ロマンスにはホラーを (ホラーセレクション 5)

著者 :
制作 : 赤木 かん子 
  • ポプラ社
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本棚登録 : 16
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591090763

感想・レビュー・書評

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  • 赤木かん子編 ホラー短編コレクション

    ○●ウィリアムの幽霊 / アン・ローレンス
    ・アン・ローレンス 1942-1987 イギリス人。民話や伝説のモチーフを現代的な物語に立て直すのが得意。
    ・短編集『幽霊の恋人たち』のなかの一編。現代的かつ皮肉のある話。
    ・感想:幽霊だって楽じゃない。けなげな恋人が墓で自分を呼ぶから、成仏したいのに出来ない、困ったー! 読みやすい。悪い人が一人もいないのに不幸な感じがおもしろい。

    p.26「マーガレットはちがう。どうも、思い出のなかの俺をすっかり美化しちまったらしい。いつでもよそゆきの服を着ている姿で考えているらしいんだ。それも本にのってるような恰好をしてな。だから、マーガレットにはそういうふうにみえるんだ・・実際気が重くてしょうがないよ。本当の自分と違う姿でいなくちゃいけないんだからな。」

    ●へスターの幽霊 / ルーシー・モード・モンゴメリ
    ・モンゴメリ 1874-1942
    カナダ、プリンスエドワード島生まれ。『赤毛のアン』作者。これは『アンをめぐる人々』に入っている一遍。「強情で意地っ張りな女性を描くことにかけてモンゴメリ以上の書き手はいない」と、赤木かん子氏。
    ・15歳年上の、姉のように母のように慕ってきたへスターが亡くなった。彼女は厳しく、「私」がヒュー・ブレアという若者と恋に落ちるのを許さなかった。彼女は死ぬ間際に「ヒューと結婚しない」よう私に誓わせたので、ヒューが自分にまだ好意を持っていることを知っても約束は破れない~。そんなへスターがある日、幽霊になって表れた・・。
    ・感想:幽霊になってやっと優しく穏やかになったへスターの話。うーん生きている間に許してやってくれ 笑

    ●みずうみ / レイ・ブラッドベリ
    ・ブラッドベリは1920年アメリカ、イリノイ州生まれの小説家、SF作家、幻想文学作家、怪奇小説作家、詩人。『華氏451度』作者。その叙情的な細やかで優美な作風は日本人好みでファンが多い。この話は『10がつはたそがれの国』に収録されている。萩尾望都が漫画化。
    内容:ハロルドは12歳の夏、共に湖で遊んだ初恋の少女タリーが事故死してしまい、そのトラウマを胸に秘めたまま成長する。

    ◎●弔いの日 / 宮脇明子 (漫画)
    宮脇明子 1958、広島県生まれ。『名探偵のオバさん』のようなコメディータッチの漫画も、怖い漫画もうまい。
    ・感想:雪女のような母が美しい、子どもの絵がかわいい、絵が美しいなぁ!
    話もよかった、読みやすかったし美しく切なかった。

    「自分たちのしようとしていることがどういうことかも、どれだけ苦しいことかもわかっていたよ。でも、人間ってのは自分で信じているほどには自分自身にうそはつけないものなんだよ。」
    「しばらくの間 いい夢を見させてもらったと思っています。ただ、夢を見た後には現実は生きていくにはあまりにつらくて なんだかプツンと糸が切れたようで」

    ●青ひげ / シャルル・ペロー
    シャルル・ペロー 豊島与志雄 訳
    ・内容:金持ちだが、青いひげのために恐れられている男と結婚した娘が機転をきかせて危機を逃れる。青髭の館の”開けてはいけない小さな部屋”とは・・。
    ・歴史上実在の人物ジル・ド・レが青髭のモデルといわれている。
    感想:語られると怖い話、らしい。読んだところたしかにあまり怖くはない。青髭も生き方が下手な悲しい男なのかも。そして、大変みにくくどんな女も娘も逃げ出す容姿な割にめっちゃ結婚している。お金持ちだからなのか・・。それもまた悲しい。

    ●詩人トマスの話 スコットランドのむかし話
    怖くなかったー。妖精の女王はトーマスに3つの道を示す。天国に至る道、地獄に至る道、「美しい妖精の国」に至る道、の3つである。

    ・・それよりも、いろんな昔ばなしを読んできたけれども
    妖精の女王「ありがとうトマス。お礼をしたいから、何でもお望みのことを言ってごらんなさい。」
    トマス「美しい女王さま、ではあなたの唇にキッスさせてください。」
    この展開に笑ってしまった 笑 キッスをねだる昔ばなしは初めて聞いた 笑

    ○●怪人・奇談 振り袖火事 / ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)
    商人の娘が一目ぼれした、美しい若侍。でもその人に会いたくてもどこのだれかわからない。侍が身に着けていた晴れ着と同じ紋の着物を作り、侍の注意が引けるよういつでもんどこでも娘はその着物を着ていた。けれども、娘は二度と、その若侍の姿を見かけることはなかった。侍を恋したうあまり、やつれはてて病気となり、とうとう死んで葬られた。

    感想:そうだよね、実際そうやんね。うまくいかない、ただただ切ない。恋をするのは、呪われるようなものなのかもしれない。

    ●窯変 源氏物語3「葵13~16」 / 橋本治
    橋本治 1948年東京生まれ。小説家、評論家、絵描き、古典の研究家、編み物デザイナー。なんでもでき、やることは一流!この『窯変 源氏物語』は、『源氏物語』を「いったい主人公の源氏本人はどう思っていたのだろうか」と、源氏側から書いたユニークな研究書であり物語である。

  • <HORROR SELECTION 5 : THE LOVE UNTO DEATH>
      
    装画/坂本富志雄
    装幀/井上則人デザイン事務所

  • ロマンスにホラー……怖いんだか怖くないんだか分からない組み合わせ。本来恋愛絡みホラーにするとかなりどろどろで怖くなる気がするのだけれど、妙に綺麗にまとめられちゃってる印象も強いしな。
    印象に残ったのはブラッドベリ「みずうみ」。怖くはないのだけれど……ラストは妙にぞくりとくるなあ。雰囲気も好き。

  • 古今東西のホラーの傑作を、名作から落語、マンガまで収録。「ウィリアムの幽霊(アン・ローレンス)」「みずうみ(ブラッドベリ)」「弔いの日(宮脇明子)」「青ひげ(ペロー)」「振り袖火事(ハーン)」など、8編を収載。

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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