([い]3-1)ママになったネコの海ちゃん (ポプラ文庫 い 3-1)

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591109137

感想・レビュー・書評

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  • 今でこそ、書店では猫の写真集がたくさんあるが、草分け的存在と言えばやはりこの方だろう。
    野生動物たちばかり撮っていた岩合氏が、猫の写真を撮りたいと言ったら編集部に一も二もなく断られ、ついでに失笑されたというエピソードもあるくらいだ。
    さて、遂にめぐり合った「海(カイ)ちゃん」だけど、始めはお試しで2匹連れ帰るのだが、素直で扱いやすい方の子を返してしまうのだ。
    ところが・・!ひとりになると一変する海ちゃんの態度。
    ここはとても良く分かるなぁ。
    猫って、単独のときと多頭飼いのときとで明らかに性格も変わるし、人間の前と他の猫たちの前とでもおおいに態度が違う。
    どちらにしろ真剣に、そのつど生きる道を模索しているのだろうね。

    この本は、その「海ちゃん」という岩合さんちの猫の一生を、奥様の日出子さんの文章で語ったもの。
    もちろん、初代の猫モデルだけに写真もたくさん。

    可愛がっているだけではすまない事態になるのが、岩合さんちに赤ちゃんが生まれることになったとき。
    狭いアパートで、遊びたい盛りの海ちゃんと小さな赤ちゃんを同時に愛せるかどうか。
    いや、愛せたとしても目配りがじゅうぶんに出来るかどうか。それが互いの幸せなのかどうか、悩むことになる。
    悩んだ結果、多頭飼いしている逗子の実家に預けることに。
    海ちゃんには自由に遊びまわれる場所をと、熟慮の結果なのだ。
    同じ立場になったことも無い人は理解不能だし、いたずらに批判など出来ないし、またしてはいけない、と思う。
    ただ・・・私は痛いほど共感できる。
    あれほど可愛がっていたはずの実家の猫が、産まれ立ての長女の傍に来たとき、思わず手で追い払ったことがあるもの。
    もちろん、自分の狭量さをすごくすごく後悔した。
    黙って廊下の端に行って、こちらをじっと見ていたあの子を、今も時折思い出して、そして心の中で「ごめんね」と何べんも謝る。
    人間て、理想の自分にはなれないどころか、いとも簡単にこちらの都合で変わってしまうものなのだ。悲しいかな、猫を通してそれを知ったあの夏。
    日出子さんも、その後しばらく海ちゃんのことが頭から離れない。
    そして読み手の予想どおり、絆は次第に薄れていく。

    その後、海ちゃんは逗子のおうちでたくさんの子のお母さんになる。
    その見事な母親ぶりに、こんな幸せもあったのなら、これでよかったのかなと安堵感でいっぱいになる。
    産んでも、全く面倒を見ない猫もいるからね。そこは人間と同じ。
    岩合家の赤ちゃんも大きくなって「海ちゃん姉ちゃん」なんて呼ばれるようになって、縁側で抱っこしている写真も最後にある。

    別れと亡くなる箇所は切なくて、これまで出会った猫たちの顔も浮かんでは消える。
    みんな、幸せだったのかな。
    ごめんね、また逢ったら今度こそ・・とアテもない約束をしながら本を閉じた。

  • 野生動物の写真を撮っていた夫の岩合さんがいつしか、街をうろつく猫たちに魅せられる。
    助手として同行する妻。
    だが、もうひとつ、猫の気持ちがいきいきと伝わる写真が撮れない。
    これは飼うしかないと決めて、探していたら、めぐりあった子猫。
    この子だと思うが、2匹いたので一緒に連れ帰り、試しに暮らしてみる。
    類と名付けた姉妹のもう一方が素直で愛らしく扱いやすい。
    海のほうはひねくれ者で、面白いと思いつつも気持ちが揺らぐ。
    結局、類を返すと、海は明らかに喜んではしゃぐのに驚く夫婦。
    いや~これは2匹のどちらかと選んでいたのを気づいていたんでしょうね。

    表情豊かで、モデルとして大活躍。
    「ネコでないネコ」という表現が謎でした。
    実家で庭に外ネコがたくさんいる環境だったため、そういう暮らしをしているネコが自然な姿と思っていたんですね。

    赤ちゃんが生まれることになり、海を実家に預けることに。
    外ネコがたくさんいる家で、一匹だけの家猫として、お母さんに可愛がられる。
    泊まりに行くと、同じ部屋に寝に来る海ちゃん。
    しかし、しだいに薄れゆく絆。
    赤ちゃんをのぞき込む海を思わずはたいてしまい、それ以来、一緒に寝なくなるのが切ない。
    海ちゃんはまだ信じていたのに、ショックだったでしょうね。

    でも外ネコの世界にも馴染み、恋をして、毎年子供を産むようになる。
    子猫を可愛がって育てる姿に、いつ覚えたのかと感動する作者。
    こんな幸せがあったのなら、ここに来たのもよかったと海ちゃんも実感していたでしょう。
    幸せになって、よかったねえ…!
    お嬢ちゃんとも仲良くなって、「海ちゃん姉ちゃん」なんて呼ばれて。
    いい一生でしたね。
    色々なネコのことを思い出して、ちょっと切ないけど。
    こんなにたくさんの猫の写真、どうやって撮るんだろうと思っていた謎が、ちょっと解けました。

  • 写真や文面から窺う海ちゃんはとても頭が良くて賢くて美猫でいいおかあさん。多分、自分に起きているすべてを理解していたのだろうと思う。
    岩合夫妻の家に来て、家族になったのだと思ったら何かと写真撮影。たぶん海ちゃんは迷惑だったはず。夫妻に子供が生まれる事がわかると、逗子の実家に預けられる事に。人の考え方は色々でいいんだし、そうする事が良いと思ったなら仕方ないが、何となく無責任というか納得は出来ない。写真の海ちゃんの顔はすべてとても可愛いが、そう思っているせいか怒っているようにも見えてしまう。夫妻とは信頼も絆も築けたようには思えなかったが、逗子の実家のおばあちゃんとは幸せに暮らし、最期を迎えたのだと信じている。

  • 猫はたくさんいるけれど、岩合さんにとって唯一といえるのはこの猫ではないでしょうか。

  • 海ちゃんは、ちびっちゃい時分に岩合夫妻(カメラマンさん、作家さん)の家に引き取られて以来、「猫の『きもち』を写した写真」を撮るためのモデルを勤めてきた、賢くてでもへそ曲がりな女の子。
    仔猫の頃の写真エッセイ本は持っていたけれど、海ちゃんは大人になって、ママになっても、どこか幼気な面影の残る別嬪猫さんでした。

    旦那さんの撮った写真はどれも可愛くて素敵。
    奥さんの書いた、海ちゃんの様子や、それを見て感じる人間のきもちをつづった文章も、情景と可愛さがすごく伝わってくる。

    ……だからこそ、「猫らしい『きもち』で居させてあげたい・居て欲しい」という人間側の「きもち」の下、暮らす場所が変わった後の海ちゃんの姿は、頼もしくも切ない。
    どっちが本当に幸せなことなのか、なんて、 私にはわからないけど。

    読みながら、家の飼い猫達を、何度も何度も撫でて、何度も何度も話しかけてしまった。
    カメラマンでも作家でもない私は「猫が『猫らしいきもちで』生きられること」ではなく「猫と人間とで満ち足りて暮らせること」を考えれば良い。それだけを考えれば良い。
    そのことを、嬉しく思った。

  • 海ちゃんの成長がかわいく、写真もついていて猫の子どものこともよくわかりました。読んでみてください。

  • 写真はさすがに良いのだけれど、特別、理想的、などなど言って思いやっている猫を、結局は実家の母に世話してもらっているので、ピンと来ない。

  • 猫は生き物。
    自分のことは自分でできる。

    ペットとして猫を飼っている人の感覚で、
    岩合さんの猫写真を見ると、ちょっと違うのではないかと思う。

    猫は生き物であって、ペットではない。
    「ねこっかわいがり」しないのがよい。

    人間の生活と、猫の生活とをどうやって折り合わせるか。

    猫のため、というのは、人間の勝手だと思う。

  • とっても幸せなネコ海ちゃんのお話しです。海ちゃんはもちろん海ちゃんの子供たちもとっても美しいです。写真からネコたちの幸せが滲み出ています。

  • 2009/4 読。

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著者プロフィール

岩合日出子 岩合日出子横浜市生まれ。絵本に『10ぱんだ』(福音館書店)などがある。

「2008年 『にゃんきっちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩合日出子の作品

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