元朝の歴史 モンゴル帝国期の東ユーラシア (アジア遊学 256)

  • 勉誠出版 (2021年6月18日発売)
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  • 本 ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784585325024

作品紹介・あらすじ

1206年、チンギス・カンの即位により成立した大モンゴル国は、その後継者たちにより、ユーラシア大陸全土へその版図を広げていった。その後、皇位争いに勝利し、国号を「大元」と改めた世祖クビライが1279年に南宋を攻略したことにより、中国史に新たな統一王朝の名を刻むこととなる―元朝である。
中国史における「元朝」とはいかなる存在であったのか―。
冷戦終結に伴う史料環境・研究環境の変化により、長足の進展をなしてきたモンゴル帝国史・元朝史研究の成果を受け、元代の政治・制度、社会・宗教、文化の展開の諸相、国際関係などを多面的に考察。さらには元朝をめぐる学問史を検討することにより、新たな元朝史研究の起点を示す。

感想・レビュー・書評

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  • 個人的には、順帝期の政局についてが一番読みたかったところ。即位からバヤン権勢期、トクト実権期まで簡潔にまとめられており非常に興味深く。ただ明朝研究者の筆によるからか、元末の衰亡を天変地異に帰す動きには、統治者がそれに対応しようとしたのに十全に果たせなかったのだから統治者の能力不足は否めない。また、岡田氏・杉山氏によるモンゴルの画期性だけを持ち上げ、明の不完全さだけをあげつらう論調は根拠がないと注で触れるなど手厳しい面も。/英宗シデバラの重臣で、南坡の変でシデバラに殉じたバイジュが、のちに、彼を祖先として崇拝する集団を生み出すまでになり、元朝は崩壊しても、その記憶は人々の中にさまざまなかたちで残り続ける、そのケーススタディとして興味深かった。/巻頭はやはり、モンゴル人至上主義はなかった、モンゴル人・色目人・漢人・南人という四階級制はなかった、といった教科書を書き換えるほどの研究の進展。集団ごとに長を任命し、その長を通して集団を統括。官僚の任用には根却(チンギス・カン一族との関係)が重視され、また参用といって一セクションに複数の集団から登用された人材を配置した、と。/教科書にものる駅伝制度ジャムチについては、問題があったことばかり史料に残るので、それだけ読むとタダ飯タダ馬にのっかり無理難題ふっかけ放題の輩に好き勝手される問題だらけの制度に思えるが、通常の運用に関しては資料に残らず、まだまだわからない点が多いのだとか。/モンゴル宮廷の女性の仏教や儒教を振興する活動も語られ、/”元代文学”というものは成り立たないのでは、断代史にとらわれるのではなく、言語圏に着目した文学史というアプローチが必要なのではという問いも投げかけられ。/詞集、散曲、雑劇を残した白樸は、元朝に仕えることを拒み続けたが、その生涯と態度から当時の知識人の一類型がうかがえ、また新しい文学ジャンルに取り組んだ点は、彼なりの元という時代を許容するすべだったのでは、と語られる/楊庭壁のインド洋航海で、インド、マレー、インドネシアなどの諸国から使者が到来し、また、中国ーイラン航路の安定に寄与した。/義経=チンギス・カン説は成り立たないことはチンギス・カンの妻や子供といった家族の問題に着目すれば成り立たないことに触れて、これまでの諸作品を斬りつつも、瀬下猛の漫画「ハーン」が初めてその問題へのアプローチも見せるもやはり…といったところにも触れられ。義経=チンギス・カン説も、歴史ロマンとしてあたたかい目で見ようという人もいるし、モンゴル帝国史研究の入り口にでもなってくれればとも語られ。/さまざまな論点、研究の進展、研究アプローチが語られ、興味の尽きない一冊だった。

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著者プロフィール

奈良大学名誉教授。
1950年大阪生まれ。1979年3月京都大学大学院文学研究科(博士課程・東洋史)を退学し、4月から奈良大学史学科教員。2016年定年退職。
【主要著書・論文】
『概説中国史』(共編・執筆、昭和堂、2016年)、『中国文化史大事典』(編集協力者・項目執筆、大修館書店、2013年)、『北京を見る読む集める(あじあブックス63)』(大修館書店、2008年)、『元代知識人と地域社会』(汲古書院、2004年)。北京で刊行の邦文誌『北京トコトコ』に1993年から最近まで「中国を見る読む集める」を約200回連載。

「2017年 『北京を知るための52章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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