エルフギフト (下) (ポプラ・ウイング・ブックス 9)

  • ポプラ社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591073193

感想・レビュー・書評

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  • よく「先が読めない」と言うが、まさしく、まったく先がわからないストーリー展開に圧倒されながら、ぐいぐいと読み進んだ。
    訳者のあとがきに「『ハリー・ポッター』でにぎわっているファンタジー・ブームの中に爆弾を放り込むつもりで訳した」とあるが、まさに、そんな感じだったろうと思う(^^;(だから金原瑞人さんは好きだ)。『ハリー』好きの読者には受けないことだろうな…(誤解のないように書いておくが、私は『ハリー』も大好きです。ただ、物語の質が、まったく異質だと思う)。
    善とか、悪とか、そういった構図が通用しない。北国に脈々と続く伝説と歴史と文化。それは、西洋式の文化や視点で理解や分析・判断することが無意味だとわかる。東洋文化も然りだ。
    『ゴーストドラム』の作者ということで期待して読んだが、期待以上だった。久しぶりに、読み応えのあるファンタジーを読んだ気がした。

  • ページをめくる手が止まらなかった。残酷な描写、性的な表現もあるため、児童文学とするかはちょっと微妙かも。大人にはぜひお勧めしたい。この雰囲気が好きな方は、フランシス・ハーディングの「カッコーの歌」「嘘の木」もおすすめ

  •  この本は中学生ぐらいの時に一度読んだことがあった。中学時代は児童文学やYAのファンタジーを片っ端から読み漁っていた。映画のおかげで『指輪物語』のレゴラスに夢中だったので、「エルフ」と名のつく本には真っ先に手を付けた。そのうちの一冊がこれ。内容が強烈な割に印象に残ったかといえばそうでもなく、タイトルと、王位継承にまつわる話としか覚えていなかった。こんな過激な話が児童文学のくくりで良いのかと大人は心配するけれど、恐ろしく思えるのは大人だからかもしれない。
     大人になってから、訳者の金原瑞人さんがこの本をファンタジーの一押しにしていると知って、いつか読み返そうと思っていた。思い立ってからずいぶん時間がかかってしまったが、ようやく読むことができた。何これめちゃくちゃ面白いんだけど。
     設定が凝っていても語り口があまりにも平易で文章から幻想を感じられないものを私は心からファンタジーと思えるだろうか、と最近よく考える。無理かもしれない。そういうものをエンタメ小説として楽しむことはできても、私の求めるファンタジーではないと思う。そして『エルフギフト』は私にとってのファンタジーだった。
     私の好きなファンタジーは必ずしも読者に親切ではない。思考が想像に追いつかないほどの圧倒的な描写で振り回し、置いてけぼりにする。物語中の選ばれた者ですら面食らうほどの体験を、一読者の我々が理解しようとしてできるはずもない。上巻での異界の描写や、下巻での死者の復活は見事だった。
     ウルフウィアードは当事者でありながらも読者に近い戸惑いを感じているように描かれていて、読者の親しみやすいキャラクターだと思う。対して、エルフギフトはずっと「可愛そうだけど、一人死んだくらいで世界が滅ぶわけでなし」みたいなドライな性格をしている。読者にとっては感情移入しづらいけれど、私はかえって彼が最後まで下手に博愛主義になったりしなかったのが好きだった。もしもエルフギフトが博愛に目覚めたらきっと安っぽく感じて最後まで読まなかったかもしれない。
     心変わりしてエルフギフトに惹かれていくウルフウィアードやケンドリーダに対して、アンウィンやゴッドウィンが頑として折れずにエルフギフトを嫌い続けるのもいっそスカッとする。全員が全員骨抜きにされてしまうのでは面白くない。むしろエルフギフトを憎むようになるエバの存在はもっと面白い。
     ラスト、エルフギフトが死んで、ウルフウィアードは死なずに目を覚まして王になったということだろうか。エルフギフトがゴッドウィンを助けた時にウルフウィアードに言った「もしいまわたしがこの子を助ければ、いつかおまえがこの子を殺さねばならなくなる」はそういうこと? もう少しエピローグのようなものがあれば嬉しかった。

  • ヴィンランド・サガな児童文学。

  • う~ん・・・・。  上下巻読み通してみて、やっぱりちょっとビミョーかも・・・・ ^^;  確かに北欧神話(というよりゲルマン神話)をベースにしていて、オーディンなんかもうま~く登場させているし、「生と死」を必要以上に美化も嫌悪もせず描ききった異色作だとは思うんですよ。  エルフギフトの最期と再生の描写なんかは迫力も満点だし、そういう意味では不満に思うことは何もないはずなんですよ。  ないはず・・・・にも関わらず、何かが足りない・・・・・。  そう感じちゃうんですよね~。  エルフギフトとウルフウィアードの「剣の舞」のシーンも荘厳さ、神秘さ、美しさを表現しようとしているのは伝わってくるんだけど、上橋さんの「闇の守り人」で読まされた「槍舞い」のシーンで圧倒され、ねじふせられちゃったような説得力には欠けている・・・・・。  エルフギフトの死体をオーディンが○○するシーンは「おお、ケルト!」とは思わせるんだけど、他のいくつかの本で読んだ「ドルイド」関連の記述とかケルト人の哲学に関する考察の記述ほどには、響いてこない・・・・・。  まあ、これがそういう本を読んだことがない状態で初めて目にしたものだったらもう少し異なる感動(? 感慨?)を得たのかもしれませんが・・・・・。  それか、この本は1度読んだだけでは足りなくて、2度3度と読み返してみたときに初めて伝わってくる何かがあるのか???

    (全文はブログにて)

  • オーディンや、世界樹について詳しく知りたくなった。北欧神話を調べてみたい。
    実に巧みな筆致で読ませます!

  • 異母兄弟の命とひきかえにワルキューレの庇護を失ったエルフギフトは、オーディン神の呪いを受け、異母兄に捕らえられる。ゲルマン神話の世界観で語られる本格ファンタジー

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著者プロフィール

イギリスのブラック・カントリー工業地帯に生まれる。14歳のとき短編小説のコンクールで入賞して以来物語を書き続け、1987年『ゴースト・ドラム北の魔法の物語』でカーネギー賞、1999年にThe Sterkarm Handshakeでガーディアン子どもの本賞を受賞。翻訳刊行された作品に『エルフギフト 上・下』(ポプラ社)、『12の怖い昔話』、『500年の恋人』『500年のトンネル』(ともに東京創元社)など。

「2020年 『ゴーストダンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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