放射線医が語る被ばくと発がんの真実 (ベスト新書 358)

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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584123584

感想・レビュー・書評

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  • チェック項目12箇所。放射性物質は水銀のような重金属とは異なり、体内に取り込んでも代謝や排泄によって体の外に排出されます、これは重金属との決定的な違いです。カリウム40によって、年間0.2ミリシーベルト程度の内部被ばくが起こります、100年生きると、20ミリシーベルトにも達します、野菜を食べるほど、内部被ばくが増えるわけですが、野菜はがんのリスクを大きく減らすことが知られています。チェルノブイリでは、食品の摂取制限が行われていませんでしたから、セシウムによる内部被ばくも起きてしかりです、しかし、何らかの病変があったかというと、セシウムが原因と考えられる発がんは確認されていません、ヨウ素による小児甲状腺がんがわかったのみで、セシウムによる影響は認められていないのです。そもそも、がんの原因はなんでしょうか、おおざっぱにいいますと、3分の1がタバコ、3分の1がお酒や食事といった「タバコ以外の生活習慣」です、残りの3分の1は「運」といってもいいでしょう、どんなに理想的な生活を送っても、がんを完全に防ぐことはできません、いまの福島での放射線量は、健康に影響のない低いレベルに落ち着いています、今の放射線量のもとで暮らしても、がんは増えないと申しあげます。アルコールそのものに発がん性はありません、しかし、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドに発がん性があります。原爆で100ミリ~200ミリシーベルトの放射線を浴びた集団は、浴びていない集団に比べてがんになるリスクが1.08倍でした、生活習慣によるリスクと比較すると、1日1箱タバコを吸うご主人を持つ奥さんの受動喫煙による発がんリスクや野菜嫌いな人の発がんリスク(野菜を食べる人と比較して1.06倍)より、わずかに高いレベルです(喫煙は1.6倍、毎日3合以上の飲酒も1.6倍)。科学的には100ミリシーベルトより低い被ばくで発がんの増加は確認されていません、たとえリスクがあったとしても、検出できないくらいわずかなものだということです。広島の女性の平均寿命はなぜ日本一か(平成17年)……無料で医療を受けられる効果は絶大です、特に、被ばく量の少ない”入市被爆者”(原爆投下の後に市内に入った被爆者)の場合、充実した医療が効果を生んだ結果、円国平均より長生きになりました。当時、放射線に関する知識は一部の専門家以外は持っていませんでしたから、原爆投下後も、広島・長崎の人たちは放射線が「危ない」「怖い」ものとは考えていませんでした、放射線に怯えながら、不自由な避難先で暮らす、ということがなかったのです。細胞分裂の盛んな子どもでは、遺伝子が放射線の影響を受けやすく、がんができやすいこともあり、小児の甲状腺がんがふえてしまったわけです。セシウムは、カリウムに近い「アルカリ金属」で、体内に取り込まれると、カリウムと同様、全身の細胞にほぼ均等に分布します、外部被ばくとほぼ同様の「全身均等被ばく」になります、1ミリシーベルトの被ばくといったら、人体への影響は一緒です。

  • 2013/05/18図書館から借用

    正しい知識が一番

    イイカゲンや出鱈目な事を言っていた人は実名で書いて欲しかった

  • 資料ID:92120071
    請求記号:080||B
    配置場所:新書コーナー

  • 地震による原発事故以来、生活にいろいろな影響を及ぼしている放射能。いくぶん落ち着いてきたかにもみえるが、いまだ故郷に帰れない人もたくさんいるし、ものすごく敏感な反応を示す人とそうでもない人がいて、本当のところはどうなのか?と思っていたが、書店でこの本をみつけ読んでみた。放射能に関したくさんの本が出ていたが初めて手に取る気になった本だ。それは題名から、事故での放射能の身体的影響はどれくらいあるのか?という疑問に答えてくれそうな気がしたからだ。言いかえればさほど気にすることではない、というのを言ってほしい、それを活字で確認できるのでは?という期待からだ。

    放射能を気にして故郷を離れ西に移住したとか、そういう行動をとるのは「正確な情報の欠如」からだという著者。身体的影響はむしろ、環境の変化などのストレスなどの方が大きいとも言う。ヨウ素、セシウム、ストロンチウムなどの特性、半減期などをわかりやすく解説し、広島・長崎・チェルノブイリの例も交え、身体的への影響はどうなのか?を解説している。放射能問題とは「がんになるかどうか」だと言う。身体に影響のある基準値に対して、いろいろな考えがあるようだが、そして残土処理の問題は解決していないが、基準値に対して著者は現在の状況は安全だと言っている、と受け止めた。

    もちろんリスクがゼロではなく、除染は必要だし含有率の高くなりがちな山菜やきのこは避けるなどの方策は必要だが、リスクと折り合いをつけつつ生活を平常に戻す必要性がある、と言っている。放射能の流れの図上でまさに風にながれた辺縁に住んでいるのだが、ほとんど無頓着に生活していて、まあいいではないの、というのを確認した状態。しかし同じこの本を読んでも、安全を確認したいと思って読む人と、いや危険だろうと思って読む人とでは読後感はちがうだろう

  • 発癌に主眼を置き、被曝によるリスク上昇を中心観点として論が進む。一度に大量の被曝を受けた際に問題となるが、重金属と異なり、蓄積しにくい性質を持つ点。放射性元素の種類により異なる発癌のリスク。チェルノブイリでは“隠蔽”による被害拡大が大きかったという点。などなど、風評に惑わされないための示唆に富む内容でした。

  • 放射線防護の立場から、念のため、100ミリシーベルト以下のわずかな被曝でもがんが増えると仮定する「放射線閾値なし仮説」を国際放射線防護委員会は提唱している。被爆量が少なければ少ないほど良い、というポリシーだ。
    さらにICRPは「10ミリシーベルトではがんは増えない」報告書の中で明言している。
    100ミリシーベルト以下では発がんのリスクは極めて低い。私は福島ではがんは増えないと申し上げる。
    こうした著者の指摘には批判がある所だが、長年にわたり放射線医としてがん患者の治療に携わってきた専門家の見解は重要だと思う。

  • 自分も「放射脳」になってたなぁ...そう気付かされた一冊。「不安」、「イメージ」が先行して、冷静さを欠いていたなと思った。疑問に感じる点が無いわけではないけど、データや論拠に基づいた説明は説得力があるし、平易な文体で素人の自分にも理解しやすかった。放射性物資との向き合い方に悩む人にはかなりお勧め。

  • 放射線医、中川恵一先生が2011年12月に出された本。
    なぜだか、御用学者扱いされているらしいけども、
    原発や放射線の危険を煽らなければ排除される世の風潮はどうもおかしいと思う。

    本書の内容は、冷静に(科学的に)被爆と発がんの関連について論じた本。
    分かりやすく書かれていて、十分とは言えなくとも、網羅的で読みやすかった。

    原発事故を引き起こした関係者の責任は厳しく問われるべきとしながらも、事故後に重要視されるべきなのは「正確な情報の欠如」と解説しておられる。

    現在(本書は2011年12月に出された本だが)のレベルでは放射線によ発ガンの可能性はないと思ってよいとのこと。それよりも、恐怖を煽ることや、無理矢理に避難をさせることのストレスの方が健康被害を拡大させるという点について、「チェルノブイリ事故25年 ロシアにおける影響と後遺症の克服についての総括および展望1986~2011」を引用しつつ解説されている。

    上の報告では次のような反省が記載されている。
    ■『チェルノブイリ原発事故がおよぼした社会的、経済的、精神的な影響を何倍も大きくさせてしまったのは”汚染区域”を必要以上に厳格に規定した法律によるところが大きい。』
    ■『精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の破壊、経済活動の制限といった事故に伴う副次的な影響の方が、放射線被ばくより遥かに大きな丼外をもたらしたことが明らかになった。』
    ■『チェルノブイリ原発事故の主な教訓の一つは、社会的・精神的要因の重要性が十分に評価されていなかったことである。』

    また、あくまでも「不要な被ばくはあくまで不要」として、如何に被ばくを避けるかというアドバイスもある。
    最後に、ちまたに広がっている噂についての見解も、わずかながら頁を割いて解説しておられる。

    全体的に読みやすく、科学的に論を展開してあるので信頼もできると思う。
    個人的な思い込みで不安を煽る書とは違う。

    この本では原発の存在の是非は論じられていない。
    原発に関していえば、世にあふれているのは「正確な情報」ではなく、何となく先導的なもののように感じる。
    反原発運動も良いのだが、それが余計な不安の押し売りになってはいけないと思う。

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    【内容紹介(amazonより)】
    東大病院の放射線医としてがん患者の治療に長年携わってきた著者が、被ばくと発がんリスクについて真摯に語り下ろす。子供たちの健康、内部被ばく、食料汚染、ホットスポット問題など貴重な情報が満載。

    【内容(「BOOK」データベースより)】
    福島第一原子力発電所の事故以降、10ヵ月以上が経つが、状況はいまだ予断を許さない。「内部被ばくは、外部被ばくの600倍危険だ」「福島の野菜は食べてはいけない」「西に逃げろ」…。様々な「専門家」たちの意見が飛び交い、私たちを不安に駆り立てる。本書の著者は、長年にわたり放射線医としてがん患者の治療に携わってきた。被ばくと発がんリスクの問題について語るに最も相応しい人物といえよう。さらに事故後、福島で行った調査や、広島・長崎、そしてチェルノブイリのデータ分析も踏まえて導いた結論は、大きな説得力をもつ。福島と日本の将来に希望が見いだせる一冊である。

    【出版社からのコメント】
    福島第一原発事故から10ヵ月が経とうとしています。政府は冷温停止状態に入ったとの発表を行いましたが、地元の住民の方々の帰宅問題やホットスポット、食べ物の汚染など問題は山積しており、私たちの不安はまだまだ解消されていません。
    「内部被ばくは、外部被ばくの600倍危険だ」
    「福島の野菜を食べてはいけない」
    「西へ逃げろ」……。
    原発事故以来、さまざまな「専門家」たちの意見が飛び交い、かえって不安と混乱は増すばかりです。今最も必要とされるのは、正確な情報ではないでしょうか。
    本書の著者は、長年にわたって放射線医としてがん患者の治療に携わってきました。被ばくと発がんリスクの問題について語るに最も相応しい人物といえます。さらに事故後、福島で行った調査や、広島・長崎、そしてチェルノブイリ原発事故のデータ分析も踏まえて導いた結論は、大きな説得力をもちます。
    2011年、ロシア政府はチェルノブイリ原発事故25年目にあたり、総括報告書を発表しました。そこには住民の避難と健康被害の実態の分析がなされており、今の日本にとって示唆に富む内容です。本書に、その一部を翻訳掲載しています。
    原発事故以来、私たちは日常生活においてさまざまな「選択」を迫られてきました。本書が、選択を迫られるようなときに、一人でも多くの方にとって判断材料のひとつとなることを願います。
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    【目次】
    第1章 放射線の真実
    第2章 発がんリスクの真実
    第3章 広島・長崎の真実
    第4章 チェルノブイリの真実
    第5章 放射線の「国際基準」とは
    第6章 福島のいま、そしてこれから
    第7章 非常時における被ばく対策
    第8章 「被ばくと発がん」の疑問・不安に答える
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  • 私は御用学者の言うことは信じてはない。
    しかしながら、彼らがどういうことを書いているのか、知っておく必要があると思った。
    この本で一貫しているのは、福島第一原発事故で放出されている放射能は心配はない、と言う事だ。
    チェルノブイリ事故で子供の甲状腺がん以外のガン出ていない、そう言うデータがないと言い切っている。
    しかし、「データーがない」というのは、データーが十分にあった上でのことではなく、ただ単に、そういったデータがない・活用できるデーターをとっていなかっただけである。
    つまり、十分なデータがあった上での結論(=甲状腺以外のガンはない)ではない。これを見抜けなければならない。

    そして、バンダジェフスキー博士や、ヨーロッパの医師や専門家の本や、情報を読めば、ICRPが認めていないだけで、実はそういったデータがある。

    その他、内部被爆について説明はしているものの、外部被曝と内部被曝をごっちゃにして、安全であると言いたげな内容であると私は思った。

    東大の教授であり、放射線医としてキャリアもあるひとであるから、福島の人たちは彼の書く内容を信じるであろうが、この本を読む場合は、異なる見方、反対の説を唱える人の本も読むことが、バランスが取れていていいと思う。

    本日8月29日に、ノーベル平和賞団体(IPPNW)が、子どもや妊婦の被ばく線量を年間1ミリシーベルト以下に抑えることなどを日本政府に勧告したが、中川氏は、これをどう考えるのだろうか。

  • 放射線の影響について、丁寧に記された本。

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著者プロフィール

1960年生まれ。東京大学医学部卒業。東大医学部付属病院放射線科准教授兼放射線治療部門長。厚生労働省がん対策推進企業アクション議長。

「2023年 『人生を変える健康学 がんを学んで元気に100歳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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