美しき傷

  • ポプラ社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591098318

感想・レビュー・書評

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  • シャン・サの邦訳出版三冊目にあたる本です。

    古代マケドニア王国のアレクサンドロス大王を題材にした小説。

    シャン・サは、今年(2007年)の9月東京・銀座で絵画展も開催し、出版記念も兼ねて来日していたという。

    アレクサンドロス大王を題材にした物は書物のみならず、映画やほかの分野でも非常に多くあるので、この対象で勝負するには相当違う切り口か斬新な発想が必要だと思われる。

    一応、年代記というか歴史ロマンに仕上がってはいるが、
    『碁を打つ女』があまりによすぎたせいか、アレクサンドロス大王に関して、すでに歴史的知識が入っているせいか、特別感情移入するところもなく、終わりまでさらっと読んでしまった。

    アレクサンドロス大王の王妃のことは、あまり詳しく知られていないし、王妃の侍女のこともよくしらないにも関わらず、知的好奇心をかきたてるというわけでもない。

    驚いたことといえば、真偽のほどはわからないが、アレクサンドロス大王と父フィリッポス2世の近親相姦。
    そして繰り返される男色。
    史実としての好奇心が動いたのはこのあたりのみで、遠征の中でクレイトスなど側近を信じられなくなった大王が、暗殺したり、追放したりということも有名な話なので特に驚くこともない。

    詩が多く使われているが、これは、シャン・サの詩作なのだろうか。
    翻訳される詩というものは、評価が難しい部分もあると思うが、著者の思い入れのように、読者に伝わらないという印象を受けた。

  • 読む前は「アレクサンドロス大王の栄光」みたいな小説を期待してましたが、その点では期待はずれ。
    これは「アレクサンドロス大王」という歴史舞台を使って、男女の愛を語る物語。
    本の最初の方は慎重に言葉を選んで説明をつけていたようだけど、後半の二人の描写はとにかく感情的で激しいもの。ついていくのが疲れると感じる時もあったけど、アレクサンドロス大王とアレストリアの結末がどう転ぶのか最後まで分からなかったので、サクサクは読めた。

    史実にあるように、アレクサンドロス大王は幼少期から母親と近い距離にいた。この著者は、東方遠征にまで駆り立てた理由を、母親との複雑な関係に求めているようだ

  • 『華麗にして残酷、痛切にして、気高き愛。(中略)異色の大恋愛小説、遂に、日本上陸!』と帯にありましたが読後は「どこが?」だった。

    アレクサンドロスとアレストリアの愛もぱっとせず、王を取り巻く腹心にして元愛人的な人々の描写も何だか中途半端。
    アニアの女王への愛と王への憤りは伝わったけれど帯にあるような感情は抱けなかった。
    ただ、ステップの乾いた美しさは心に沁みた。

  • 在仏中国作家シャンサが詩情豊かに描くアレクサンダー大王と王妃アレストリアの物語。
    権力を握る人の心の葛藤や倒錯した愛、アマゾネスと呼ばれた一族の話は面白かった。
    権力を握る人の最後の欲望が跡継ぎを残すことというのは永久に変わらないのだな。

  • 美しい詩的な文章。読後に深い感動と余韻が残る。

  • 物語の中に、詩を感じるという体験をしたのは、この人の本を初めて読んだ時でした。
    それから気になっていた作家さんだったのですが、今回この物語が邦訳されるということで、とても楽しみにしていました。

    今回のお話は、マケドニアの王アレクサンドロスと、シベリアの女部族の女王タレストリアとの運命の愛の物語です。
    アレクサンドロスとの愛のために、自ら持つものをすべて捨て去ったタレストリア。
    それだけなら、なんて男性にとって都合のいい話なんだ!と噴飯ものだったのですが、ラストはちゃんと納得のいくものになっていました。

    私的には、タレストリアに着き従うタリアに好感を持ちましたね。
    主人を想うゆえのもどかしさ、滅私奉公の中にチラリと現れる本音、一番人間らしさを感じたのかも。
    手の届かないものに対する、焦燥にも似た想いを胸に抱いていた彼女。
    白い鷲に導かれ、空高く駆けのぼって行けたラストが、ホントよかったです。

  • ちと甘いかな、と悩みながら☆4つ。作者の来歴といい美しげなるポートレイトといい、「ゴンクール賞」や「高校生が選ぶゴンクール賞」という光り輝く決め手といい、そしてそういう作家が、かのマケドニアのアレクサンドロスの物語を綴るという、……、それだけで、私、期待しすぎた?期待外れ、というほどではありません。文章が、ちょっと平板かなぁ、と感じた、もすこし緩急があれば、物語にぐっと入り込めたかもしれないのに、と。でも、おそらくはこれが、「北京生まれ」「12歳で全中国詩大会グランプリ受賞」「天安門事件後17歳で渡仏」「バルテュスに師事」「書画集あり」「パリ在住」……、並べてても気が遠くなりそうな、この仏語で著する中国美人の、文章の特徴かもしれません。詩的、です。もとの仏語も簡易・簡潔にして美しいんだろうな、と、勝手に想像します。マケドニア、テバイ、フィリッポス、アレクサンドロス、アリストテレス、メンフィス……、可能な限りの実在によって、けれどそれがすべて架空の名であってもかまわない、という、これはやっぱり「小説」と呼ぶに相応しい、と感じます。仏語に堪能なら原語で読みたい、そしたら☆を増やすことができるかもしれないから、なんて、不遜かつ不可能なことも考えました。アレクサンドロスの大侵略(あれはやはり戦いであり征服でしょう)がもたらした最良の遺産は、アレクサンドリアの図書館、古代ローマ帝国の侵略(これもまた戦いと征服です)がもたらした最良の遺産は、各地に整備された道路と水道、そしてその後なる「大学」。本書とは直接関係ないかもしれませんが、私はそう思っています。アレクサンドロスの物語を読むときには、必ず念頭に置く事柄です。ごめんなさい、最後にやっぱり。訳文が、あと少しだけ、美しかったら……!!

  • この本の内容よくわからなかった。

  • たしかに、ハダカでオリンピックやってたのは肉体美を愛でるためもあるんだろうから、彼らの愛の対象が同性になるのも自明の理、なんの説明も要さない必然なんだろうね。

    そんな感想。

  • かなり鳴り物入りで宣伝している本ですが、正直「どうして、これが?」ってな感じです。アレクサンダー大王の一代記ってい体裁なんですが、そこに運命の女性との愛を織り交ぜてあるわけで、普通に考えるとそれなりに面白そうなんですけど、そもそも運命の出会いが描き切れていないのが痛いです。どうしてお互いにこの相手を選んだのか全くわかりません。アレクサンダー大王、その王妃アレストリア、アレストリアの侍女アニアという三人の視点で語られる構成も作者の意図に反してわかりづらくなっています。アレクサンダーはただの身勝手で頭の悪いホモ男、アレストリアは何を考えているのかわからない世間知らず、アニアは意固地なほど考えに柔軟性のない女、そんな印象が残ってしまうんですよね。

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