- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591104231
感想・レビュー・書評
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もう少し、具体的提言が書かれているかと期待したけれど、
TVのドキュメンタリーの焼き直しならこんなものかという感じ。
やはり入門的にはいいけれど、それ以上を求めるなら専門書を読むべき。
この本の最大のMessegeは、「人間にとって働くとは何か??」
人によってこの問いの捉え方や答えは違うと思うけれど
この本の答えはただ、自分の食いぶちを稼ぐというだけでなく
他者から必要とされる―他者との関係性
自分の行っている仕事に対して誇りが持てること―自尊心
この二つも共に重要なのだと訴えている。
社会的排除をなくし、包括社会の重要性を訴えている。
便利になるにつれて薄くなる他人との絆。
地縁・血縁が薄くなった中で今後どのように人々は他人との絆を作っていくのだろうか??
もし、自分の所与の人間関係が自分とは異質のものだった場合、人はどうすべきなのだろうか??
またそのために行政はなにができるのだろうか??
行政が関与することは個人の自由の侵害にならないのだろうか??
これがその後の「無縁社会」特集につながっていくのだろう。
他人との絆がセーフティネットのとしての大きな役割を負いすぎていたことは日本の問題点ではあるが、
セーフティネットとして社会保障が充実させたとしたら、
今後日本はどのような社会を描くのだろうか??
ただ、これは働いても生活できないとはあまり関係がないのでは??
Ⅰ部Ⅱ部で疑問に思ったのが働いてもぎりぎりの生活できない。
このことに対して本人達が自分たちの生活を不幸と捉えずに笑ってくらせるならそれはそれでいいのではないだろうか?
ということ。
1国の中であまりにも差がありすぎるのも如何かと思うし、
そのいった層に対してなんらかのアプローチはすべきだとは思うが本人達が幸せならばそこまで声高に叫ぶことではない。
問題は世代間連鎖や働く意義が見いだせない状況だ。
世代間連鎖に関してはOECD加盟国最低レベルの子供にかける予算を増やし、
各家庭の負担ではなく社会が責任を持って一定レベル以上の教育をし、
自ら望む進路を選べる環境を獲得できる環境作りが必要だろう。
働く意義が見いだせない状況に関しては、
それが経済的に日々の生活が苦しすぎて感じる余裕がないのならば、
それは社会保障の問題や最低賃金の問題でありそこにアプローチすべき。
精神的に感じる余裕がないのならば、ソーシャルワーカーやカウンセラーといったアプローチが必要。
派遣等で人との関係性が築けない働く意義が見出せないのは、
働き方自体の問題である。
人が皆、自ら望んだ進路のみ選べる状況でないのならば、
その後にどうすれば人が幸せになれるかを考えなければならない。
社会の動きが早いなか産業構造の転換に対して、
社会は人はどのように対処していくべきなのだろうか??
産業構造が変化したからといって、人を右から左へとは動かせない。
人々がその地域や仕事で気づいてきた人間関係や、仕事への誇り、思いあるなかで
人をものとして扱わずにどうすれば目まぐるしく変化する者会いに対応できるのだろうか??
行政だけでなく、地方自治体、企業、NPOといった市民活動。
そしてなにより、個々の市民が問題意識を持ち、行動することが求められる。
そして、私はどのような立場からどのような人に対して、どのようにアプローチしたいのか自問自答しなければならない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010/3/17売却
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海外も凄いことになってますね。イギリスの取り組みは素晴らしいが…。アメリカやばいなぁ。
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前作で衝撃を受けたので、今回の「解決への道」には非常に期待感を持って読みました。
韓国、アメリカ、イギリスといった日本と原因を同じくしてワーキングプア問題が拡がっている国々の取材は、非常に興味深く、参考になりました。どの国も新自由主義の市場任せの歪みが表面化しています。韓国の馬鹿げた英語熱の原因も理解でき、詳しく知らずに批判してしまった韓国人のみなさんに謝りたい気持ちです。各国の解決策は、法律による規制や地方の努力や徹底した若者支援など様々で、どれも現在の日本では実現していないものです。
どうも日本には、アメリカほどの貧富の差はないしジンバブエみたいな失業率90%以上の国がある中で、日本は頑張っている良い社会だとする風潮が未だにあると思います。本書でも触れていましたが、自殺者増加や若者による凶悪犯罪の増加は、原因の一つに家庭や社会に居場所がないことに対する「希望の無さ」からくるものがあると思い、日本を「希望の無い社会」と考えてしまう根源にあるのがこのワーキングプア問題だと考えられます。一旦、日本は良い社会という幻想を振り払い、現実を見つめ、より良い社会を築く必要があると思います。
各国が対策を講じる中、日本は随分のんびりしているように感じます。政治が腐敗していることが諸悪の根源なのは明らかなのですが、政治家が国民のためでなく政党のために政治を行っている姿を小さい頃から見せつけられてきた今の若者たちは、政治に対する興味が極端に薄く、知識も無く、70年代頃に見られた世の中を変えようとする情熱とそのための団結力が低いので、政治は未だにどうしようもない連中の手の内でゲームのごとく行われています。国民と政治のかい離が現実には意味のない政策へと繋がっています。
行政があまりにも頼りにならない以上、ワーキングプアは倫理の問題として、人が一人一人他人事とは考えずに何かしら協力していくしかないのだと強く感じました。
労働時間、賃金、社会保障などの問題もさることながら、まずは誰もが「誇り」を持てる労働環境を整えるにためは社会がどのような姿であるべきなのかを真剣に考えて行くことが必要だと思います。このことは決して抽象的で役に立たないものではないと強く思っています。 -
ワーキングプアの2作目
海外の若者雇用の現状を調べながら、日本の現状と見比べた内容。
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衝撃
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よかった。
優れたジャーナリズムっていうのは、こういうことを言うのだと思う。
同名のテレビドキュメンタリーの書籍版。
分かったこと(再確認も含め)を簡潔にまとめると、
1、ワーキングプアの問題はグローバル化と市場主義経済に身を任せた先進国共通の問題
2、自分のことを守ってくれる家族や友人がいて、肉体も精神も健康の人はワーキングプアにはならない。また、母子家庭、親の介護など「守らなければいけない家族」がいる場合も、ワーキングプアに陥りやすい
3、仕事は単にお金を稼ぐ手段ではなく、人間の尊厳と密接にかかわる
そのほか気になった箇所を。
「韓国」
・市場主義化
→通貨危機に対するIMFの支援=支援の条件としての「労働市場の柔軟化」→韓国政府は「整理解雇法」と「労働者派遣法」を導入=正社員を解雇可能に。また人材派遣を可能に。
→→その結果として貧富の格差=教育熱の高まり(英語できなきゃ就職できない!)→貧困の再生産
*正社員も簡単に解雇されてしまうところが、日本との違いか?日本では、ロストジェネレーションの非正規雇用の問題に関して、既得権益層である既存正社員を大きな原因に挙げる議論があるが、韓国の例は既存正社員が解体されても問題が解決しないことを示している。
・その後できた「非正規保護法」=1、(二年以上働いた者の)正社員化の義務 2、差別待遇の禁止(同じ職場で同じ労働をしていた場合)
→その結果、多くの非正規労働者が「正社員化」するのではなく、「解雇」される結果に・・・
「アメリカ」
・ホワイトカラーの労働力そのものが海外に流出。ワーキングプア化するIT技術者たち
・ノースカロライナ州の再教育プログラム=家具製造業の衰退に対してバイオ産業の誘致。バイオ産業で働く人材への教育プログラム(バイオ産業は高い技術力が必要となるため、簡単には海外に流出しないだろうという期待)
「イギリス」
・親から子への「貧困の連鎖」を防ぐための多数の試み
・「コネクションズ」という試み・・・政府の方から積極的に若者に働きかけ、マンツーマンで仕事の斡旋など面倒を見る
・「社会的企業」という試み・・・リサイクルなど環境ビジネスといった社会に役立つ事業を行いながら、若者の職業訓練を行う会社⇔日本の職業訓練所は無給・・・生活が続かず諦めてしまう例が多い
・読み書きができない若者への教育・・・家庭環境による教育レベルの差を埋める→仕事に就ける
・「社会的包摂性」・・・サッチャーの新自由主義政策による社会的弱者の増加→ブレア政権による、巨額の財政を投じての、弱者を包摂する試み
「日本」
・新自由主義的グローバリゼーション→労働の価値の低下
・(ワーキングプア層のインタビューより)「ワーキングプアというのはお金がないだけではなく、周りから認められないなど心に余裕がない状態」
・ 生活保護を拒否せず、「社会的包摂」を市民レベルで積極的に進めようとする釧路市の試み(社会的企業を自分たちで作り出せないか⇔財政難)
・ワーキングプアの共通点=社会からの孤立
・あるホームレスの社会復帰=それまで欠けていたのは、共に助け合う仲間の存在と、人や社会のために役立っているという実感(人とのつながりと、働きがい)
・面接を受けられないホームレス=身元保証人がいないから
「まとめ」
・経済が成長することで雇用が確保されるのは一理があるが、それではこの問題は解決されない。なぜならこの問題は結局「市場の失敗」からきているから
・社会保障の体系を「会社」に任せてきた日本。そしてその崩壊が原因の一つ
・岩手県宮古市での地域・企業をあげてのワーキングプア対策⇔一方でグローバル化の中で多数の倒産 -
前作が非常に勉強になったので、発売されてすぐ買いました。
でも、半年くらい読まないまま放置してしまってたのですが、派遣切りのニュースが連日報道されてる今だからこそ読むべきだと思い、今日1日で読了しました。
読んだ後の率直な感想。
日本政府よ、もっと本気になれ!!
アメリカのノースカロライナの事例や、イギリス政府の横断的な組織運営のもと、国家を挙げて官民が一体となってワーキングプア問題を解決しようとしているのを知ると、今の日本政府はあまりにふがいない。。
きちんと日本の将来を見据えたうえで、的確な政策を打ち出してほしいです。
「貧困の連鎖」を食い止めてほしいです。
大豪邸で幼少の頃から暮らしていた現首相に、今のワーキングプア問題の深刻さが伝わっているのかが疑問ですが・・・。
「自己責任」という言葉ではくくられない、半ば運命的に貧困に陥ってしまった人が、今日も職を失っているという現実を。
釧路市のようなシステムを国が正当に補助してこそ、政策と呼べると思います。
今回も非常に勉強になりました。 -
NHKスペシャルの内容を書籍化。韓国(ソウル)、アメリカ(ダラス)、イギリス(リバプール)、釧路、東京での取材をもとにしている。特にイギリスの取り組みが興味深い。若年層に対する支援に積極的に予算をさき、就業支援施設や技術習得サポートする学校を全国に配置。13才から19才までの若者の個人情報を網羅的に把握するデータベースを作り、専門のケアワーカーが、町をふらつく無職の少年たちに「アウトリーチ」し、技術取得をサポートしていく。その背景にあるのは、若者に対する予防的な対策を講じることで、将来の凶悪犯罪発生率上昇や薬物蔓延による社会コスト増大を予防できる、という考え方。翻って日本はどうか。考えさせられる。
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NHKスペシャル『ワーキングプア?〜解決への道〜』の番組をもとにして作られた本。書籍としては、『ワーキングプア 日本を蝕む病』の続編に当たります。韓国・アメリカ・イギリスなど、日本よりも先にワーキングプアが問題になったり課題解決に取り組んだりしている国の現状と対策を紹介したあと、日本のワーキングプアの問題をどのように解決していくかという流れになっています。都会のワーキングプアは孤独になりがちということで、人間関係を広げていくことが解決に近づくうえで大切と書かれていました。(2008.9.30)