連帯経済の可能性: ラテンアメリカにおける草の根の経験 (サピエンティア 5)

  • 法政大学出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784588603051

作品紹介・あらすじ

今日の新自由主義的グローバリゼーションがもたらす弊害のもとで、貧しい人々によって組織されたさまざまな参加型コミュニティや近隣組織づくり、プロジェクト等をさす「連帯経済」という発想が注目を集めている。本書は、開発経済学その他の分野で独創的な業績を残している著者のラテンアメリカ見聞記から、グローバル化のもとで苦闘する人々による共生のあり方を探る。

感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    小さき人びとの挑戦!
    共生と連帯をめざして新自由主義的グローバリゼーションに異議申し立てをおこなう、小さなプロジェクトへのまなざし。

    [ 目次 ]
    序論
    第1章 逆のシークエンス―前提条件と結果の逆転
    第2章 その他の注目すべきシークエンス
    第3章 協調行動がなぜ生まれたか1―外部からの攻撃に対抗して
    第4章 協調行動がなぜ生まれたか2―過去の活動経験から
    第5章 協同組合の無形の便益と費用
    第6章 実践的社会活動に関わる組織
    第7章 結局、どういうことなのか

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • この本はもちろん連帯経済の本ですが、要するに、人々の協調行動(連帯)がどのようにして生み出され、社会的な問題に繋がって行くのかということを、さまざまな事例から考えている本です。
    分かりやすい事例から、人々の協調行動の過程と効果について、さまざまな考え方を提示しています。驚くべきは、1984年(2008年に和訳)に書かれたこの本で書かれている協調行動についての解釈が、今なお色あせていないということです。


    - 以下、ひとりごと -

    たとえば、「人々が住宅の所有権を持つことで、はじめて街の環境が改善しうる」という、一見当たり前の考え方に対して、「住宅の所有権を所有するための行動が、街の環境を改善している(=所有権を獲得していないことが改善に繋がっている)」という考えを、ある事例から導き出しています。

    私が本書から読み取った重要な指摘は2つあります。1つ目は、私的動機(自分の生活に関わること)が、協調行動を通して社会的運動(社会に関わること)へと繋がって行くというプロセス。また、協調行動が個々人の生活に影響を与えるというプロセス。つまり、私的行動から協調するだけではなくて、協調に参加することが、個々人をそのあとの社会的運動のプロセスまでつなげてゆく可能性があるということ。

    2つ目は、協同組合には「非金銭的な便益・費用(損失)」が存在するということ。たしかに協同組合も事業である以上は経営合理化は欠かせない。ですが、協同組合によってもたらされる連帯や協調行動は、金銭的な尺度だけでは計れないということです。

    国連が2012年を「国際協同組合年」として定めたように、今日の協同組合の意義は、このような協調の過程、効果にあるのでしょう。その点で、数々の事例からそのことを示す本書は面白いです。

  • 学術書とかじゃなくて、筆者がラテンアメリカ各国を見てまわった旅行記的な感じでした。
    もちろんただの旅行記じゃなくて、連帯経済の可能性について述べてる本なんですが。

    世界社会フォーラムで掲げられた連帯経済と関係があるのかただ単に連帯している経済なのかわからないけど、草の根で新しい小さな経済システム作ろうと共同で頑張っている人たちの姿、とても頼もしく感じた。
    この本でとりあげられていた草の根活動は外部から入ってきた人がある地域に対してプロジェクトをおこなってるとかじゃなくて、例えば自由貿易協定などの影響をもろに受けた農民たち等が自ら立ち上がって行動している。そこに、海外特にヨーロッパ諸国のNGOからの資金援助があるっていう感じ。この形が一番望ましいんやと思う。外部の人間がゴールをたてたってあかん。

    昨日レビュー書いたシューマッハーの本にも、途上国の人間に対する教育で農業とかの教育が大事って書いてあったんやけど、それがまさに実践されているのがあって素晴らしいと思った。
    もちろん「それって農業に縛り付けることになるやん」という反論は可能やけど(それはフェアトレードにしたって同じ)、人口の多い途上国では農業に関わる人間が多くなるのは変えられないと思うし、農業で生きていけないのならばそのシステムが悪いと思う。一次産品のことを考えるとき、どうしても国内でも不等価交換が起こっている気がしてならん…
    持続可能な農法のノウハウと流通システム(小さい)を改善することでまだまだ向上すると思う。これは先進国にもいえること。

  • 途上国が発展できないのは、資源、資本、マネジメント力、技術など、発展の前提条件とされる要素が抜けていることだと考える専門がいる。しかし著者は、こうした前提条件を構成する要素は、現実には発展プロセスの過程で後から生み出されるものもおおく、また自らを取り巻く条件のうち、何が発展の促進要因で何が阻害要因であるかなど、発展のプロセスが起動し、後になって初めてわかる場合もある。したがって重要なのは継起的(sequential)な問題解決の戦略を模索すること、さらには「何をしたか、あるいは何かをした結果、何がどうなったか」を見極めることだとする。自らの立ち位置を変えることによって、さまざまな発展の方向性を見いだせるのではないか。



    連帯経済とは、ものすごく広い概念である。私の興味のあるフェアトレードもこの概念に入るし、地域の活動であったり協同組合の種はこの経済サイクルの一部となりえる。
    ただし、こうした多種多様な活動であってもそれが持続していかないとオルタナティブな存在とはならない。いきなりマクロな視点を持つのではなく、自分の生活をよくしたい、今よりももう少し良い生活(良い生活というのは抽象的であり、個々人によって異なるが。。)を送りたいという願望をうまく汲み取り、個の希望を集団へといかに昇華させていくかが課題となる。その第一歩として、本書では協同組合の小売店をあげていたが、著者が実地調査をして四半世紀たった今、それにかわる何か別なものを提案していくこと、それが私の現在の思いである。

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著者プロフィール

(Albert O. Hirschman)
1915年ベルリンに生まれる。ベルリン大学で学び、反ナチ活動によってパリへ亡命。高等商業学校で学ぶ。その後、ロンドン・スクール、トリエステ大学で学び、経済学者としてイタリアとフランスでデビューしたが、40年にアメリカにわたり、以後、開発経済論、組織論、政治・経済思想史などの広い分野で経験主義的で独創的な仕事をした。カリフォルニア大学、連邦銀行局、イェール大学、コロンビア大学、ハーバード大学、プリンストン大学などで研究員、教授を歴任。プリンストン高等研究所名誉教授。主な著書に、『経済発展の戦略』(1958)、『進歩への旅』(63)、『開発計画の診断』(67)、『退出、告発、忠誠』(70)、*『情念の政治経済学』(77)、『越境論』(81)、*『失望と参画の現象学』(82)、*『連帯経済の可能性』(84)、*『反動のレトリック』(91)、*『方法としての自己破壊』(95)などがある(*は邦訳小局刊)。2012年没。

「2014年 『情念の政治経済学 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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