梅棹忠夫の「人類の未来」 暗黒のかなたの光明

著者 :
制作 : 小長谷有紀 
  • 勉誠出版
3.78
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本棚登録 : 111
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784585230137

作品紹介・あらすじ

1970年頃、梅棹忠夫が構想し、ついに完成させられなかった書物がある。そこには、文明学者・梅棹が想定する"人類の未来"が描かれるはずであった。残された当時の資料、対談記録を現代の目で読みとき、幻の著作の全貌に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 梅棹忠夫の未刊の書、『人類の未来』の内容を探る資料、座談会、論考を集めたもの。

    河出書房版「世界の歴史」は、今西錦司ほか『人類の誕生』、宮崎市定『大唐帝国』、松田道雄『ロシアの革命』などの名著を世に出しており、その最終巻が梅棹忠夫『人類の未来』…、のはずだったが、刊行されずに終わる。本書の冒頭には、この未刊の書の目次案やアイデア(こざね)が収録されていて、梅棹の構想の一端を窺うことができる。刊行挫折に至る経緯を追った小長谷さんの論考も、臨場感に富んで、面白かった。

    設計思想ではなくプレイ・ボーイに、理性ではなく英知に「暗黒のかなたの光明」を見出した梅棹の発想は、今でこそ参照されるべきと思う。

  • 1970年ごろ、梅棹忠夫さんが構想したものだが、未完成だった書籍がある。『世界の歴史』の25巻目として、構想していた『人類の未来』。
    当時の資料が冒頭に確認することができる。目次とこざねだ。
    こざねとは、B8判サイズのカードのことで、1枚に1アイデアや資料、発見を書き留め、組み合わせたり、入れ替えたりして書籍として構成していく作業に使っていたとの説明がある。
    これを眺めているだけでも楽しめる。どんな内容になっていたのか?思いを馳せる。
    1966年ごろからの著名な文化人との対談も興味深い。当時大阪万博が開催される前で、万博の企画運営にも携わっていたことが垣間見れる。
    文化、宗教、思想、科学、工学、経済、環境、情報・・・・ありとあらゆる視点から「人類の未来」を浮き彫りにしようとしている。このテーマでは、幅広い視点から考察することは、ある意味当然なのかもしれない。しかしながら、この膨大な視野からテーマをとらえることは、野心的な試みだったのだと思う。
    こざねひとつひとつから、創造を重ねるだけでもあっという間に時間が立ってしまう。偉人の思考の片鱗を垣間見ることができる一冊。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/730662

  • CSLの暦本さんが梅棹さんがよいとtweetしているのでこの本を買ってみました。60年代の熱気が伝わってくるけど、たぶん他の本のほうが入門にはいいんだろうと思います。なんか、マニア向けな気がする。たぶん中沢新一的な考え方のオリジナル(まあ、いろいろと違いますけど)。竹内整一さん(鎌倉女子大学教授)のはかなさの感受性へってセクションがとてもよかったです。はかというのは、農業における刈り取りの単位のようなもので、要するに、剰余を生み出す計画みたいなものが「はかる」でありそれができないことが「はかない」らしい。これは、ストーリーから共時性、ビッグデータ、べき乗則の方向に進むという時代の流れのなかでああそうか。と感じました。まあ今がコロナだからな。

  • 『論理を突き詰めると狭い範囲でのみ閉じてしまい、より開かれた状況を柔軟に受け入れていくことができなくなってしまう』・・・なんとも深い。

  • 司馬遼太郎が好きで、対談の相手としての梅棹忠夫しか印象がなかった(涙)。
    今回、この本を読んで、梅棹忠夫の考えていた「人類の未来」の一端について、勉強することが出来たという感じである。
    第一部 梅棹忠夫の残した「人類の未来」
    第二部 梅棹忠夫の見つめていた未来
    第三部 「人類の未来」に迫る

    という内容で錚々たるメンバーでの談論風発が収録されている。
    戦後の経済成長時における日本が世界に発信する時代が感じられ、気持ちも明るくなるというものです。
    そして、梅棹忠夫氏は、情報時代、地球時代の到来をきちんと予想されていた先見性には感心いたしました。

  • 梅棹先生の著書は「文明の生態史観」と「知的生産の技術」しか読んだことがないが、“知の巨人”であることはわかる。
    そんな梅棹先生の「人類の未来」についての談論集を興味津々で読み始めた。
    「日本はちょっとむずかしい。(中略)一種の未来に対する不安みたいなものがやはりあると思うね。もうあかんぞという・・・・。」(p114)
    「文明の安定期に入りつつある日本が伸ばすべき一つの方向としては、ロマンチシズムがあると思う」(p138)
    3.11後のむずかしい日本を梅棹先生はどのように語っただろうか。

  • 梅棹さんについて語る最後の章。たくさんの著名な先生方が「なぜ梅棹さんは人類の未来について書かなかったのか」について語っている。語った先生は全員、「ある絶望があるのだ」と明言していたといえる。これに落胆してはいけない。なぜなら彼らは、絶望すると同時に「私たちに託された使命なのだ」とも明記しているからだ。歴史を作っているのは、「今」を生きる私たちなのだと。

  • 2012/09/28:読了。
    対談の内容がピントこない。

  • すごーい人がいたんだなー。ほんとに。予言者っているんだなー。
    政治、制度はどんどん遅れていく。

    プレイボーイのすすめ

    地球水洗便所観

    どうなる。どうする。

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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