Amazonを見ていたら、本書を発見。なんと9人のカスタマー全員が星5つの評価なのでびっくりした。
落語ブームといわれて久しいが、落語家の本まで大人気とは凄い。
著者の柳家 喬太郎さんは最近テレビで見て、面白いなあ、と思った落語家でもあり、タイトルの「こてんパン」の言葉に惹かたこともあり、読んでみた。
落語家ならではという話のところは、やっぱり面白い。ところが、タイトルと違ってぜんぜん「こてんパン」に語ってない。こてんパンというくらいだから、もっと深く掘り下げた話があるだろうと期待していただけに、ちょっとがっかりした。
それじゃあ、どんな内容かというと、「私の好きな古典落語50席」のことを、なんとなく、のんびりと、ぐずぐずと書いたエッセイ、というのが喬太郎さんご自身の弁だ。茶飲み話みたいに、好きな落語の噺をのんびりと書いてみたよ、という感じらしい。そういうことならしょうがないか。納得。のんべんだらりと書き綴った内容であって、少なくとも「こてんパン」ではないので、過大な期待は禁物だ。だから、古典落語を知りたいっていう超初心者は気を付けた方がいいかも。
一席ごとの構成はまず、その噺を選んだ理由があり、噺のあらすじが続く。そのあとに、簡単な解説があったり、得意とする落語家を紹介したりと、楽屋話、四方山話がある。
ただし、噺のあらすじは、落げ(さげ)まで書いてあったりなかったりと、気の向くままだ。書かなかった理由は、
「話芸としての落語を聴いて、そこでその噺と出逢ってもらいたい。ミステリーの結末を、読む前に知っちゃたらつまらないでしょ」とある。
でも、書いちゃっているものもある。私としては、聴いたことのある噺が多かったので、できれば落げまで書いた上で、喬太郎さん独自の解釈みたいなのを知りたかったなぁ、と思う。古典落語って同じ噺を繰り返し演じていくものだから、いまさら隠したって仕方ないと思うから。初心者は気を付けた方がいいと書いた訳は、そんなところにある。聴く前に落げまで知りたくないっていう方は、落げまで書かれたあらすじは、困るだろう。
一方、聴いたことのある噺にまつわる、解説なり解釈を知りたい方にはもの足りないかもしれない。
畢竟、本書は、古典落語という話芸の世界に入る前の、ちょっと長い枕(マクラ)なのかもしれない。
古典落語は、ライブが無理でも、ビデオ・CD・DVDなんでもいいからとにかく聴いてみて、そのあとにこの手の本を読んだ方がいいと、個人的には思う。
【取り上げられた50席】
1.道灌
2.子ほめ
3.道具屋
4.まんじゅうこわい
5.粗忽の使者
6.錦の袈裟
7.反対俥
8.按摩の炬燵
9.初天神
10.看板のピン
11.転宅
12.長屋の花見
13.寝床
14.提灯屋
15.ちりとてちん
16.青菜
17.目黒の秋刀魚
18.綿医者
19.野ざらし
20.夢金
21.寿限無
22.元犬
23.愛宕山
24.松竹梅
25.蟇の油
26.長短
27.たちきり
28.猫の災難
29.千早振る
30.動物園
31.味噌蔵
32.時そば
33.二番煎じ
34.蒟蒻問答
35.浮世床
36.らくだ
37.笠碁
38.仏馬
39.船徳
40.心眼
41.たらちね
42.家見舞
43.掛取萬歳
44.ねずみ
45.引越しの夢
46.小言幸兵衛
47.うどんや
48.百川
49.不動坊
50.竹の水仙