 歴史に残ることと言うのは大抵特殊なことなので、普通がどうであったかと言うことを知るのはなかなか難しい。私なども中世や江戸時代に庶民が飲んでいたお茶というのはどんなのかと言うことを知りたいのだが、なかなかこれが核心に迫ることができないでいる。
    歴史といってもさすがに江戸時代まで来るとさすがにいろんな日常の記録が残り始めて来るので普通の武士の生活も何となく判るようになってくる。
    いろんな記録から一般的な武士の姿を描いてみると、小説や時代劇などで構築された武士像とは違った武士の姿が見えてくるのである。
    本書は近江国を想定した7万石の藩に仕官している石高50石の武士を想定しごく一般的な武士というのはこのようなものであったと言うところから解き明かしてくれる。ふーんそうだったのという話も多い。
    後半になると武士のファッションだの礼儀作法だのと言ったことがややマニアックに書かれており少々退屈な記述になる。そのためかみんなのレビューでの評価はあまり高くないのであるが、ざっと一読する価値はありましょう。

  • 時代劇にでてくるような禄高があり、綺麗な武士は一握りで、ほとんどは貧しい武士。彼らがどのような暮らしをしていたか、興味があり、それなりに面白かった。ただ、どうも感情的に攻撃すると思える文章と相性がよくなかった。たとえば、新戸部稲造の武士道への批判。
    美化しすぎている点についての丁寧な訂正と、正しい点の評価が整理されていると読みやすかったと思う。

  • 天下の覇権を握った有名人の生活が本で紹介されたりすることはありますが、多くを占めたはずの「普通の武士」はいったいどのような生活をしていたのだろうと昔から疑問に思っていたのですが、この本がそれらの多くを解決してくれたように思います。上級武士と言われた200石が現在の価値にすると数千万円の年収というイメージが掴めて良かったです。

    以下は気になったポイントです。

    ・幕末は譜代筆頭の彦根藩、親藩の福井や尾張までが官軍の戦闘に立った(p30)

    ・源頼朝は平家のようにに京を乗っ取るのではなく、関東を京都と並ぶ権力中枢にしようとした、これを期に、日本は朝廷・公家の国と、武家の国の二重構造になった(p37)

    ・徳川幕府の人事で印象的なのは、石高が多い大名には権力を与えないこと、御三家の国政への口出しは許されなかった、将軍の近親者も権力から排除、吉宗の孫である松平定信は例外(p42)

    ・秀吉の天下統一後に、家康が関東移封を嬉々として受け入れたのは、先祖代々の土地から離れるのを嫌がっている家来がいるにも拘らず、徳川が自立するために必要と考えたから(p43)

    ・高度経済成長期時代の社長や部長の給料は意外と低かったが、接待を受けること、接待費を使うことには寛容であった(p46)

    ・江戸時代の武士は末期を別にすれば、本格的な教育を受けていない、19世紀になって文章能力だけは向上したが、地理歴史や科学的な知識はなかった(p63)

    ・江戸時代の日本全体の石高は3000万石、そのうち2250万石が300藩の領地、400万石が天領(直轄地:大坂、京都、長崎、堺、奈良、大津等)と、300万石が旗本領、50万石が朝廷や寺社領(p66)

    ・小選挙区と同等の15万石は、米沢、松山、高田(上越)、姫路、小倉であり、それ以上のものは28しかない、1万石は農村部の小学校2学区程度(p67)

    ・1868年に明治新政府が旧幕領に、府・県を設置したのに対して、旧大名領に藩の呼称を用いたのが公称のはじまり、それは廃藩置県の1871年まで使われた(p69)

    ・大名の殆が愛知県人を始めとする東海人で75%程度、土着の大名として幕末まで続いたのは、島津・大村・松浦・鍋島・大関・大田原・相馬・南部・津軽・松前の10氏のみ(p77)

    ・150石もあれば「上士」とよばれる高級武士で、侍大将として立派は前立てがついた兜をかぶり、旗指物を許されて家来も持てる身分である(p83)

    ・1869年の版籍奉還とともに、旧公卿と旧藩主が華族、旧幕臣、藩士、神官等が士族とされた、士族の下層(足軽等)を卒族としたが、反対運動もあり72年に世襲の者は士族、一代限りは平民となった、士族は189万人で1873年の人口(3360万人)の5.6%(p91)

    ・城も含めてそれなりの風情が残っているのは、彦根・弘前・松江である(p96)

    ・50石の武士の年収(税引後)は、四公六民であると取り分は20石、一両=1石(150キロ:5万円)とすると、年収は100万円程度、諸物価を基準にすると1両=6000文=15万円とすると、300万円、庶民の賃金から考えると、600万円という考え方もできる(p104)

    ・江戸時代の平均寿命は30歳台、これは乳幼児の死亡も含むので、長生きすると平均的には50歳前後であり、70歳を越えることも珍しくなかった(p132)

    ・2年ごとに閏月があり、ある年は1年=380日、ない年は350日である、天保元年の大小暦では、小の月が1,2,5,6,9月、大の月が3(閏3月あり)4,7,8,10,11,12月である(p136)

    ・水引の色は、吉事には金銀、紅白を用いて、凶事には白、青白、黒白、黄白、を使う、帯紙は、赤・紅・金は吉、銀・紺は凶、水引の本数は、奇数(5,7)が祝い事、凶事には偶数(2,4)であった(p211)

    2010/10/3作成

  • 面白い部分や示唆に富むところは少なくないが、どうにも良くない。本にも相性というものがありまして、時々出てくる感情むき出しの文が私にはいただけないのである。

  • 扱ってるテーマとしては絶対に面白いはずなのに・・・
    多分、著者があまり面白くないんだろうなと。読んでいて退屈である。

    資料として何かしら必要性を感じればまた手に取るかもしれない。

  • [ 内容 ]
    現実の武士は、働きもしないのに威張り散らし、賄賂や役得などで姑息に利益を得ることに罪悪感を持たず、暇でほかにやることがない割りには勉強もしないし、いざ鎌倉という時には戦わなくてはならないのに、その心がけも実際的な準備もしていないというのが実態だった。
    本書では、なにも格好はよくないが、それなりの矜持を抱いていた普通の武士の世界を、もっとディテールにこだわって観察していく。

    [ 目次 ]
    「普通の武士」、その偽らざる姿
    時代によって武士も大変身
    武士の教育水準は低かった
    藩と大名をめぐる常識を疑う
    武士道どころでなかった下級武士の悲惨
    出世すると苦しくなる武士の懐具合
    諸々の行事を大事にする武士の生活
    サムライ・ファッションの美しさ
    日本刀はなぜ神聖なのか
    武士の立ち居振る舞いを見習うには
    新渡戸「武士道」の外人向け安直さ
    サムライとは禅の心を体現した武人

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著者プロフィール

1951年、滋賀県大津市に生まれる。東京大学法学部を卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。北西アジア課長、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。在職中にフランスの国立行政学院(ENA)に留学。現在は徳島文理大学大学院教授を務めるほか、作家、評論家として活躍中。著書は150冊を超え、ベストセラー『江戸三〇〇藩 最後の藩主』(光文社新書)のほか、近著に『365日でわかる世界史』『365日でわかる日本史』(清談社Publico)、『日本の総理大臣大全 伊藤博文から岸田文雄まで101代で学ぶ近現代史』(プレジデント社)、『日本人のための日中韓興亡史』(さくら舎)、『歴史の定説100の嘘と誤解 世界と日本の常識に挑む』(扶桑社新書)、『令和日本史記 126代の天皇と日本人の歩み』(ワニブックス)、『誤解だらけの韓国史の真実』『誤解だらけの平和国家・日本』『誤解だらけの京都の真実』『誤解だらけの皇位継承の真実』『誤解だらけの沖縄と領土問題』(イースト新書)、『消えた都道府県名の謎』『消えた市区町村名の謎』『消えた江戸300藩の謎 明治維新まで残れなかった「ふるさとの城下町」』『消えた国家の謎』(イースト新書Q)など、日本史、西洋史、東洋史から政治、経済、文化など多方面でリベラル・アーツを重視する斬新な視点で話題となる。

「2022年 『家系図でわかる 日本の上流階級』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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