- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585220251
感想・レビュー・書評
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なにぶん、このあたりの歴史に疎いので、誰?と思ったところですが、教科書にも出てくる中川宮のことでした。
朝彦親王自身のみならず、日記等史料から分かる関わった人物が出てくるので、なかなか興味深い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幕末には、たくさんのひとの思想や思惑が絡んできます。
私たちが教えられ、なぞってくるのは、その表面にある、しかもほんの一部でしかありません。
私が学校で教わった幕末の歴史は摘んだ砂の一粒で、それは何の味気もなく、噛み締めたところで意味のないものでした。長い間、自分の国の歴史に対して無知であったのは、この味気ない「受験のための勉強」に一端がありました。
些細なきっかけで幕末に興味を抱くようになり、いろんな本をただ欲求のままに飲み込むようになって3年くらいになります。
その間でも、「朝彦親王」に関してはほとんど目にしませんでした。
少し疑念に思っていろいろと見ていくうちに、「どうしてこのひとはこんなにまでも変わってしまったのだろう?」とその疑念はますます拡大しました。攘夷派として安政の大獄に連座までしたのに、それ以降、公武合体を推し進めることになる、その理由。
それを氷解してくれたのがこの「朝彦親王伝」です。
一般に流通している幕末の本には「中川宮」としてその名前が散見されますが、このひとが幕末の動乱期においてどのような位置を占めていたのかはほとんど理解できません。それほどまでに「あまり意味のない登場人物」としてしか認識されていないのです。
ですが、本当のところはこの朝彦親王が幕末期においてかなりの重要な人物であったということがこの本を読めばよく分かってきます。
その生い立ち、思想、養弟である孝明天皇との関わり。
私が「変わった」と思っていた部分はそうではなく、朝彦親王はどこまでも真っ直ぐなひとでした。最後の最後まで、自分を曲げることとしなかったひとでした。
朝彦親王は、どちらかと言うと「混乱を招いたひと」と認識されるか、もっと悪ければ「認知されていない」か、です。これほどまでに重要な人物がそういう評価をされているのには、結局のところ「敗者」であったからです(とはいえ、同じ「敗者」の徳川慶喜はかなりの認知度ですが)。
歴史に埋もれそうなこのような人物がもっと認知されることを切に願います。
この本の素晴らしさは、膨大な史料によって朝彦親王の動静を明らかにされている点なのですが。
私としてはそれ以上に「川路聖謨」と親王の密接な関係をこの本で知れたことが何よりの喜びでした。
最後の「第11章 結」は、短いながら涙を誘います。
かなりボリュームのある本です。
幕末に興味のない方にとっては敷居の高い本かもしれません。
でもいつか幕末に興味を持たれた日に。
そんな本があったな、一度読んでみようかな。
そう思いだしていただければ、と思い、感想を記します。