生命の哲学: 有機体と自由 (叢書・ウニベルシタス 903)

  • 法政大学出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784588009037

作品紹介・あらすじ

生命存在に目的はあるのか? 不死なる魂は存在するのか? 太古の有機体生命の発生から、反省的知性を獲得した人類の時代まで、自然史における生命の意味とは? 20世紀という大量殺戮の時代を生き延びたユダヤ人哲学者が、西欧近代をつくりあげた数学的・機械論的世界観、進化論、実存思想などの現代哲学総体から生物の自由の基礎を捉えなおす。今日の倫理学の根拠を問う名著、待望の完訳。

感想・レビュー・書評

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  • ヨナス中期の研究をまとめたと言える一冊。生命論を人間の倫理まで広げた壮大な構想は、面白いとはいえるものの読後感はあまりよくない。

    ヨナスが生命論で訴えたかったことは、「生命の内にも目的はある」ということに集約されると思う。そこから価値の問題、世界そのものの在り方などを語りたいわけだが、価値観や世界の在り方から生命論を考えているため循環論に陥っている点もある。この問題点は『責任という原理』でも解消されていない。

    ただし、ヨナスが踏み込んだ領域は現代ではなかなか語られない点で、議論の地平を切り開いたという点では非常に重要な役割を果たすものだと考える。現代の哲学においては、「わからないもの」「語るべきでないもの」「価値のないもの」などがごちゃごちゃに整理されないままになっており、「面倒なのでそういうものに触れないことにする」姿勢すら存在する。ヨナスには全くそういう臆病さはない。決して20世紀を代表する哲学者と呼ばれることはないだろうが、何世紀経っても細々と参照され続ける哲学者であると予想する。

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著者プロフィール

ハンス・ヨーナス
(Hans Jonas)
1903年にドイツのメンヒェングラートバハの裕福なユダヤ人家庭に生まれる。学生時代にシオニズム運動に参加。ハイデガー,ブルトマンのもとでグノーシス思想研究によって学位取得。ナチスの政権掌握の年,ドイツを出国。イギリスをへてパレスチナに移住。第二次世界大戦が勃発するとイギリス軍に志願し,ユダヤ旅団に属して戦う。戦後はパレスチナ戦争に従軍後,イスラエルを出て,カナダ,さらにアメリカ合衆国に渡り,ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ校教授を務めた。目的論的自然観による生命哲学を展開し,生命倫理学の研究拠点ヘイスティングス・センター研究員を務め,人間を対象とする技術操作に警告を発する。地球規模での環境破壊に抗して未来に人類を存続せしめる現在世代の責任を説く責任原理によって世界的に知られるにいたる。1993年にニューヨークで死去。『グノーシスの宗教』(人文書院),『責任という原理』(東信堂),『生命の哲学』(法政大学出版局)等が邦訳されている。

「2023年 『アウシュヴィッツ以後の神〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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