風待ちのひと

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591110218

感想・レビュー・書評

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  • 伊吹さんのデビュー作
    こちらも伊吹さんらしい空気感の作品でした


    心の風邪をひきかけている哲司が
    ヒッチハイカーの喜美子を乗せるところから
    物語ははじまります


    喜美子と丁寧な生活を送るうちに
    哲司がよくなっていく話かと思いきや
    2人の恋の物語でした
    (もちろん哲司もよくなっていきますが)


    喜美子の方も自分に自信がなく
    哲司と出会って救われていきます

    最初はガサツなイメージの喜美子の
    艶っぽい展開になかなかついていけませんでしたが
    2人が惹かれ合うのも自然なことかもしれないですね


    でも哲司は家庭があって
    そっちの家族のことも考えてしまったりもしました
    実際は再生するのは難しい関係だったけど。。


    頑張ってる奥さんの気持ちが
    逆に辛くなっちゃうんですよね
    でも奥さんの気持ちもよくわかるんです。
    浮気はやだけど。
    うーん。なかなか辛い展開でした。

    奥さんと別れてから惹かれあってくれたら
    もっと純粋に楽しめたのかも。。


    また終盤、喜美子が別の生活を手にしてるのにも
    ちょっと心が追いつかなくて、、

    もちろん当たり前のことなんだけど
    なんというか咀嚼するのに時間が必要でした


    なんとなくついていけないところもあったんですが
    でもラストがよかったので星は4つで。


    私は舜くんが好きだなー

    この物語の若い子達が、いい子すぎ。
    一番大人だなと思いました

  • ズーズーしくて天然なおばちゃんと、態度も感じも悪い男の人の話し。
    そんなふうに始まるのがだんだんと2人共魅力的な人になっていく。
    人と付き合うってこういう事なのかも。
    でも中々私なら出来ないな。
    また新しい人生を2人で始めていく。やり直しが出来るのはこの2人は今までも人生を懸命に生きてきたから。
    きっとこの2人なら幸せになれる。

  • 心が疲れた2人が、出会いや田舎での生活を通して、自分と向き合い再生していく物語です。
    田舎ならではの閉鎖感や静けさに最初は主人公も怯える一方、一つ一つの要素が魅力に感じられる生活は、羨ましく感じました。
    音楽、自然、優しい人に囲まれて少しずつ元気になる主人公を見ていると、疲れた時に避難することはだいじだし、誰にもそういう場所があってしかるべきなんだろうなと思います。

  • トラックドライバーの間でこんな噂がある
    『海沿いの町』という紙を掲げた中年女がヒッチハイクをしていたら、
    必ず乗せて丁重に扱え。
    不二家のペコちゃんに似たその女は腕利きの理容師で、乗せると
    そのお礼に必ずドライブインで髪を切ってくれる。
    そうして男ぶりが上がったドライバーにはその後、
    決まって多くの福が舞い込むらしい。

    母を亡くし、妻の不倫を知り、仕事にも行き詰まっていた
    39歳のエリートサラリーマン須賀哲司
    〝心の風邪〟で、休職中
    亡くなった母の家の整理と療養を兼ねて美しい港町美鷲へやって来た。
    そして、ペコちゃんこと福井貴美子と偶然知り合い
    母親の遺品の整理を手伝ってもらう事に…。
    疲れ果てていた哲司は、貴美子の優しさや町の人達の温かさに
    触れるにつれ、自助に心を癒していく。
    少しずつ距離を縮め、次第に二人は惹かれあうが
    哲司には東京に残して来た妻子がいた---。


    貴美子は、地味で自分をオバチャンと言いお喋りで軽い下ネタを言う
    全てに疲れていた哲司にお節介をやく…。
    放っておいてくれ、自分に関わらないでくれ、うるさい…。
    哲司が最初貴美子を鬱陶しく思う気持ちは凄く良くわかりました。
    私も、開けっぴろげで、ずうずうしい正真正銘のオバサンだと思ってた。
    でも、貴美子がお節介なくらい哲司にかまったのには理由があった。
    貴美子自身が癒せない辛い思いを抱えていた。
    だから、哲司の危うさに気付き、温かさで包み込む。
    自分を『知ったかぶったか』と、悲しげに言い
    何度も言ってた『すまんねえ』
    その言葉の裏に隠された貴美子の傷を知ると…たまらなくなりました。
    全然『知ったかぶったか』で、ないのに…。
    癒えぬ悲しみを抱えたまま、明るく振る舞う貴美子だったけど
    哲司と接する事で、次第に自分の思いや諦めていた事に気付いていく。
    二人は結ばれるって思ったのに…
    世界が違うと離れてしまった
    でも、最後は大どでん返しのハッピーエンド(〃'▽'〃)

    人と人との心が解け合っていく過程を丁寧にじんわりと描いていて
    読んでいるこちらの心も優しい気持ちになっている。
    やり直せない人生なんてないんだなぁ。
    素敵な笑顔を持つ貴美子が最高に魅力的
    美しい港町の街並みや風を感じられました。
    美味しそうな料理も…。
    クラッシックに詳しかったらもっと楽しめたのかも…。

    素敵な言葉も沢山
    ・踏み外したんじゃないよ。風待ち中
    良い風が吹くまで港で待機しているだけ
    ・心のバランスが崩れるなんて…モヤシだな。
    モヤシでも雑草でもバラでも、へたれるときはへたれるよ

  • 39歳という微妙な年齢の恋。2人とも心に傷を抱え、なかなかそれを乗り越えられずにいる。オペラと美鷲の美しい景色と亡くなった哲司の母が2人を結びつける。伊吹有喜さんの作品は読むと気持ちを前向きにさせてくれる。

  • かなり切ない大人の恋が綺麗な文体で語られる伊吹さんの処女作。
    とりわけ序盤から中盤過ぎまでの展開はなかなか良かった。
    心を病んで亡き母の家に帰ってきた哲司と以前 心を病んだことのある喜美子が出逢い、知らず知らず互いに相手を癒し力を与える存在になって行く。
    終盤は少し力技で走った感があるけれど、そんな二人の踏ん切りは さてどんな結末を迎えたのでしょうか?!

  • 朱夏から白秋へと移ろう季節の、暑いばかりではない恋物語。途中まで理香はいい面の皮と思えたけれど、そう簡単な話でもなかった。戸惑いながらも心を寄せていく感じがとてもステキ。母親 (実塩先生) の趣味のよさと、それに気づくことのできるようになった喜美子の心の変化がまたかわいらしい。

  • 学生のとき、部活の夏合宿が尾鷲にあった青年の家で行われるのが恒例で、毎夏の4回、尾鷲に滞在した。テラスから見えた海は青く、湾の向こう側にある小島に波打つ海を今も憶えている。この作品は伊吹さんのデビュー作とのこと。彼女の作品には三重の香りが漂っていて、とても懐かしい思いがする。登場人物が皆、迷いながらもありたいところに辿り着いて、再び歩き出す。いい作品だと思いました。

  • あまりにおもしろかったので一気読み。
    最後、どうなるのかと、はらはらしてしまった。別れてしまうの?と途中思ったが、うまくいってよかった。幸せになってほしい。

    哲さんのお母さんのおうちが素敵。手放したのはもったいないなー、住むわけではないし、しょうがないのかな。
    オペラを見に行くとき、喜美子さんが着た着物が素敵でした。椿姫にあわせた、着物
    。オシャレすぎます。
    哲さんのお母さんのご友人アキノさんたちが来られたときのおもてなしも、歌も音楽も素敵すぎて、情景を想像するとウキウキ、わくわくしてしまいました。

    理香さんも、悪い人ではないが、自分の求めるものがはっきりしていて、今まで努力しており、これからも努力をしていくんだろうなー。気持ちもわからないのではないので、こちらも切ない。

    この方の本は何を読んでも心にしみるお話で、素敵です。

  • 良い‥!!

    すてきな恋愛小説読ませていただきました。

    息子、夫ともに死別した喜美子
    「心の風邪」にかかりかけている哲司

    切ない思いや、どうにもならない状況やら様々な出来事が詰まった物語でした

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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