世界リスク社会 (叢書・ウニベルシタス 1004)

  • 法政大学出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784588010040

作品紹介・あらすじ

二極的な世界が姿を消していくのと軸を一にして、敵対する世界から危険でリスクに満ちた世界へと移行する。本書は、チェルノブイリ原発事故と同時に発表された自身のベストセラー『危険社会』発表後に寄せられた批判に応答しつつ、近代化とグローバル化を経て顕在化した新たな〈リスク〉のメカニズムを解明する。その議論は、3.11を経験する我々にとってもアクチュアルな議論となるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • リスク社会論で必ず出てくる著者の作品。
    読んでいて分かるような、分からないような、なんとも言えない作品。後書き読んでいたら、下から結構な悪文と書いてあったので一安心。

  • 361||Be

  • ウルリッヒ・ベック『世界リスク社会』法政大学出版局、読了。本書はベストセラー『危険社会』刊行後に寄せられた批判に応答しつつ、現在世界の新たなリスクのメカニズムを解明する。「リスクがリスクを生みだし、リスクを増幅させていく」。後期モダン社会のリスクに「領域」は存在せず、容易に超えていく。

    本書で印象的なのはベックがリスク社会を再帰的にとらえていること(再帰的近代化)。それは、モダンとその道具的・機能的合理性がもたらしたリスク、グローバリゼーションがもたらした新たなリスクを回避し、解決できるのかを探る試行錯誤の過程となる。

    そして再帰的近代化においては、リスク社会がもたらした自己対決が重要とベックはいう。具体的にはリスク社会を再帰的に組み替えていくこと。そのことを脱構築と呼ぶ。ただし「ポストモダニズム」はもちださない。第一の近代から第二の近代での枠内での対決になるからだ。3.11後を跳躍で解決しようと夢想しないアクチュアルな思想的試み。

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     多くの理論や理論家たちは、リスク社会があたえてくれる機会、すなわち「邪悪なもの」がもたらす機会を認めたがらない。かつて非政治化された決定形成の領域に対する民主主義的な監視を拡大していくこと、このような現代の議論が、その内部において議論がおこなわれている認識論的、法的なシステムによって強制されているということを認識する必要ある、とわたしは論じているのである。したがって、このことが、わたしがさらに究明していきたいテーマ、とくに、トランスナショナルな、文化をこえた、潜在的なグローバル・レベルの比較考察をおこなっていくというテーマの一つなのである(Korean Journal of Sociology 1998)。それは、さまざまな文化枠組みのなかで、リスクとリスク・マネジメントをめぐる社会的な定義づけを再構築していくということを含意しているだろう。互いにコミュニケーションを交わしたくないと思っている人びとが、(グローバル)リスクを共有する「コミュニティ」において共生することを強制されているという事態のなかで、リスクがもたらすコンフリクトやリスクの定義づけがもつ(否定的な)パワーを発見していくのである。こうして、さまざまな文化的、政治的な背景のなかで、組織された無責任と規定の関係性という問題を、われわれは解明していくのである。このことが、新しい、評価に値する概念をもった社会科学や政治的な社会科学になっていくだろう。わたしには、そのように思われる。
        --ウルリッヒ・ベック(山本啓訳)『世界リスク社会』法政大学出版局、2014年、265頁。

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著者プロフィール

1944~2015年。元ミュンヘン大学教授

「2022年 『個人化の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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