尊敬されない教師 (ベスト新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584124949

作品紹介・あらすじ

教師があまり尊敬されないようになってから、かなり時間が経つ。世の中からあまりありがたい存在だと思われなくなった。一方、昨今の教育現場は、いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、学力低下…と、混乱を極めている。そうするとマスコミや有名識者たちは、その元凶がすべて教師にあると騒ぎ、世論はその風潮に飲み込まれる。はたして、このように諸悪の根源にされるほど、個々の教師はダメになったのだろうか。親は自分の子どもを守るために、教師は自分の矜持を守るために、世論は真実を確かめるために、社会に蔓延する物言いに隠された危険性を世に問いただす。

感想・レビュー・書評

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  • 私が荒れたクラスを教える経験がなかったら、
    この本をあまり高く評価しなかったかもしれない。

    冒頭は、林純次著『残念な教員 学校教育の失敗学』(2015、光文社新書)の痛烈な批判から始まる。
    それを読んでいないが、おそらく生徒の個性を尊重しない、押しつけ教育を強要する教師の批判をしたもののようだ。

    それは正しい、と私も疑いを抱いていなかった。
    が、それは、社会人クラスや専門学校、大学で教えていた時の話だ。
    崩壊に近い荒れた中学校のクラスで教えることで、
    生徒の個性重視が無意味に思えてきた。
    そもそも、やる気のない生徒に教えることはほぼ無理。
    やる気を出させることも、非常に難しい。

    そんな時に頼りになるのが、教師の権威だと、
    この本は主張し、私も同感せざるを得ない。
    教師個人に対する尊敬とか敬意ではなく、
    社会的に裏付けられた教師という職に対する権威だ。

    底辺校以外では、学ぶ姿勢がすでに形成されている。
    その環境では、押しつけではなく、
    個人重視での教育ができる。生徒は学べる。
    でも、底辺校では、学ぶ姿勢が身についていない。
    それをまず教えないと、教科を教えることは難しい。
    これが本当に困難を極めるのだ。

    そこで、なんで先生の言うことを聞かねばならないか
    その根拠として、社会的な権威の裏付けが必要となる。
    ただ・・・そうは言うものの、
    すでに社会的権威は失われている現在、
    個人の力で必死であがいているのが実情。
    権威があれば、もう少し、うまくいった、かな?

  • 著者の諏訪哲二氏は、教育関係の書籍を多数執筆している。ただし、決して読みやすい書き方をしていない。文系の論文調なのであろうか、持って回った書き方をし、注釈をつける。一文だけ取り出して批判されないような書き方でしょう。
    尾木ママこと尾木直樹氏とは、校内暴力や不良が濶歩した1980年代に相当対決している。その頃は、自分が学生の当事者であったため、尾木ママよりだったが、尾木ママの胡散臭さと金八先生のなんともいえないむずがゆさに辟易していたため、プロ教師の会が主張することにシンパシーを感じるようになっていた。
    それから30年あまりたったが、主流はポピュリズムの極みである尾木ママに主体が移っている気がする。その危機感を感じているのであろう。タイミングよく定期的に出版し正論を主張し続けている。ただ、文章をもっとわかりやすく万人受けするような書き方をしないと、せっかくの主張が広まらないでしょう。

  • 作者さんは言う「教師が尊敬されない国に未来はない」。少なくとも社会的には教師は尊敬される存在であるべきだと思う。教師と児童生徒は人間としては平等だが教える者と教えられる者として上下関係はあってよい。教師は保護者保護者へのサービス提供者ではなく互いに尊重し合うパートナーであるべきだ。教師自身(教師出身の某評論家も)も含めみんなして教師を貶めている現代の風潮を憂う。

  • 私には合わなかった

  • 最近アドラーの本を読んだばかりなので、教育について全然違う視点から眺めている本を読み比べるのは楽しい。生徒との関係がいつのまにか商取引になっていたというのは面白い。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  教師への誤解
    第2章  混迷する教育現場
    第3章  子どもたちはなぜ変わったか
    第4章  教育を動かすちから
    第5章  教師が尊敬されない国に未来はない

    <内容>
    埼玉県の高校教師だった著者が、『残念な教師』を読んで書かれた本。同じ教師として、首肯できる部分とそうでない部分がある。自分が現場にいるだけ見えない部分があると思うが…。前半ではご自分の人生が語られる。それは戦後史そのものかもしれない。自分は「産業社会的近代」に生まれ、「消費社会的近代」で教員人生を送っているので、こういう意見はわかる部分と「年寄り的だな」と思う部分がある。ただしっかりと分析はされているようなので、納得はしている。
    まあ、混沌とした時代なので、「いじめ」も「学力」も様々な意見が飛び交い、現場はさらに混乱している。今後さらに著者の言う「民間のちから」が上位にたつことは間違いないが、現場で生徒を見ていると、「生きる力」をどんどん失くして、日本の将来は暗い気がする。昔はよかったではないが、もっと「サバイバル」な力がほしい。

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著者プロフィール

1941年千葉県生まれ。東京教育大学文学部卒業。埼玉県立川越女子高校教諭を2001年に定年退職。「プロ教師の会」名誉会長。作家。著書に『オレ様化する子どもたち』『いじめ論の大罪』『尊敬されない教師』など。

「2020年 『学校の「当たり前」をやめてはいけない!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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