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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591103180

作品紹介・あらすじ

佐藤雅彦が編んだ本。名作12篇。

感想・レビュー・書評

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  • 佐藤雅彦さんの編集された、文字通り「教科書に載っていた小説」が12篇載っている本。
    佐藤さんの名は「ピタゴラスイッチ」以来ファンとなって様々な著書を読んできた。
    子供時代お父さんの書斎で国語の教科書を見つけ、時を忘れて次々に読みふけったという珠玉のような思い出から始まっている。
    それを、私たちにもお勧めしたくなったということらしい。
    段落で区切ったり、主人公の気持ちを20文字以内で書く必要などない。
    大人になった今は、ただ作品世界に酔いしれれば良い。
    授業ではないのだから一切構えることもない。
    どうか皆さんもこの幸福を味わって、なんて佐藤さんの真似をしてしまうわ。

    12篇には長短あって、決してそれぞれの作家の代表作とは言えないものも多い。  
    なのにどれも名作揃いで、選定する方たちの眼の確かさに感心してしまう。
    何をもって名作と言えるのか定義は私にも判然としないが、公序良俗に背かず全体に品の良い香りがある。
    佐藤さんの言葉を借りれば[成長する道程に置いておくので読んでほしい、というかすかな願いが、これらの集合体から感じられた]から、ということなのだろう。
    歴然としているのは、中高生だった私がこれらの作品を読んでも、今ほどの感動はなかっただろうということ。年をとるのも悪くはないのだなぁ。

    亡くなった朋友との見えない絆を描く[絵本]は、今読んでも美しい一品だ。
    [父の列車]など、こみ上げる涙が堪えられなかった。
    当時は子供の立場で読んだものを、今は親の立場で読んでいる。
    衝撃的な[ベンチ]は、[あのころはフリードリヒがいた]という原作まで買って読んだのを思い出す。
    文学の薫り高い[雛]が最後にあるのも、いかにもの編集である。

     とんかつ (三浦哲郎) 
     出口入口 (永井龍男)
     絵本 (松下竜一)
     ある夜 (広津和郎)
     少年の夏 (吉村 昭)
     形 (菊地 寛)
     良識派 (安部公房)
     父の列車 (吉村 康)
     竹生島の老僧、水練のこと (古今著門集)
     蠅 (横光利一) 
     ベンチ (リヒター)
     雛 (芥川龍之介)

    皆さんはいくつご存知だろうか。
    私が一番良く覚えているのは、松下竜一さんの[潮風の町]と山川方夫さんの[夏の葬列]。
    佐藤さん、次はそれも入れて編集してくれないかなぁ。

    • nejidonさん
      アセロラさん、こちらにもコメントをいただいてありがとうございます!
      さてさて、実は連休中に実家の倉庫をガサゴソやって、
      アセロラさんの言...
      アセロラさん、こちらにもコメントをいただいてありがとうございます!
      さてさて、実は連休中に実家の倉庫をガサゴソやって、
      アセロラさんの言われる2冊を探していました。
      【アイム ソーリー】と【一塁手の生還】です。
      一生懸命探したわりにはなんの収穫もなくて(涙)
      どうやら、そちらとは採択した教科書が違うということなんでしょうね。
      ガックリすること約一日。
      今は立ち直ってこうしてお返事を書いています。
      お待たせしてしまって、本当にすみませんでした。
      ああ~、いつか読んでみたいものです。

      しかし【ベンチ】と【夏の葬列】をご存知でとても嬉しいです!
      「救いがない」という見方はしたこともなかったですね。
      あまりにも好きで、山川正夫さんの作品を(文庫で)買ってしまいましたから。
      まぁ、それも受け止め方の違いかなぁ。

      黒田三郎さん、はい!大好きです。
      こんな話をしていると、また読みたくなってきます。
      思えば、教科書に載る作品ってすぐれものでしたよね。
      私も配られるとすぐ読んでいた方なので、わくわく感を久々に思い出しました。
      2014/01/13
    • アセロラさん
      こんにちは(^-^*)/
      お返事ありがとうございます♪

      って、あわわわわ(汗)
      わざわざお探しになってくださったとは…なんだか申し訳ないで...
      こんにちは(^-^*)/
      お返事ありがとうございます♪

      って、あわわわわ(汗)
      わざわざお探しになってくださったとは…なんだか申し訳ないです(^^;

      いやいや、こうしてお話出来るだけで嬉しいですから(^^ゞ
      こちらの教科書は、小学校・中学校は教育出版だった気がします。高校の現代文は筑摩でした。

      調べてみましたが、アイム・ソーリー収録の『楡の木の下で-オランダで想うこと』(吉屋敬)(吉屋さんの公式サイトでご本人による著書の解説があります)も、
      一塁手の生還収録の『ダイヤモンドの四季』(赤瀬川隼)も、
      共に絶版のようです(>_<)残念…。
      古本屋さんなんかで巡り会えれば良いですね^^

      わたしもベンチと同じ教科書にあった、落合恵子さんの紅玉についてのエッセイをもう一度読みたいと思っているのですが、その本もまた絶版で…(^^;
      本当に教科書は出会いのきっかけですね〜。

      卒業してだいぶ経った今になっても、こうして教科書のお話が出来るのは嬉しいです(^ー^)
      2014/01/14
    • nejidonさん
      アセロラさん、再訪してくださってありがとうございます!とても嬉しいです♪
      いえいえ、せっかくタイトルまで教えていただいたのに、分からないの...
      アセロラさん、再訪してくださってありがとうございます!とても嬉しいです♪
      いえいえ、せっかくタイトルまで教えていただいたのに、分からないのが残念でしかたがありません(涙)
      きっと、すご~く面白いに違いない!と、妄想がふくらむばかりです。
      こちらの教科書は「明治図書」でした。
      それはそれでもちろん良いものが載っていたんですけどね。

      調べてくださった【楡の木の下で】は、Amazonの中古で100円からありました。
      信じられません・・名作をその価格で・・喜ぶべきなのか悲しむべきなのか・・
      最近は、絶版になる速度がどんどん速くなりますね。
      いいなと思ったら、手元に置いておくのが正解のようです。
      でもねぇ、あとで知ることになるっていう本も多いのですよねぇ。

      昨日は、以前レビューに載せた【シャエの王女】を中古で入手しました。
      ええ、私にしては高かったです(笑)

      手に取ることは出来なくても、教科書に載った小説のお話が出来るなんて、思えば幸せなことですね。
      2014/01/15
  • 幼い頃からの本好きで、
    これまでたくさんの本を読んできたが、

    この本の読後、ふと、
    (大人になるにつれて・・・読み方がいやらしくなってきたかなぁ)
    なんて気がしてしまった。

    評価の高い本、
    長い時をずっと読み継がれてきた本、
    著名な作家が書いた本、

    なぞは、(面白くないはずがない)と、
    頭から決めてかかり、
    自分のなかに静かに沸き起こる
    (これ、難しくない?
    読むの、つらいんじゃない?)
    なんて声に蓋をし、
    全く気付かぬフリなんかして。

    佐藤雅彦氏監修のもとに集められた
    『教科書に載った小説』
    は、短編ではあるが、
    どの物語も、どの小説も、読んでる時間がとにかく楽しかった。

    あとがきにあった
    「難しくてわからないものや、つまらないものはどんどん飛ばし、
    面白い読み物だけを貪る様に読んだ。」
    という、
    佐藤氏が幼い頃経験した高揚感を
    きっと、誰もが同じ様に体感できるはず…と、思う。

  • 目次を大学生の子供達二人に見せたが、どれも知らないと言う。私も一つも知らなかった。
    ここにこうしてまとめてくださったからこそ読めたわけで、これらの作品との出会いに感謝。

    二作ほど個人的に「だから?」と思うものがあったが、それ以外は中高生ではない現在一応大人の私には面白く読めた。
    その中でも特に「絵本」「父の列車」は静かで地味な書き方でありながら、こみ上げるものがあった。
    菊池寛の「形」は、戦国時代を描いているが現代にも充分当てはまる内容で、短いのに深くインパクトがある。

    ただ、現代の自分が感動したこれらの作品を、中高生の時の自分が教科書で読んでもなんとも思わなかったと思う。
    教科書とは所詮強制的に読まされているものだからなのかとも思うが、読書家でない娘が小学生の時にたった一度だけ「テストの文章が面白く、この先を読みたくなった」と言ったこともある。

    自分にとって適当な時期に適当な作品と出会うことは「運」という他ないのかもしれない。

  •  中高生向けの教科書に載っている小説、その他を佐藤雅彦氏が厳選して集まとめた本。
    殆どは短編ですべて載せてあるけれど、長い話は教科書なので一部抜粋という形。
     昔は、教科書に載っている本なんて、何の興味もなかったけれど、最近、子どもの教科書を読んで、面白そうなものは、自分でも探して読んだりしていました。
     昔は国語が大の苦手だったので苦痛だったけれど、授業を離れて読んでみると、教科書って意外と面白い話が沢山あるんだな、と。
     今回は、この小説集を読んでみて、教科書に載るというくらいだから、これが掲載されている教科書を使っている学校では、当然、授業で読み深めたり、テストなどで何らかの問題が作られたりしたわけで、どんなところがどんな風に出題問題として出されたのかな、と想像しながら読みました。あとがきに書かれている佐藤氏の楽しみ方とはちょっと違う方向性ではあったけれど、楽しめました。

     名作12編、とありますが、この中で読んだことがあったものは、たった一つ。リヒターの『ベンチ』(『あの頃はフリードリヒがいた』より抜粋された話)のみでした。(確かに、この話は名作でとても面白かったです)

     著名な作家が目白押しですが、そのほとんどは、名前はもちろん知ってはいるけれど、自分から手に取って読んだことはない方々だったので、普段読まない話を読む機会を得ることが出来ました。
     私のお気に入りは、『出口入口』、『絵本』、『少年の夏』、そしてもちろん『ベンチ』でした。

    とんかつ・・・・・・・三浦哲郎
    出口入り口・・・・・・永井龍男
    絵本・・・・・・・・・松下竜一
    ある夜・・・・・・・・広津和郎
    少年の夏・・・・・・・吉村 昭
    形・・・・・・・・・・菊池 寛
    良識派・・・・・・・・安部公房
    父の列車・・・・・・・吉村 康
    竹生島の老僧、水連のこと・・・古今著聞集
    蝿・・・・・・・・・・横光利一
    ベンチ・・・・・・・・リヒター
    雛・・・・・・・・・・芥川龍之介

  • 普段読まないような作品が読める。
    三浦哲郎「とんかつ」、吉村昭「少年の夏」、吉村康「父の列車」、横光利一「蝿」、リヒター「ベンチ」が良い。
    古文(「竹生島の老僧、水練のこと」)も久々に読んだ。

  • 面白い。侮れない。

  • あとがきにも書いてあったけど、誰かが人が育つ過程で通過させたかった本。
    よくよく考えてみると、書いた本人でも無いのに、実に興味深い。
    どれも自分の教科書には載っていなかったが、教科書に載ってそう感は、とても味わえる。
    少年の夏が一番好きかな。

  • 文字通り「教科書に載っていた小説」

  •  タイトル通りのアンソロジー。国語の教科書の充実っぷりに今頃になって気付く。
     ただ永井龍男の「出口入口」は二度読んでも難しい…。要再読。

  • 電子書籍が増えていくなかで、手にしたときの重量感や手触りをはじめ、字体、行間隔、余白バランス、紙の色合いなど、読む媒体として長い歴史を経てきた紙の本について、読んでいて疲れず読者の目に優しい、本の本来的な姿が徹底して求められた結果、「読む」という行為が大好きな人の心をくすぐるような、究極の造本となって表れているように思えました。

    手に取った瞬間、そして読み終えた瞬間、心が暖かくなるとともに、編者の佐藤雅彦さん、装丁の貝塚智子さんをはじめ、この本づくりに携わった人のこだわりと英知と、小品だけど良質な小説作品へのリスペクトが伝わってきました。

    実は私(昭和41年生まれ)も、国語の教科書に載っていた小説で大好きだったものはあるのですが、残念ながら、表題を忘れたり、一部記憶が薄れたりして、今改めて読みたいと思っていても、検索する糸口すらわからない作品もあります。

    私が印象に残っている作品のうちの1つは歴史物で、2人の能面師の物語です。
    時の権力者が2人に当代唯一の能面師はどちらかを競わせようと、面づくりを命じます。
    2人とも悩みますが、1人は自分のことを心配してくれる老母の表情を見て優美の表情とはこれだと気づき、それを面に刻み、微笑みの面を完成させます。
    もう1人の能面師は、その能面師が面を完成させたとの噂を聞き、完成した微笑みの面を借りて来て見たところ、あまりの完成度の高さに「到底勝てない」とおののき、悪魔の囁きにより鑿(のみ)で面を打ち割ろうとします。
    しかしその表情を自分の子どもに偶然見られてしまい、「鬼だ、怖い」と叫ばれてしまいます。
    自分の愚かさに気付いたもう1人の能面師は思いなおし、自分自身の嫉妬や醜い心をそのまま原木に打ちつけるようにして、怒りの面を完成させます。
    時の権力者は2つの面を見比べ、甲乙つけがたく、そして2人を競わせ1人を選ぼうとしたのは無意味だったと気付き、2人とも当代の名人として後世に語り継がれるだろうと改めて思った、という話です。

    もう1つ印象的だったのは、これは今でも有名ですが「最後の授業」です。
    この本の収録作品「ベンチ」と同様、翻訳作品です。
    戦争でプロイセン(ドイツ)領となったフランス・アルザス地方にある学校の仏語教師がこれからはフランス語を教えることが禁止されるという状況で、授業の最後にフランス語で黒板いっぱいにフランス、アルザスと書くことが精一杯だったけれど、子どもたちには先生の想いが伝わった…という話。

    あー、こうやって書いていると、次から次へと頭に思い浮かんでくる。
    佐藤さん、教科書に載っていたけど現在手にするのが難しい優れた小説はまだまだいっぱいあるはずだから、1作だけと言わず、ぜひ次作、次々作も手にしたいです。無理なお願いでしょうか?
    (2013/8/17)

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著者プロフィール

三浦哲郎

一九三一(昭和六)年、青森県八戸市生まれ。早稲田大学文学部仏文科を卒業。在学中より井伏鱒二に師事した。五五年「十五歳の周囲」で新潮同人雑誌賞、六一年「忍ぶ川」で芥川賞、七六年『拳銃と十五の短篇』で野間文芸賞、八三年『少年讃歌』で日本文学大賞、八五年『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞、九一年『みちづれ』で伊藤整文学賞を受賞。短篇小説の名手として知られ、優れた短篇作品に贈られる川端康成文学賞を、九〇年に「じねんじょ」、九五年に「みのむし」で二度にわたり受賞。他の著作に『ユタとふしぎな仲間たち』『おろおろ草紙』『三浦哲郎自選全集』(全十三巻)などがある。二〇一〇(平成二十二)年死去。

「2020年 『盆土産と十七の短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦哲郎の作品

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