考古学崩壊 前期旧石器捏造事件の深層

  • 勉誠出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784585220916

作品紹介・あらすじ

2000年11月に発覚した「神の手」藤村新一による旧石器捏造事件から14年、発覚に重要な役割を果たした「告発者」が当時の体験と膨大な資料から、事件の全貌を明らかにする。なぜ学界は20年間にもわたってひとりの「超能力者」を信じてオカルト的説を論じたのか、その理由を岩宿遺跡発掘以来の旧石器時代研究史と当時の社会状況から解き明かす。そして、今、再び、考古学協会による検証作業と考古学の現状を問う。

感想・レビュー・書評

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  •  2000年に発覚した旧石器捏造事件の「告発者」による総括の書。一部でささやかれる「共犯」「黒幕」説は採らず、藤村新一の確信的詐欺行為とみなしている(藤村は並みの研究者よりも石器を見る目があったと推定)。

     事件の背景として、石器の分析に基づく型式学を欠いた日本考古学の根本的欠陥を強調し、藤村登場以前から学界にはそもそも石器をまともに分析する方法論がなかったことを批判している。事件後も考古学界・文化財行政・マスメディアの「発掘至上主義」的構造は何ら変わらず、むしろ告発者たる竹岡の孤立はより陰惨な状況になっているようで、改めてアカデミズムの陰湿な側面を突きつけられる。

     専門的な研究史が中心なので、ある程度知識がないと理解しがたい内容を含むが、前代未聞の事件の全貌を知る上で、現状では最も信頼のおける書と言えよう。

  • 第11回アワヒニビブリオバトル「ごめんなさい」で紹介された本です。
    チャンプ本
    2016.04.05

  • ひとりのアマチュアによる、約4分の一世紀に亘る石器ねつ造を、権威ある学者たちが自分達の都合のよい様にとらえ、
    前・中期旧石器時代というものを作ってしまった。
    素人に本職が踊らされいる姿が非常に滑稽、失笑もの。

    そして、この捏造事件を経ても全く体質を変えることなく、あたかもこの事件をこのまま風化させてしまおうとする学会に失望。

    この先日本で、考古学大発見がなされても、まずは疑ってみることとする。
    また、権威ある考古学者達が自分達の都合のいい様に解釈されたものかもしれないし。

  • 作者の怨念混みで素晴らしく整理されていた。考古学も金とオカルトなのね。

  • 発掘捏造の発覚から早15年。
    それまでの20数年におよぶ「大発見」がなされた時代に記憶がある訳ではないので、どうにもこの事件の重大性が分かっていなかった。
    発覚から10年くらい経った頃に国立歴史民族博物館に行ったら、この事件をうけて再検討しているんだかされているんだか、とにかく展示に注記があったことは覚えている。

    考古学の知識はないので、石器の見分け方や種類などの記述は、そうなんですか、とそのまま受け取る事しかできないのである。
    しかし「石器を見る」ことで遺跡の年代や状況を考えるのではなく、地層と出てきた「成果物」ありきの年代測定をしてきたのであれば、なるほど、20数年間、あらゆる考古学者が信じ続けてきたというのも納得できる。
    発掘物の検証を積み重ねて論を導く、ではなくて、論にあわせた発掘物の「解釈」になっていたと考えれている。
    しかし、誰も捏造が行われるとは疑わないだろうから、でてきた→信じるの図は分からなくもない。
    とはいえ、それが何度も続いた時に、「神の手」と非科学的な言い回しで「信仰」してしまったことはあれ?と思うし、この件に限らずこういう類いの妄信の例はあまたあると思う。
    疑いを持って、ではないけれど、本当に本物か、大丈夫か、と常に自分の判断に再考する習慣をつけておくことは大事だと思った。

    2019/01/26再読
    岡村、竹岡のやりとりの記載を読んで、現在の状況との既視感を覚えた。

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著者プロフィール

1950年 京都府生まれ
1973年 明治大学文学部考古学専攻卒業
1980年 筑波大学歴史人類学研究科博士課程単位取得退学
1984年 パリⅥ大学博士課程修了
パリⅥ大学博士(先史学)
〈主要著書〉
『石器研究法』(言叢社 1989年)、『日本民族の感性世界―考古学から文化分析学へ―』(同成社 1996年)、『「オウム真理教事件」完全解読』(勉誠出版 1999年)、『図解日本列島旧石器時代史』(勉誠出版 2002年)、『石器の見方』(勉誠出版 2003年)、『旧石器時代の型式学』(学生社 2003年)、『前期旧石器時代の型式学』(学生社 2005年)、『旧石器時代人の歴史―アフリカから日本列島へ―』(講談社選書メチエ 2011年)、『旧石器時代文化研究法』(勉誠出版 2013年)、『石器・天皇・サブカルチャー―考古学が解く日本人の現実―』(勉誠出版 2014年)、『考古学崩壊―前期旧石器捏造事件の 深層―』(勉誠出版 2014年)『考古学が解く混迷の現代 オウム事件の本質』(勉誠出版 2018年)ほか

「2023年 『考古学研究法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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