八本脚の蝶

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 695
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (487ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591090909

感想・レビュー・書評

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  • 復刊時に購入したけれど、怖くて読めないでいた。感想、むつかしいな。本が大好きで、本ばかり読んで過ごしてきたけれど、彼女が超えた先の世界まで行きつけないで、ずっといる。渇望しながら、超えたら戻ってこれないよと、躊躇して足踏みしたまま、ずっといる。敵わないな、と思う。そんな私に、彼女を讃えたり、諭したり、咎めたりする資格はない。『二十歳の原点』を思い出したけれど、私は奥歯の方がずっと好き。賢くて、いっぱいいっぱい考えすぎるほど考えて、でもなによりもかわいらしい。崩れた心さえもかわいくて愛おしくて、悲しくなる。

  • 友人に勧められた本。内容を熱く解説してくださっただけでなく「この図書館に置いてもらえるようにリクエストしておいたから、行ったら読めます!」と所蔵図書館まで教えてもらっておりながら、その勧めから半年程間が空いてしまいました。ようやく例の図書館で借りて、途中高速で飛ばしつつも最後まで読了。

    読んでいてまず、大変趣味の良い方だったんだな、ということがよく伝わってきました。
    と同時に、哲学科を卒業したての、膨大な知を読み尽くしたインテリ(であろうと背伸びをしている一人の女性)であることがこれでもかという程理解させられる文章。いや、記録、というべきか……。

    ともかく、「生きていたんだよな、この人」という感慨を持ちながら一つ一つの文章を読み解くのは大変に複雑な感情を伴う作業であり、とても心地いいと言える読書ではなかったです。
    なかったのですが、日記ひとつひとつの記事に妙に「読ませる」力のある言葉が毎回数々散りばめられており、その力強さがまた「あぁ、やっぱり生きていたんだよな、この人」という思いを強く抱かせるのでした。

    多分、私はこの人と趣味が合って、生きてお会い出来てたら延々、お互いが好きな話をし続けられる気がします。同じく哲学科卒だし。
    何というかな、お読みいただければ分かるように、二階堂奥歯という人物と言葉を交信出来る人間は、非常に少なかっただろうと想像出来ます。
    ただ、読み終えた今、私は多分この人と交信可能な人間の1人なんじゃないかという妙な確信めいた自信は抱いておるのですね。
    この本を読み終わった現在にあっては、「もう17年も前に亡くなった一人の女性」なんですが、今生きてそこにいる人のように二階堂奥歯という人を感じられるくらいには、この人の人となりが非常によく分かる。

    そして感じることには、

    「いっ、いるわぁ〜。こういう哲学女子」

    別段私が人生の中で出会ってきた人の中では珍しい部類ではなかったのでした。むしろいる。どこにでもいるとは言わないが、いるところには必ずいるわこういう子。

    そして、そういう子に限って「背伸びしたがり」なのです。
    そもそも「背伸び」以外に哲学書なんかを紐解くモチベーションなど無いと言えば無いんですが。
    背伸びしてる自分が好きで、背伸びに伴う努力や苦労が深い造詣として多方面に渡っていればいるほど尚優越感が満たされるような精神構造をしているのです。優越感を満たそうとする欲求が「物欲」「読書欲」として現れるのです。必然的にタロット、クトゥルフ、貞操帯、SF、コスメ、怪獣……と非常に「趣味の良い」オタクと化していきます。よく分かります。よく分かりすぎてつらい。

    2003年4月から急に日記の記述が物々しくなるあたりのちょっと前から前兆はあったと思いますが、結局この大変趣味の良いお嬢さんが自死しなければいけなかった理由は、よく理解出来ません。
    書かれてない部分で多分何かあったと推測し、せめて例の4月頭の段階で良い精神科にかかるか何かがあったなら、と思うくらいしか、彼女の死について私に出来ることはありません。
    お墓は「東北のどこかの山の上」ということだそうで、めっちゃ近いところにいるな、と思いつつ
    「バカだなあ」
    と、私も思って本を閉じたのでした。

  • 裕福な家に生まれ、人並み以上の容姿を持ち、早稲田大卒で恋人もいて、大手出版社の編集者で、あの中野翠に”できる子”と言わしめられ、なんで、なんで死ぬ必要があったのだろうか…。
    死の誘惑に取り付かれてしまったが最後、もう生きてはいけなかったんだろう。
    私も中野翠氏とまったく同じ”バカだなぁ”としか言えない。

  • 編集者であり、レビュアーであり、そして若くして自らの命を絶った、二階堂奥歯がWEB上に残した日記。
    その日記と、生前彼女と関係があった何人かが書き記した彼女。

    日記の中に、非常に多くでてくる書籍名、著者名。
    短い時間のなか、自らの生活をしつつ(彼女には恋人もいたのです)、これだけ多くの本を読んでいるということに、プロの編集者としてのすごさを感じた。
    それも、おそらく仕事として読んだ本ではない書籍の多さに。

    ただ、本は人それぞれ好みによって偏りがあり、その偏よった読書が、また偏った人を育てるのではないだろうか?
    私の読んできた本を、あまりに重なっていないその書名群をみながらそんなことを考えた。
    タイトルから本の中身を想像しつつ、そんなことを考えた。

    とはいえ、日記は書名の羅列に終わっているのではない。
    そこには、毎日生きている奥歯の姿が、きちんと描かれている。
    そもそも、日記であるから、それが真実かどうかはわからないが、日記上での奥歯はきちんと生きている。

    若くして自らの命を絶つ人、ものすごくものを考えてそうな人たちはどんな思考を辿って、そこにたどりつくのだろう?と少しの疑問を隠したまま読み進んだが、結局最後、それはわからなかった。
    ただ、彼女の人生を垣間見た思いは残った。

  • この方が書く文章を、世界観を、もっと知りたかったなあと思う

    2秒ならわたしにも出来るだろうかとか考えた

  • 頑張った彼女にお疲れ様と言いたい

  • 難しい…。でも最後まで読むと泣きたくなった。
    何で人間は死ぬんだろう、死を選んでしまうんだろうとただただ不思議だ。周りの人たちはどんな気持ちだろう。
    この人の感性、才能、生きてきた環境、そして読書。「普通に本が好き」で終わることができる自分に安堵したけど、少し寂しくて悔しい。この人を、この人にとっての「物語を読むこと」を、きっと理解できずに死ぬ自分は悲しい。
    思考って狂気なんだな。
    私はこれからもぬくぬくと読書を楽しむだろう。

  • 彼女と自分の違いはどこにあるのか、そんなことを考えながら読んでいた。

    彼女のように思考を彩る言葉を僕は持ちあわせてはいないが、ある日の日記は自分の言葉のようで気付けば手を強く握っていた。

  • 前読んだ「とっておき名短編」の中の飯田茂美『一文物語集』を、北村薫がこの人で知ったと書かれていたので読んだ。私と同じ年に生まれた人。すごく頭の良い人だったんだと思う。亡くなる時に書いた遺書は涙が出る。こんなに優秀で、尊敬する雪雪さんがいて、恋人の哲さんもいて、家族が守ろうとしてくれてることもわかってはいるのに、それでも死んでしまうのだな。私と読んでいる本が全然違うし、日記も読んでもほとんど分からないけど、もったいないなぁと思う。残された人たちがみんなそう思っているんじゃないか。それでも人は死んでしまうのだ。自殺対策の仕事をしてた時も、どうしても死んでしまう人はいるのだ、と教わったけれど、やっぱり周りの人はショックだろうなぁ。

  • 289.1
    コスメや洋服、幻想文学やSFを愛した女性編集者の自殺までの日記

著者プロフィール

1977年生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。編集者。2003年4月、26歳の誕生日を目前に自らの意志でこの世を去る。亡くなる直前まで更新されたサイト「八本脚の蝶」は現在も存続している。

「2020年 『八本脚の蝶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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