小説の精神 (叢書・ウニベルシタス 294)

  • 法政大学出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784588002946

作品紹介・あらすじ

現代文学の最前線に立つチェコ亡命作家が,セルバンテス以来のヨーロッパの小説の伝統を探りつつ自らの創作の源泉を語り,実存の探究としての小説の可能性を問う。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと私には高度過ぎたかも。きっとわかる人にはわかる話に違いない。哲学って難しい。

  • 2015/2/4、二回目くらいの読了。

    カフカ、ブロッホあたりの話が多いかな。

  • チェコの小説家、ミラン・クンデラによる七部構成の小説論。

    著者は哲学者フッサールの有名な講演を引き、ヨーロッパの直面する危機(今や世界が直面する危機と言っていいと思いますが…)を論じています。それは、世界を技術的・数学的な研究対象に還元し、生の具体的世界(生活世界)を学問の領域から排除してしまうものです。
    しかし、近代ヨーロッパは、無価値として切り捨てられた人間の具体的な存在を探求する芸術をも生み落していたのです。それが小説です。
    セルバンテスを先駆けとして小説が発見してきた生活世界を、ブロッホ、カフカを中心に取り上げています。第2部、第4部、第6部の偶数部では著者自身の小説技法について論じていて、構成もおもしろい。

    世に小説家多しといえど、これほど見識のある作家は稀有なのではないでしょうか。クンデラ文学に興味ある方にはもちろん、小説とは何かを考えたい人にもお勧めの一冊。

  • クンデラの小説の魅力の一つは時に作者が顔を出し、主題となる観念について皮肉に雄弁に語られるその知性的な面にある訳で、当然このクンデラ自選の評論/対談集が面白くないわけがない。本書でクンデラはカフカやムージル、ハシェクといった中欧文学の先人たちの偉大さを紐解きながら、自らの小説が交響曲の様に体系化され、主題が無数の対位法となって響き合うその作風について補助線を加えてくれる。「私たちはある理由のためにこそ愛を失うことを甘受するのであり、何の理由もなしに愛を失ったら決して自分を許すことはないからです」

  • 正直、私には少し早かったかもしれない、もったいないことをしたと思った。

    本を読んでいくと、少し読み進めるだけでこの本は絶対に面白いとわかる感覚に出会うようになる。私はそういった本に出会った時なるべく避けるようにしているのですが、今回はソレが出来ませんでした。そういった本は、インスピレーションを得たい時なんかに使う裏ワザのような扱いで私の秘密ですね。

    セルバンテス、ジョイス、カフカ、フローベール、ボードレール、サルトル、ついでにシェーンベルクなどの新ウィーン学派についての音楽的教養もあると楽しく読めます。シェーンベルクなんかはロシアの医学者ルリア(表記はルリヤが多い)の共感覚やサヴァン症候群などを扱ったものから入るとスムーズかも。サヴァンに関しては、レナードの朝で有名なオリヴァーサックス博士の本から入ると読み易いです。ルリアとサックス博士は交流がありどちらの本にもつながっています。そして共感覚と芸術を考えると、必然的にシェーンベルクやランボー、ナボコフ、日本では中井久夫などに繋がって行きます。

    そうした背景と時代の流れを知っているだけで数倍も面白く読めるというのは稀なことです。この本が小説ではなく批評ないしはエッセイ故にそのようなことが起こるのでしょう。

    とても楽しく読めました。こういった読書の際に消費者ではなく生産者になれ、という言葉が重く響きます。

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著者プロフィール

1929年、チェコ生まれ。「プラハの春」以降、国内で発禁となり、75年フランスに亡命。主な著書に『冗談』『笑いと忘却の書』『不滅』他。

「2020年 『邂逅 クンデラ文学・芸術論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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