獄窓記

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591079355

作品紹介・あらすじ

そこは「塀の中の掃き溜め」と言われるところだった。汚物にまみれながら、獄窓から望む勇壮なる那須連山に、幾重にも思いを馳せる。事件への悔悟、残してきた家族への思慕、恩人への弔意、人生への懊悩。そして至ったある決意とは。国会で見えなかったこと。刑務所で見えたこと。秘書給与事件で実刑判決を受けた元衆議院議員が陥った永田町の甘い罠と獄中の真実を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 同じような秘書給与流用詐欺により実刑判決となった辻元清美には何故執行猶予がついたのか、この本では山本譲司との差は分からぬが、その時のスキャンダルとしてマスコミが騒ぎ立てた様子がよく分かる。私生活を面白おかしく暴き、自らを名誉毀損されたにも関わらず辻元清美に同情する山本譲司。心理的な動揺が読み手に伝わってくる。

    自分をよく見せようとする著者の人間性は、普段用いぬような慣用表現の言い回しからも伝わってくる。我慢強くもあるが短気でナルシストで偽善で、しかし生々しい程、人間らしい。生まれたばかりの我が子に揺らぎ、汚物に手を出せず、評論し行動せぬ自らを責め、自らを責めた様子を戦略的に見せる。感情移入する部分と、いや、心底著述を信じ込んではいけないと、読書の中で立ち位置が左右する。本音を語っているのだろうか。結局、着地したのは、辻元清美との刑罰の差が不確かでは、自らの罪を納得しているようには思えず、そこに触れないから、訝しい。みんなやっていたではないか。でも、それを言うわけにはいかない。そんな心の声が、書かなかった、書けなかった行間から聞こえるようなのである。

    刑務所には身体障害者、知的障害者が多かったらしい。その経験はその後の著者のライフワークにもなったようだ。大きく価値観を変える経験は決して無駄ではない。信頼できぬ印象を持ったが、理不尽に耐え抜いた強靭な精神は、確かなものである。

  • ゼリービーンズみたいな一冊。外見ばかりはいいんですが、糖衣剥いだらどれもただの透明なゼリーでしたーみたいな。伝わりにくいかね

    結構ユニークだったのは受刑者が抱く受刑者のイメージと、市井の人間が抱く受刑者のイメージに大きな隔たりがあったこと。あとがきで筆者は「我々受刑者は…(中略)…出所後のハンディキャップも含めての懲役刑だったのだ。しかし、そのことが過ちを犯したものに対する世間一般の見方を代弁しているのではないかとも思う。見えない足枷が、ずっしりと重く感じられた」と書いているんですが、これどこかに被害者意識ないですか?足枷とかハンディキャップとか単語使うけど、当たり前だよ?だって犯罪者だよ?刑期終えただけとはいえ、あなたは執行猶予すらつかなかった前科者だよ?そこんとこが根本的に違うし、トータル通して自分に甘すぎる。なんであぁも短気で売られた喧嘩は買いまくるような素性の人間が控訴審しなかったか分かる?どこか後ろめたい気持ちがあるからだろうよ。自分の仮釈放が延びてこどもや奥さんに迷惑かけてでも辻元清美を獄中から糾弾するような人間がよ?

    これに付随するけど、とにかく短気。これまた同じことするし、なんなら怒って相手を懲らしめることが快感になってすらあると思うわこのタイプ。あと仕切りに反省(猛省)したり忸怩たる思いしてるけど、すっっっっごい軽い。ものごっつ軽い。大麦のダグワースを右奥歯で思っきし噛んだ時ぐらい軽い。なんだかなー結局1年足らずの獄中生活では鋭利すぎる正義感改め都合のいい癇癪虫が鳴き止まず、納得いかないことを我慢できずに自身の立場を危うくするようなことがままあったのをふまえると、お酒飲んだ時に奥さんぶん殴ったりしそう。猛省するのはいいけど、なんとか進歩につなげて欲しいよね。

    まとめると、もう犯罪者は一生犯罪者なのよ。一度でも誰かを騙して刑務所に収監されるような人間が、真面目に頑張ってきた人と同じ土俵に立とうとするな。なんなら刑期を終えた=社会的制裁を食らったから元通りだなんて思ってるのはお前らだけ。二度と足枷とか言って被害者ぶるなよ。常に人の2,3歩うしろを歩いて生きていって欲しいわ。刑期同じ危険運転過失致死やらかした人間が同じこと言ってらの聞いてみろ。遺族ならほんと殺してるぞ?ったく…

  • ・元国会議員で監獄にいた山本氏の逮捕から獄中生活の日々を記した一冊
    ・虚偽記載の政治資金規正法違反で逮捕された
    ・逮捕の原因となる政策秘書費の資金流用が国会議員間で公然の秘密として行われていた
    ・今も政治家を続けている辻元氏と立憲民主党の管氏も同罪だと書かれてます
    ・実名は書かれてないけど多分自民党やその他の党の議員も同じことをやっていたようです
    ・しかし、裁判中は「皆やってるから私だけが悪いんじゃない」と主張せず、控訴もせず、服役をして深い反省を感じました

    ・服役中は犯罪を犯した障碍者や痴呆老人の世話をして過ごし、出所後は福祉の仕事をして更生されてます

    【感想】
    ・服役中の出来事を読むだけで犯罪になるようなことはやめようと強く思いました
    ・難しい言回しや熟語もあり、少し読みづらかったです
    ・保身のために平然とテレビで「嘘をついた」か「良く調べもしないで話した」辻元氏に嫌悪感を持ちました

  • T元K美と早稲田の同級生だった、議員も同期/誰が見てもTKのほうが反省の色がなく「私は全然違う」と見苦しい嘘まで言ったのだから山本以上の実刑が相当だろう。「ある政党では組織的にやっている」と土井たか子に罪をなすりつけようともした/T真紀子も議員辞職で幕引きとなったのもおそらく公設秘書借名が広がりすぎて服役が二桁ともなれば国会運営に支障を来す“検察の暴走”と言われかねなかったからでないか/犯罪者(しかも打たれ弱い脳弱)を候補にする政党の人材不足/「当選で禊は済む」を非難していた輩は照れ隠しに「アベ逮捕」叫ぶ

  • 一人の人が刑務所で経験したこと、感じたことをまとめた本。

    ある程度読みやすいようになっているが、筆者の伝えたいことや思い、人間臭いところも書かれており、楽しく読めた。

    題名とは裏腹に読みやすい本なので、刑務所の実情や山本さんに興味のある方は読んでみるといいと思った。

  • 政策秘書給与流用事件で衆議院議員を辞職する内幕話は先が知りたくてたまらなくなった。
    語彙が豊か過ぎるがとても文章が上手い。
    栃木県黒羽刑務所で高齢者や障害者のお世話係としてオムツ替えや粗相の後始末をするのにはびっくり。
    適切な治療なく死ぬ受刑者がいたり福祉施設で介護されるべき人達を刑務所に収容したりしたままでいいのか等の声高な主張がない分考えさせられます。

  • 元国会議員の獄中記。古臭い表現が鼻に付く。

  • 刎頸の友 ふんけいのとも→
    たとえお互い相手の為に頚(くび)を刎(は)ねられても悔いはないというほどの仲のこと
    中国の戦国時代の趙の物語

    人の口に戸はたてられない
    →人々が勝手に流すうわさ話はどうすることもできないということ

    雪隠詰め 秘書と議員 一蓮托生 
    証左
    未熟さと狡猾さがない交ぜ 市民感覚の解離 博引旁証    
    博引」はたくさんの資料や事例を用いて説明すること。
    「旁証」は証拠となるものを出して見せること


    食器孔 万鈞 
    いかなるときもいかなることにも 
    無聊をかこつ 無欲恬淡 
    気持ちの忖度 人権意識が高まるなか待遇の改善は、逆戻りのインセンティブ 大行は細僅を顧みず 吐露 等閑 なおざり 同看守
       
    次の世があるというなら母よ母再び我を身ごもりたまえ 

    旧聞に属する話 人権意識の希薄さ
    ジェノサイド インド 東ティモール インドネシア軍 
    1991年秋。インドネシア占領下に置かれていた東ティモールの首都、ディリにて。
     スハルト大統領は、東ティモールを独立させると、他の島にも影響が出るため、独立を認めない方針を貫い 
    た。 スマトラ島北部のアチェ特別州、パプアニューギニアに接するイリアンジャヤ州でも独立運動が起きて
    いるからだ。 インドネシアは、併合に反対する住民を武力弾圧し、独立派と併合派の争いも含めると、20万人以
    上の犠牲者が出たといわれる。
    1975年11月・・・・ 独立派が、東ティモールの独立を宣言する。
     ポルトガルの政変に乗じたものだった。  しかし、すぐインドネシア国軍が侵攻し、領有を主張した。  
        1976年・・・・スハルト大統領は 「 27番目の州 」 として併合を宣言する。
     国連など国際社会はこの併合を認めず、「 自分たちの独立国を作りたい 」 という東ティモールの人々の独立
    運動は続いた。
    経済支援は、1999年12月の東京で開催した第1回東ティモール支援会合における3年間の約1億3千万ドルの支援表明から始まり、その3年後の支援国会合における3年間の上限約6千万ドルの支援を表明し、その後、公共事業整備や選挙実施支援、経済復興支援などの国づくりおよび復興支援を中心とした援助が現在まで行われている



    障害が殺人に起因する ゼノンの逆接
    大上段に構える

  • 2003年刊。
    秘書給与詐欺事件で実刑判決を受けた元国会議員の手による刑務所内の実相解説。

     本書の愁眉は受刑生活の模様。特に、認知症患者、知的・精神障害者、自閉症を含む広汎性発達障害と目される者が配置される寮内工場。それは筆舌に尽くしがたい。
     また、福祉制度に無知な受刑者と、彼らへのケア・情報提供の不足、それによる経済的な不如意が再犯の温床となっている可能性も感得できそう。

     一方、高齢受刑者の多さも、高齢化社会での福祉制度がカバーする必要のある対象の多さに気づかされる。刊行の古さを補って余りある内容だ。

     著者をいわゆる高齢・障碍者受刑者の世話係的役割につけたのが、矯正担当側の深謀遠慮だったらすごいな(多分違うだろうが)。著者自身、これらの実情を社会へ開示し、改善の制度的道筋を実現する可能性を秘めた人物だからだ。

  • 一気読みしたかったけど、忙しくてちょこちょこ読み。でも、おもしろかった。刑務所のリアル。

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著者プロフィール

1962年生まれ、元衆議院議員。2000年に秘書給与詐取事件で逮捕、実刑判決を受け栃木県黒羽刑務所に服役。刑務所内での体験をもとに『獄窓記』(ポプラ社)、『累犯障害者』(新潮社)を著し、障害を持つ入所者の問題を社会に提起。NPO法人ライフサポートネットワーク理事長として現在も出所者の就労支援、講演などによる啓発に取り組む。2012年に『覚醒』(上下、光文社)で作家デビュー。近刊に『エンディングノート』(光文社)。

「2018年 『刑務所しか居場所がない人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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