- 本 ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585320401
作品紹介・あらすじ
現代一般に認識されている妖怪のイメージはいつどのように形成され、
どのように普及してきたのか。
それは自然の流れだったのか、恣意的なものだったのか。
妖怪を探し出した「研究者と妖怪」、それを普及させた「紹介者と妖怪」、
そして新たに創作をしていく「創作者と妖怪」という3つの視点から、多角的に考察。
近年ブームとなっている妖怪本とは一線を画し、
妖怪学のウラに潜む、「妖怪の情報」の流れを多彩な切り口で徹底追跡!!
2024年2月までに刊行された書籍から妖怪に関する1111冊を選定した
「妖怪ブックガイド1111」も付す。
大好評『列伝体 妖怪学前史』(2021年刊行)に続く第2弾!!
◉小松和彦氏、推薦!◉==========================
妖怪は増殖・変容し続けている。それはなぜか? その蔭に、妖怪に心ひかれる、研究者・紹介者・創作者の絶え間ない活躍があるからだ。変貌して止まない妖怪文化の「普及」の担い手である彼らは、じつは妖怪の「親」たちでもであった。相互に関連する彼らの複雑で奥深い思索の足跡を、妖怪に寄り添いつつ、優しくしかも冷静な眼差しで解き明かした本書は、妖怪研究が新しい段階に入ったことを告げる、妖怪関係者必読の書である。
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感想・レビュー・書評
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おもしろかった。
國學院の日本文学伝奇系の研究者とか、
幕末絵草紙戯文妖怪の研究者とか、
おばけ妖怪の同人さんとか、民俗学学者とかが
よってたかって、妖怪について調べている書物
式水下流(しきみずしげる)とか、
水木先生アナグラムで好きすぎる人やん。
現代の妖怪の普及史(タイトルそのままの内容)
妖怪本1111冊(2024年2月現在迄)を選定した
「妖怪ブックガイド1111」が付録
未読本も多く、触手わきわきする。
妖怪オタ本というか、妖怪学の専門書という感じか
古い書物だけでなく、つい最近パブリッシュされたものまで
しらみつぶしな書籍詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
妖怪本を多く読んで来た私にとってまさにバイブルと言える本が出ました。前回の列伝体も良かったのですが今回はより広範囲に広げ妖怪とその周縁を紹介し、500pという大ボリューム。特に素晴らしいのは学年誌や週刊誌という入手が難しい誌面の紹介。妖怪資料好きはぜひ購入を。
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河童タクラマカン起源説の註釈の歴史とか、ラフカディオ・ハーンは雪女の傳承に関してあの~とか、折口信夫にとって研究対象としての鬼が妖怪モンスターなんか得体の知れないものだったとか、結構面白い。
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元来、ローカルな伝承であった「妖怪」が今日広く一般に知られるようになった経緯を、民俗学者など「妖怪」を研究したもの、雑誌や書籍などで広く一般に妖怪を紹介したもの、小説家や漫画家など妖怪を自分の創作に取り入れたものという三つの始点から解き明かしていこうとする本。
取り扱われている題材は民俗学から文学、美術からマンガやラノベ、ゲームまでと幅広いが、各章はテーマ毎に独立した内容で何処から読んでも良い感じ。一つの章の分量もそれほど多くないので空いた時間にさくさく読めるが、どれも自分が感心のある事柄に近い内容ということもあって読み応えがあった。
特に2部や3部は「がしゃどくろ」のような近年になって創作されたものがいつの間にか古くからある妖怪と並んで認知されてたり、「ぬらりひょん」のように本来の伝承とは異なる属性を付与され存在が変節していくことの意味や功罪は、民俗学的な観点からでは出てこないもののように思えた。現代において妖怪はすでに伝承や伝説の中の存在というよりも、マンガやアニメの登場人物のような「キャラ化」された存在という印象だが、今時の「妖怪学」ではそのようなキャラ化された妖怪もまた対象として取り込んでいく必要があるということなのだろうな。
あと、高橋留美子がわざわざ章を割いて論じられてるのが意外というか、なんかもっと他に妖怪に関連が深い漫画家はいるだろうにという感じで不思議なのだが、これは単に書いた人の趣味? -
妖怪がいかに「普及」していったかを様々な視点から考える本。これからの妖怪研究を考えると非常にためになる視点・考え方が多いのは確かなのだが、一つ一つの論考が短く、ポイントを示唆するにとどまっている感がするのは少々惜しい。やはり妖怪史は水木しげるへと焦点を結び、水木しげるから拡散していくイメージが強いなぁ。妖怪本のブックガイドは豊富で○。
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『広益体 妖怪普及史』
著者:伊藤慎吾 氷厘亭氷泉 式水下流 永島大輝 幕張本郷猛 御田鍬 毛利恵太
ISBN 978-4-585-32040-1
Cコード 0021
刊行年月 2024年7月
判型・製本 A5判・並製 504 頁
キーワード 文化史,妖怪,民俗学
定価:3,520円(本体 3,200円)
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_info&products_id=103744
【目次】
総説◉妖怪普及史のむこうづけ◉氷厘亭氷泉
第一部 研究者と妖怪
総論 研究者が妖怪を普及させた ザシキワラシ普及史◉永島大輝
集古会系同好会の記録―趣味人たちの妖怪普及ネットワーク◉毛利恵太
折口信夫―晦渋な妖怪観◉伊藤慎吾
井之口章次―柳田・折口の学問を推進し後学を育てた◉永島大輝
南島の妖怪偉人たち―地方における妖怪普及史の一例◉御田鍬
妖怪フレーズは普及する。―いわゆる伝播伝承の問題◉永島大輝
[COLUMN]崇徳院と魔王、妖鬼と中瑞雲斎◉氷厘亭氷泉
国文学史にみる妖怪研究―好事家的な関心対象から古典文学研究へ◉伊藤慎吾
百鬼夜行絵巻の七面鳥?―小松茂美・眞保亨の美術での絵巻物の妖怪説明◉氷厘亭氷泉
[COLUMN]妖怪を通した昔話研究への再注目◉御田鍬
器物ではなく魔物な付喪神―中世から維新にかけての悪魔や魔王や蓮っ耳◉氷厘亭氷泉
妖精としての天狗―神仙道や自然霊の世界観での天狗=妖精◉氷厘亭氷泉
第二部 紹介者と妖怪
総論 妖怪普及活動の明暗 白峯相模坊を例に◉毛利恵太
ちりめん本―欧州諸国に翻訳された日本の妖怪◉伊藤慎吾
妖怪普及者ハーン―訪日者たちが見たストレンジ・シングス◉毛利恵太
民話の本―むかしむかし、日本に民話ブームがありました◉永島大輝
九千坊と獏斎坊の故郷―河童が砂漠から来た話とモノシリ佐藤垢石◉氷厘亭氷泉
物語られた隠神刑部―その栄枯転変◉毛利恵太
小学館の学年誌―児童文化の金字塔◉幕張本郷猛
大伴昌司―妖怪も解剖した怪獣博士◉式水下流
少女雑誌における幽霊妖怪―「こわい記事」の歴史◉幕張本郷猛
[COLUMN]怪物画本の新聞広告◉氷厘亭氷泉
妖怪解説の種―藤澤衛彦フォロワーを中心に◉式水下流
ぬらりひょん変遷史―ゼロから生まれた無限の解説◉御田鍬
妖怪図鑑と濱田増治―商業美術の樹立者は妖怪リデザインのご先祖◉氷厘亭氷泉
学研の学年誌―少年少女オカルトの巨大惑星◉幕張本郷猛
妖怪に見たる科学―おばけの正体に触れる◉式水下流
旺文社の学年誌における幽霊妖怪記事―学研と競った総合誌で健闘◉幕張本郷猛
妖怪事典編纂履歴―舟を編み上げた人々◉毛利恵太
青年誌・一般週刊誌における妖怪関連記事の歴史
―よく言えば日本風俗史の生き証人だが◉幕張本郷猛
「予言獣」とその周辺の人々―収集家から研究者まで◉御田鍬
三大女性週刊誌における妖怪関連記事―怖けりゃなんでもあり◉幕張本郷猛
「現代怪異」―学校の怪談からネットロアまで◉永島大輝
その他女性誌における妖怪関連記事―口裂け女協奏曲◉幕張本郷猛
展示される画像妖怪たち―博物館・美術館での妖怪展示の流れと傾向◉氷厘亭氷泉
第三部 創作者と妖怪
総論 妖怪は創られる 水木しげるとがしゃどくろから見る変遷◉式水下流
異魔話武可誌のおかんじょろ―勝川春英の妖怪たちの普及格差in江戸◉氷厘亭氷泉
玩具に見えたる妖怪―集める・飾る・遊ぶ◉式水下流
児童書・絵本のお化け妖怪―子供たちの妖怪ファースト・コンタクト◉毛利恵太
妖怪の世界へゆく学習まんが―佐藤有文・斎藤浩美らの学習漫画の様式◉氷厘亭氷泉
妖怪漫画の生存戦略―その需要と変遷◉式水下流
高橋留美子―SFと妖怪が混在する独自の世界観◉伊藤慎吾
初期水木しげるの妖怪画受容―鳥山石燕・狩野派を中心に◉御田鍬
[COLUMN]水木しげる影響の識別子◉式水下流
岡本綺堂―妖を妖とし、怪を怪と◉伊藤慎吾
妖怪小説の誕生―妖怪資料の参考と拡充◉式水下流
ライトノベルの妖怪―東西モンスターの共生◉伊藤慎吾
ネット生まれの妖怪たち―鱗舐・コタヒ・空亡◉御田鍬
[COLUMN]『別冊空亡』のための同人誌目録◉式水下流・氷厘亭氷泉
項目柱に用いた肖像・図版・活字の出典
あとがき
執筆者一覧
妖怪ブックガイド1111
人名索引/作品名索引/事項名索引
著者プロフィール
伊藤慎吾の作品





